貯蓄率はどれくらい?日本の平均貯蓄率を都道府県別、年代別に調べてみた
みなさんは貯蓄率というものをご存知ですか。家計の中で使える金額から、貯金に回す割合を数字にしたものが貯蓄率です。貯蓄率は世界や日本各地、世代別に異なります。今回は貯蓄率とは何か、その計算式や各地域・世界との比較などをご紹介します。
貯蓄率とは?
貯蓄率とは家計貯蓄率のこと
貯蓄率とは、読んで字のごとく、貯蓄されているお金の割合のこと。通常貯蓄率という場合には、内閣府がまとめている「国民経済計算」という統計の「家計貯蓄率」を指します。
ちなみに、総務省が行っている「家計調査」には「黒字率」という項目もあり、貯蓄割合をみるときには黒字率のデータが使われることもあります。ここでは以下、貯蓄率=家計貯蓄率として説明します。
貯蓄率の計算方法
国民経済計算では、家計可処分所得から消費のために支出した金額(家計最終消費支出)を差し引きしたものを貯蓄と考えて、家計貯蓄率を計算しています。家計可処分所得とは、収入から税金や社会保険料などを差し引いた「自由に使えるお金」のこと。
なお、企業が年金や退職金の給付のために積み立てている年金基金は、家計においては負担と給付の両方に該当するため、家計可処分所得に「年金基金準備金の変動」という調整項目を加えた上で貯蓄率が計算されています。
日本の貯蓄率の推移
国民経済計算における家計貯蓄率は、近年低迷しています。1990年代には10%代を維持していましたが、2000年代に入ってからは10%を切るようになりました。2013年には初のマイナスになり、貯蓄を取り崩して生活している人が多くなっている実態が浮き彫りになりました。その後は若干回復しましたが、2016年時点でも貯蓄率は2%となっています。
貯蓄率が低下している理由とは?
近年の貯蓄率の低下の原因としては、高齢化社会が進展したことが考えられます。高齢者は年金だけで生活できるわけではなく、貯金を取り崩しながら生活している人が多くなります。そのため、人口に占める高齢者の割合が大きくなるほど、貯蓄率は低くなる傾向があります。
さらに、現役世代においては、不況により収入が減っているにもかかわらず、住居費や子どもの教育費の負担が重くのしかかり、思うように貯蓄ができない現状が考えられます。
日本と世界の貯蓄率の比較
日本と世界の貯蓄率を比較してみましょう。OECD加盟国の家計貯蓄率を比較した2016年の統計によると、36か国中1位は中国、2位はスイス、3位はノルウェーとなっており、日本は29位という順位になっています。トップの中国の貯蓄率が約37%ですから、日本の貯蓄率2%は圧倒的に少ないことがわかります。
日本の貯蓄率が低い原因としては、上にも書いたとおり、日本社会の高齢化があります。また、海外、特に欧州諸国では、高校や大学の教育費が無償化されている国も多いことが理由として挙げられるでしょう。
日本人は貯蓄が好きというイメージを持っている人も少なくないと思いますが、世界的にみると日本人の貯蓄は決して多いわけではありません。現代の日本は、貯蓄が難しい社会と言えます。
都道府県別の貯蓄率
都道府県別の貯蓄率はどうなっているのでしょうか。家計貯蓄率に関して47都道府県別に集計したデータはないため、ここでは都道府県別の貯蓄額のデータを参考に、地域別の特色を見てみます。
平成26(2014)年の全国消費実態調査によると、都道府県別貯蓄現在高(二人以上世帯)上位の都道府県は、1位東京都(約1,967万円)、2位神奈川県(約1,904万円)、3位福井県(約1,856万円)となっています。貯蓄現在高が少ない都道府県は、45位鹿児島県(約948万円)、46位青森県(約862万円)、47位沖縄県(約574万円)です。
貯蓄額については、大都市圏では多く地方では少ない傾向があります。これは、一般に大都市圏の方が地方に比べて賃金水準が高いことが理由と考えられます。トップの東京都と最下位の沖縄県では貯蓄額に3倍以上の開きがあり、日本国内における地域間格差はかなり大きいことがわかります。
年代別の貯蓄率の平均
年代別の貯蓄率はどうなっているでしょうか。家計貯蓄率に関して年代別に集計したデータはありません。ここでは、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(平成29年)」のデータをもとに、貯蓄割合について考えてみます。
この調査では、単身者(一人暮らし)と二人以上世帯(主に結婚している人)に分けてデータがとられており、金融資産を保有している人(世帯)が、手取り収入のどれくらいを貯蓄に回しているかがわかります。以下、調査結果を年代別にご紹介します。
20代の貯蓄率
20代の場合、一人暮らしでは年間手取り収入のうち平均で19%を、二人以上世帯(20代世帯主)では年間手取り収入のうち平均で16%を貯蓄に回しています。なお、この貯蓄割合は、既に貯金などの金融資産がある世帯に限った数字です。金融資産保有世帯の割合は、一人暮らしでは全体の39.0%、二人以上世帯では全体の64.4%となっています。
20代では貯蓄を行っていない世帯の割合がかなり多いですが、貯蓄をしている世帯では手取り収入の2割弱を貯蓄に回していることがわかります。
30代の貯蓄率
30代の年間手取り収入に対する貯蓄割合は、一人暮らしの人で平均19%、二人以上世帯(30代世帯主)では平均12%です。なお、金融資産保有世帯の割合は、一人暮らしで全体の59.6%、二人以上世帯で全体の66.3%です。
30代では20代に比べると貯蓄をしている世帯の割合が増え、過半数の世帯で貯蓄があります。ただし、収入に対する貯蓄割合は20代とそれほど変わりません。特に、結婚している人に関しては、20代よりも30代の方が、貯蓄割合が減っています。30代になると住宅ローンや教育費の負担が大きくなり、貯蓄しにくい現状がうかがわれます。
40代の貯蓄率
40代の年間手取り収入に対する貯蓄割合は、一人暮らしは平均15%、二人以上世帯(40代世帯主)では平均10%です。金融資産保有世帯の割合は、一人暮らしで54.1%、二人以上世帯で66.3%です。
40代になっても貯蓄している世帯の割合が増えるわけではなく、一人暮らしの4割強、結婚している人の3割強は貯蓄なしです。また、貯蓄をしている人でも20代~30代に比べて収入に対する貯蓄割合が減っており、40代になるとますます貯蓄がしにくくなってしまうことがうかがわれます。
貯蓄率のデータで自分の貯蓄も振り返ってみましょう
日本の家計貯蓄率は2%程度となっており、国際的にみてもかなり低い水準です。ただし、家計貯蓄率は貯金を取り崩しながら生活している高齢者も含めた数字になりますから、収入の2%しか貯蓄できないというわけでは決してありません。現役世代で貯蓄している人は、手取りの2割近くを貯蓄に回しています。自分の場合にはどれくらい貯蓄できるかを見直してみましょう。
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監修:森本 由紀さん
ファイナンシャルプランナー・行政書士・離婚カウンセラー。Yurako Office(行政書士ゆらこ事務所)代表。自らの離婚・シングルマザー経験を活かし、女性がお金に困らないマインド作りから生活設計までアドバイスしています。
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