累進課税制度をわかりやすく解説!税率計算方法や節税もあわせて紹介

リリース日:2022/03/25 更新日:2024/04/02
miso
この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)

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演奏家、ライター、FPとして活動する複業フリーランス。 お金の管理や記録が好きで、独学で簿記3級、FP2級を取得しました。 特に確定申告や税金分野への関心が高いです。お金にまつわる様々な制度や仕組みについてわかりやすく解説します。

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

累進課税とは、所得が多い人ほど税率が高くなっていく仕組みのことで、所得税・相続税・贈与税の計算で使われています。個々人の支払能力に応じて税額が決まるのが特徴です。ここでは、累進課税制度について解説しています。

  1. 累進課税制度とは
  2. 累進課税制度が導入される理由
  3. 累進課税制度はどの税金に適用されるのか
  4. 累進課税制度のメリットと注意点
  5. 所得税・相続税・贈与税の計算方法
  6. 累進課税を考慮した節税
  7. iDeCoやNISAで節税!

累進課税制度とは

累進課税制度とは

累進課税制度とは、日本で採用されている課税方式のひとつです。簡単にいえば、お金をたくさん稼ぐ人ほど税率が高くなり、所得に対して支払う税金の割合が多くなっていく仕組みのことです。

累進課税制度が導入される理由

累進課税制度が導入される理由

累進課税制度を導入する理由としてよくいわれているのが、公平な納税の実現です。

もし税額が全員一律であれば、所得の少ない人は、収入のうち税金に充てる金額の割合が大きくなり、その分負担が重くなってしまいます。例えば全員一律50万円を納税する必要があった場合、1,000万円の収入がある人と100万円の収入がある人とでは、その重みが全く違うと考えるとイメージしやすいでしょう。

同じ金額ではなく、同じ税率にするのが公平だという考え方もあります。利益に対して一律〇%の課税をするというような税額の計算方法です。

しかし、それではまだ公平と呼ぶには足りないかもしれません。なぜなら、税金を負担できる力(担税力)を考慮していないからです。年収が1億円の人と年収が100万円の人のケースで考えてみましょう。所得税の税率が一律10%だとすると、前者の納税額は1,000万円、後者は10万円となります。税金の額だけを見ると100倍になりますが、年収1億円の人は年収100万円の人より税負担が軽いと感じるかもしれません。

そう考えると、税負担を公平にするためには、所得が多いほど税率を高くし、担税力を同程度にするということが必要といえます。累進課税制度はこのような考え方をもとに導入された制度となっています。

ただし、累進課税制度だけで完璧に税の公平を実現できるわけではありません。所得が多い人にとっては、多く稼ぐとそれだけ多くの金額を支払わなければならないので、逆に不公平感があるという点も指摘されます。

そのため国は、累進課税制度を適用する税金とそうでない税金の両方を作り、さまざまな方法で税金を徴収することでバランスを取っています。例えば、所得に関係なく一律の税率を適用する消費税は、累進課税でない税金の代表です。

累進課税制度はどの税金に適用されるのか

累進課税制度はどの税金に適用されるのか

日本の税金で累進課税制度が適用されている税は、主に所得税、相続税、贈与税です

所得税は個人の所得、つまり稼ぎにかかる税金です。会社員やアルバイトであれば給与、自営業であれば事業で得た利益、そのほか銀行預金の利子や投資で得た利益などにもかかります。

相続税は亡くなった人から財産を相続したときにかかる税金、贈与税は個人から財産をもらったときにかかる税金です。どちらも受け取った財産の価格が高いほど税率が高くなります。

累進課税制度のメリットと注意点

累進課税制度のメリットとデメリット

累進課税制度のメリットと注意点は、それぞれ以下のような点があげられます。

【メリット】

 

  • 個々人の支払能力に応じた納税が実現できる
  • 国民の所得格差を縮める

【注意点】

 

  • 所得の高い人が不公平感を抱きやすい
  • 労働意欲が減る可能性がある
  • 高所得者の可処分所得が減り、経済が回りにくくなる

税金には所得の再分配という役割があります。経済的に豊かな人からより多くのお金を集め、それを元手に公共サービスや社会保障を充実させることで、所得の格差を縮められるという考え方です。

