リスク分散で資産を守る?エコノミスト崔真淑氏に聞く、老後を安心して迎えるために今できることとは

リリース日:2020/07/02 更新日:2022/06/06

新卒で大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社し、独立後も経済学を軸にエコノミスト・コンサルタントとして活動されてきた崔さん。経済の仕組みについてわかりやすく解説するなか、自身でも学生時代から投資を続けてきました。そんな崔さんに、将来に備えるため今すべきこと、投資の始め方についてお話を伺いました。

更新日:2020/07/02
  1. 攻めの投資ではなく、守りの投資を
  2. 初心者は頻繁に売買すべきではない
  3. 自分に合ったネット証券を選ぶ
  4. 自分の頭で考え、次に活かせる失敗を
  5. これからの時代に対応できるスキルを
  6. 自分自身で資産を作り、守る準備を

攻めの投資ではなく、守りの投資を

マネ活編集部:現在、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、先が見通しにくい社会になっています。そんな状況のなか、お金の面で備えるには何をすれば良いのでしょうか?

崔:資産を増やそうとするより、できるだけ資産が減るリスクを下げるにはどうすれば良いのかを考えて行動するほうが良いと思います。オススメは、投資です。とくに、日本円以外で資産を保有するのが良いと思います。

マネ活編集部:なぜ投資で資産が守れるのでしょうか。

崔:万が一、日本円の価値が下がったときに備えられるからです。私たちはただでさえ生活や仕事を日本で行っていて、万が一日本経済に何かあると大きな影響を受けてしまう状況です。そんななかで、資産まですべて日本円で保有するのはリスクが高すぎるのです。今すぐどうにかなるというわけではありませんが、何が起きるかは誰にも分かりません。世の中を生き抜いていける人は、「もしも」に備えられる人。今のうちに資産を日本円以外のいろんな形で保有した方が良いと思うのです。

50代~60代で新しくお金を作るのは大変なので、老後のお金に対する心配をなくすためには、今の資産を守る知識を、なるべく早くから学んでおくべきだと思います。

初心者は頻繁に売買すべきではない

マネ活編集部:投資を始めるにあたって、まずは何から始めれば良いのでしょうか?

崔:まずは株の入門書を漫画でも良いので一冊買って読むのが良いのではと思っています。また、YouTubeに上がっている解説動画を見たり、ウェブセミナーに参加して勉強をするのもおすすめです。

マネ活編集部なるほど。まずは基礎的な知識をつけるところからですね。

崔:はい。早く行動しなければと焦って、いきなり証券口座を開く人も多くいますが、結局何をして良いか分からず口座を開いて終わりになってしまうケースが多いです。まずは一冊何でも良いので読んでみてください。読んでるうちに実際にやってみたくなりますから。

また大事なのは、続けることです。自動的に毎月1万円ずつ投資されていくような積み立て投資をするのも、一つ手かもしれませんね。

 

 

マネ活編集部:いざ、実際に投資を始めようと思ったとき、何から手をつければ良いのでしょうか?

崔:まずは、株だけでなく、金や債券など色々な金融商品を買ってみるのをおすすめします。

気を付けるべきは、とくに慣れないうちは頻繁な売買はしないことです。過去のデータによると、頻繁に売買しない人の方が、デイトレードのような投資の仕方をしている人と比べるとトータルでリターンが大きいということが分かっています。頻繁に売買しない方がそのぶん手数料が少なく抑えられるからです。デイトレードのような取引の仕方で儲けられる人は全体の1割にも満たないでしょう。

マネ活編集部:1割...厳しい世界ですね。

崔:そうですね。もう一度言いますが、今は「儲ける」よりも「守る」を意識して、長く保有することを前提に金融商品を買うのが大事だと思います。その場合、重要になるのは、購入後、ほったらかしていても価値が増えそうな商品を買うことです。経済成長が見込める中国やアメリカの企業に投資するのも手だと思います。

自分に合ったネット証券を選ぶ

マネ活編集部:実際に金融商品の売買を始める際、何を活用すると良いでしょうか?

崔:ネット証券など、購入する銘柄を自分で決められるプラットフォームを活用するのも良いと思います。単純に手数料が安いことが魅力ですし、余計な情報が入らないこともポイントです。証券会社の方からおすすめされる金融商品は「証券会社が儲かるからおすすめしているのでは?」といった余計なことを考えてしまうと思いますので。

マネ活編集部:ネット証券を選ぶポイントを教えてください。

崔:扱っている証券の幅は見るべきだと思います。個別株が買えるだけでなく、上場投資信託のETFがどれだけ売買できるのかや、どのような投資信託ができるかなどは見るべきポイントです。取り扱っている証券の幅が広ければ広いほど、そのぶんリスク分散もしやすいと考えられます。

また、利用できるツールが、自分に合っているのかを確認するのも良いと思います。デイトレーダーのような人たちが1日に何度も売買するのに向いているツールなのか、 個人が自分の資産をコツコツ積み立てていくことに向いているツールなのかなど、ネット証券によって違いがあると思いますので。

