家族信託とは|家族の財産を守るために必要な知識を徹底解説! (第1回)
家族信託とは認知症などで意思の疎通が難しくなった親に代わって財産の管理を家族が受け持つ仕組みのこと。家族信託は、新しい制度なので、まだまだ一般的に広まっていません。ただし、今後の超高齢化社会に対応するために、避けて通れない制度となることは間違いありません。家族信託を活用することにより、万全の認知症対策が実現できます。
家族信託とは
家族信託とは何でしょうか。信託とは、財産を信じて託すことをいいますが、要するに、自分の財産を信頼できる家族に預けて、預ける目的に従って、財産を管理してもらうことをいいます。財産を預ける人を「委託者」、財産を預かる人を「受託者」といいます。受託者は、単に財産を預かるだけでなく、委託者から(信託の目的に従った)財産の管理・運用・処分の権限について譲渡を受けます。また、預けられた財産から利益を得る人を「受益者」いいます。信託財産の財産的価値は、受益権という形で、受益者が保有することになります。委託者と受益者は同一人物でも構いません。
なぜ家族信託が注目されているのか
家族信託は、平成18年に信託法が改正され、翌年から施行された新しい制度です。最近、家族信託が注目をされてきた背景には、高齢化と認知症の問題があります。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」によると、平成28年度の要介護認定の65歳から74歳だと、要介護や要支援認定を受ける人は全体の5%弱ですが、75歳以上になると30%強と6倍に急増しています。
つまり、70歳ころを境に、認知症を発症するリスクが劇的に高まることになります。しかもこれからの日本は超高齢化社会に突入しますから、認知症は私たちにとってより身近な問題となることは間違いありません。認知症が悪化し、親の意思能力が欠如すると、定期預金の解約、実家の売却や預金の引き出しもできなくなり、財産が「凍結」状態となります。そうなると、認知症が悪化した親の介護のために、資金を捻出することが困難になり、家族が大きな問題に直面してしまいます。そのような「財産凍結防止効果」が家族信託にはあります。
家族信託の財産凍結防止効果とは
親の認知症が進行して、財産凍結状態となると、成年被後見人を選任して、財産の管理を依頼することになります。成年後見人の選任の申立自体も煩雑な手続きですし、申立後、家庭裁判所が親族(推定相続人)への照会作業を行ったり、本人調査(面接)を行ったり、また医師による鑑定が行われたりするため、手続期間として3~6カ月程度(法定後見制度の場合)かかります。 成年後見人の選任後でも、財産の処分には、裁判所の許可が必要になります。このように、直ちに必要な財産処分ができないため、周りの家族は大変困ることになります。
しかしながら、親の意思能力があるうちに家族信託契約を交わしておけば、意思能力がなくなったときでも、財産の管理を委託された子どもの判断によって、定期預金も解約や実家の売却ができます。そして、財産を運用、処分して得られたお金(利益)は両親のために使うことができるのです。
家族信託の注意点
先ず挙げられる注意点として、家族信託における受託者の権限は財産の管理・運用・処分に限られる点です。成年後見制度における後見人のように、本人の身上監護(介護や入院や入所の契約を本人に代わって締結するなど)を行うことはできません。いざ、家族信託により、財産は処分できたが、肝心の介護施設への入所が本人名義ではできないとなると、本末転倒になりかねません。
次の注意点として、家族信託では、信託された財産以外の財産に対しては、受託者は、何の権限も無いという点です。本人の意思能力に問題が生じてしまうと、信託していなかった財産については、家族といえどもまったく手が出せなくなります。
任意後見制度との併用
家族信託の上記注意点に対応するため、任意後見制度と家族信託制度を併用することをお勧めします。任意後見制度とは、本人に意思能力がある時に、予め特定の後見人を契約により指定しておく制度です。任意後見制度は、上述の法定後見制度とは異なり、約1か月程度で選任手続が終わるうえ、後見人を指定できるので(法定後見制度の場合は、弁護士等の第三者が選任されます)、身の上監護の問題なども迅速に対応できます。
また、信託財産以外の財産についても、成年後見人が選任されていれば、財産の処分等を行うことが可能になります。
まとめ
両親が認知症になってしまった後では、対処できない問題が生じる可能性があることを理解していただけたと思います。うまく家族信託制度を利用することで、家族のトラブルを未然に防止しておきましょう。
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もし親が認知症が進んでしまったら、本人のために使うお金も引き出せなくなっちゃうってこと!知らなかったわ。