社会保障が充実すれば、所得が低い人やハンディキャップを背負っている人でも医療や福祉サービスを受けられるので、国民全員が安心して生活が送れるような社会の実現に繋がります。


一方で、累進課税制度では、稼ぎが大きくなるほど実際の負担額が大きくなることから労働意欲が削がれたり、高所得者の不満が大きくなったりしやすいという側面もあります。


また、高所得者の税率が高いということは、その分、高所得者が自由に使えるお金が少なくなるということなので、街のお店やサービスに使われるはずだったお金が税金として徴収されることになり、経済効率が阻害され、経済を滞らせてしまう側面もあるようです。

所得税・相続税・贈与税の計算方法

所得税・相続税・贈与税の計算方法

ここからは、累進課税制度を採用している所得税、相続税、贈与税の計算方法について、大まかな流れをご紹介します。

・所得税

所得税を計算するときは、まず収入から計算のもととなる「所得」を導き出すところから始めます。

所得は、労働などで得た収入から経費や給与所得控除といったものを差し引いた金額です。投資で出た利益であればその元手、不動産の利益ならば土地や建物の購入費といったものが経費にあたります。

所得は全部で8種類あり、合算して税金を計算する総合課税と、個々に税金を計算する分離課税にわかれます。

総合課税の対象となる所得の種類は以下のとおりです。

(1)利子所得(源泉分離課税とされるものおよび平成28年1月1日以後に支払を受けるべき特定公社債等の利子等を除く。)
(2)配当所得(源泉分離課税とされるもの、確定申告をしないことを選択したものおよび、平成21年1月1日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当について、申告分離課税を選択したものを除く。)
(3)不動産所得
(4)事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く。)
(5)給与所得
(6)譲渡所得(土地・建物等および株式等の譲渡による譲渡所得を除く。)
(7)一時所得(源泉分離課税とされるものを除く。)
(8)雑所得(株式等の譲渡による雑所得、源泉分離課税とされるものを除く。)
(注)上記(4)、(6)および(8)に係る所得の計算において、一定の先物取引による事業所得、譲渡所得および雑所得については、ほかの所得と区分して申告分離課税の方法により所得税が課されます。
国税庁|No.2220 総合課税制度

分離課税の対象となる所得には、山林所得、土地、建物、株式の譲渡所得などがあげられます。総合課税は、所得を合算してから税率をかけますが、分離課税では、それぞれで計算式が異なるため、個別に税率をかけます。これらを合計したのが納税すべき所得税の額です。なお、適用できる控除がある場合は、あらかじめ差し引いてから税率をかけます。

参照元:国税庁|No.2240 申告分離課税制度

所得税の計算に使う税率は、所得の金額に応じて以下の7段階に定められています。

 

※1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。

所得税の速算表(平成27年分以後)

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円まで 5% 0円
195万円から329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円
 

該当する税率を以下の式に当てはめましょう。

・総合課税

(それぞれ計算した課税所得の合計−控除額)×税率

・山林所得

(課税山林所得÷5×税率)×5

土地、建物、株式の譲渡所得

長期譲渡所得
 課税長期譲渡所得×15%
短期譲渡所得
 課税短期譲渡所得×30%

これらを再度合算し、住宅ローン控除などの税額控除を適用して最終的な納税金額を算出します。

・相続税

相続税の計算は、受け取った遺産の価値を金銭換算して、その金額に応じて税率をかけるという方法をとります。遺産が高額になるほど税率が高くなる仕組みです。

ただし相続税には所得税と同じような基礎控除の制度があり、「相続する人数×600万円+3,000万円」までは税金がかからないことになっています。

例えば3人で遺産を相続することになった場合は、4,800万円分の遺産までは税金がかかりません。亡くなった人がそれ以上財産を持っていた場合、超えた分に相続税が発生することになります。

相続税が発生しない場合は、基本的に申告は不要ですが、税金が発生する場合は亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内(提出期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、これらの日の翌日が期限)に税務署に申告して納税を済ませなければなりません。

相続税の計算に使う税率は、相続した財産金額によって以下の8段階に定められています。

相続税の速算表

法廷相続分に応ずる所得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10% なし
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
 