自分の頭で考え、次に活かせる失敗を

マネ活編集部:投資先をどう選んだら良いかわからない、という人も多そうですが、何かアドバイスがあれば教えてください。

崔:みんなが良いと言っているものを、何も考えず買うのはやめた方が良いです。投資を始めると必ず、有識者の「この株は絶対上がる」と言った発言が気になると思います。たとえ99%の人がおすすめする商品であっても、よく見ると、明らかに買うべきでない商品であることも多いです。投資の世界は嘘の情報が出回りやすいんですよね。うまい話はそうそう転がっているものではありません。

自分の頭で考えて使い方を決めるべきだと思います。自分が汗水たらして稼いだお金を、よくわからない情報に振り回されて失ったら嫌じゃないですか。 たとえ面倒くさくても自分で情報を集めて考えることが大事です。もし、調べたりする時間を確保できないなら、投資はやめて、他の稼ぎ方を考えた方が良いかもしれません。

マネ活編集部:最初は色々調べてもわからないことが多そうですね。それでも自分の考えたことが成功したのか、失敗したのか把握しておくのが大事なんですかね。

崔:大事ですね。自分で考えた上で投資をしなければ、次に活かせないですから。最初は誰しも、失敗します。私もそうでした。それでも、試行錯誤を繰り返すことで自分の資産を守る力が身についていくのだと思います。そのためにも、失敗を前提として、損をしても良い金額を明確に決めておいてくださいね。

 

崔さんの著書『ど素人でもわかる経済学の本』

これからの時代に対応できるスキルを

マネ活編集部:投資をしたくてもそのためのお金がない、という方もいらっしゃると思います。元手を稼ぐために意識すると良いことがあれば教えてください。

崔:稼ぐ能力を身につけるためには、自分の知識に投資をすることが重要だと思っています。

とくに今後、重宝されるのは大きく2つの能力だと思います。

まず1つはパソコンスキル。今世の中はデータを重視する社会になっています。「Word」や「Excel」だけでなく、データ分析に活用できる統計ソフトを活用できるスキルは多くの会社にて重宝されるでしょう。

とくに今、新型コロナウイルス感染症の影響で、サービス業を中心に、人との接触が必要な仕事は、今後どうなっていくのか分かりません。そんな仕事に従事されている方は、次の仕事に備えてパソコンスキルを学ぶのは有効だと思います。

 

 

もう1つは、学問です。私が思う学問とは、たくさんの人の経験を集約し、目の前の課題解決のための道具として使えるようにしたものです。

 

テクノロジーが進化した社会の中では、どうすれば成果が上がるのか誰にもわからない「答えのない仕事」が圧倒的に多いです。それらの仕事で求められるのは、自分自身で解決方法を考える力です。ただ、自分の経験の中だけで解を見つけるのには限界がありますし、変化の激しい時代、個人の経験はすぐに使えなくなってしまいます。そんな時有効なのが、学問だと思うのです。学んでおけば、過去の成功例をカスタマイズし、今目の前で起きている課題解決に役立てることができます。

 

実は今、社会人の大学院での学び直しをサポートする補助金もあるので、是非この機会を活用して欲しいなと思います。

自分自身で資産を作り、守る準備を

マネ活編集部:最後に読者へメッセージがあれば教えて下さい。

崔:結婚や出産など、ライフイベントの可能性がある人や、自営業やフリーランスなど会社員より不安定な働き方をしている人は、現金を持つ比率を高めた方が良いと思います。新しい挑戦を始めたり、大きな買い物をする際、融資だけでは立ち行かない可能性があるからです。 自分の社会的信用がどの程度なのか意識しつつ、現金の比率と投資に回す比率とのバランスを考えてもらえればと思います。

マネ活編集部:なるほど。ネットで「貯金 老後」とかで調べる前に、自分自身の社会的信用がどれほどなのか、見直した方が良さそうですね。

崔:そうですね。後は、自分が老後生きていくための資産は、自分自身で稼ぎ、守るべきだということもお伝えしたいですね。

とくに女性の皆さんは「収入のある男の人と結婚すれば将来は安定」と、自分より上の世代の人から言われた経験がある人も多いと思います。バブルの時代ならそれでも良かったのかもしれませんが、今は「同類婚」と呼ばれる、同じような学歴、職種、収入を持つもの同士が結婚する傾向が見られています。つまり、自分でお金を増やそうとすることで、同じような人と出会える可能性も高まるのです。

投資の勉強は、すればするほど知識が身につき、自分の資産を守れるようになりますので、早く始めるほどその後の人生が楽になると思います。だからこそ、まだ始めていない人は、今からでも始めてもらえると良いのかなと思っています。本でも動画でも良いので、まずは見てもらって、少しでも興味を持ってもらえると嬉しいですね。

崔真淑
この記事を書いた人
崔真淑

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

1983年生まれ。2008年神戸大学卒業後、大和証券SMBCで当時最年少の女性アナリストとして活躍。2012年に独立し、Good News and Companies 設立。経済学を軸に、経済ニュース解説、マクロ経済・資本市場分析を得意とするマクロエコノミスト・コンサルタントとして活動。若年層の経済・金融リテラシー向上のため、東京証券取引所のPRコンサルティングなども手がける。2016年一橋大学大学院(MBA in Finance)修了。2017年からは一橋大学大学院イノベーション研究センターに所属し、組織のインセンティブ設計と資本市場の関連性についての研究を行う。

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