相続税の計算方法はとても複雑なのですが、大まかにいうと、下記のような流れになります。

 

  1. 税金が発生する遺産(課税遺産)の金額を算出する
  2. 課税遺産を法定相続分(法律によって定められた取り分)でわけて税率をかけ、全員が負担すべき税金の総額を出す
  3. 税金総額を実際の相続割合(遺言や調停などで決まった実際の取り分)ごとにわけ直し、個々人それぞれで再度税率をかけて税額を決定する

・贈与税

贈与税も相続税と同じく、受け取った財産の価値が高額になるほど税率が高くなる仕組みです。

贈与税の対象になる代表的な財産は、現金、土地や建物、株式といったものです。ただし現金に関しては、仕送りや教育費といった生活に必要なお金の受け渡しや、祝い金や香典といったものは贈与税の対象にはなりません

また、贈与税にも基礎控除があり、年間110万円以内の贈与であれば税金は発生しません。

贈与税の計算は、1月から12月までの1年間で受け取った財産の総額から、基礎控除の110万円を除いた額に以下の税率をかけます。

贈与税速算表<一般贈与財産用>

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
300万円以下 15% 10万円
400万円 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
 

ただし、以下条件を満たすと特例贈与財産とみなされ、税率が変わります。通常の贈与よりも少し税負担が軽くなるのが特徴です。

 

  • 財産を受け取った人がその年の1月1日時点で20歳以上(令和4年4月1日以降は18歳以上に引き下げ)
  • 両親や祖父母など直系尊属からの贈与

贈与税速算表<特例贈与財産用>

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
 

累進課税を考慮した節税

累進課税を考慮した節税対策

累進課税制度における節税の基本的な考え方は、課税される所得や財産を減らすことです。

例えば所得税であれば、所得控除を活用することで課税所得を減らすことができます。所得控除は全部で15種類あり、列挙すると以下のとおりです。

 

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 寄付金控除

会社員であれば年末調整時に書類を提出することで、大半の所得控除が適用されます。例外となるのは、医療費控除と寄付金控除、雑損控除です。これらは確定申告によって申請しないと適用されない控除のため、該当する場合は手続きを忘れないようにしましょう。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)やふるさと納税も節税には効果的です。

税金の計算は基本的に1月から12月までの1年間を基準にします。よって突出して収入の多い1年があると、その年だけ税率が高くなり、トータルとしての負担が大きくなってしまうかもしれません。仕事の量をある程度自分で調整できる自営業やフリーランスの人であれば、1年だけで大きく稼ぐのではなく、毎年まんべんなく稼ぐことで税負担を分散させることが節税につながるでしょう。

iDeCoやNISAで節税!

iDeCoやNISAで節税!

節税しながら資産運用ができると注目されている制度のひとつが個人型確定拠出年金(iDeCo)です。iDeCoは老後資産の準備として使える私的年金制度ですが、支払った掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となるので、課税所得を減らして税負担を軽減させる効果があります。また、運用益や年金を受け取るときにも税制の優遇があるので節税効果が高いと思われます。

 

ほかにも国が用意している投資関連の制度としては、NISAがありますNISA口座内で資産運用をして得られた利益には税金がかかりません。通常の証券口座であれば利益に対して20.315%もの税金がかかってしまうので、この違いは大きいといえるでしょう。

 

なおNISAは2024年に制度改正が行われ、年間投資枠の拡大や非課税保有限度額の増加などにより、さらに注目が集まっています。新NISAに関する詳しい情報は、金融庁のホームページでチェックしてみてください。

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※1 iDeCoには「楽天ポイント」が貯まる・使えるサービスはありません。

※この記事は2024年3月時点の情報をもとに作成しております。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 累進課税制度とはどのようなもの?

    課税対象額が大きいほど税率が大きくなる課税方式です。日本では所得税などに導入されています。

  • 累進課税制度を導入する理由は?

    税金の種類によっては、支払能力にあわせて税率を変えたほうがより公平と考えられるためです。

  • 所得税の計算方法は?

    総合課税の所得は、各種の収入から年間の「所得」を計算して合算し、所得控除額を引いたあと、それに税率を乗じます。分離課税の所得は、個別の計算式に基づいて計算します。

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