2019年の相続法の重要な改正点は?5つのポイントをわかりやすく解説
2019年から、相続税についての新しい法律が順次施行されることになります。特に、結婚している女性に対する変更点が目立つ今回の改正法について、知っておきたい5つのポイントをまとめました。
- 1. 配偶者が自宅に住み続けられる制度が新設
- 2. 20年以上婚姻関係を結んでいる夫婦間の居住用住宅贈与についての優遇
- 3. 介護や看護に携わった親族は金銭請求が可能に
- 4. 遺産分割の協議中も、故人の預金を引き出すことができる「仮払い制度」
- 5. 自筆証書遺言がより使いやすく
1. 配偶者が自宅に住み続けられる制度が新設
これまで、被相続人(亡くなった方)が所有している家に配偶者が住み続けるには、配偶者自身が家を相続する必要がありました。もちろん、家族間の関係が良好であれば別の人が相続した上で配偶者が住むということもできるでしょう。しかし、莫大なお金が動く場合もある相続においては、スムーズにことが進むとは限りません。家を配偶者以外の人が相続した場合、「売却するから出て行ってくれ」と求められてしまうこともあります。これを防ぐためには、配偶者自身が相続するのが確実です。しかし、その場合は現金が受け取れずに生活費に困窮する恐れがでてきます。
仮にAさんが亡くなり、配偶者である妻のBさんと子Cさんが遺産を相続した場合、法定相続分はそれぞれ1/2ずつです。遺産として、2,000万円の家と2,000万円の預貯金がBさんとCさんに遺された場合、Bさんが家を相続すると現金はすべてCさんに渡ることになり、Bさんのその後の生活が脅かされかねません。
そこで2019年からは「配偶者居住権」として、一定期間あるいは終身該当の家に住み続ける権利が設けられ、相続の際に選択できるようになりました。
配偶者居住権の価値はその人の年齢などに応じて決まりますが、家をそのまま相続するよりも価値を抑えられるため、法定相続分通りの相続をした場合でも現金を多く受け取ることができ、その後の生活基盤を整えやすくなります。
2. 20年以上婚姻関係を結んでいる夫婦間の居住用住宅贈与についての優遇
20年以上婚姻関係を結んでいる夫婦の場合、住んでいる家を贈与しても贈与税がかからないという特例があります。しかし、これまでこの贈与は「相続の一環」とみなされていました。
そのため、前述の「Aさん、Bさん、Cさん」の例でAさんが2,000万円の家をBさんに生前贈与していた場合、「Bさんはすでに2,000万円分の相続をしている」ということになり、法定相続分通りの遺産分割をした場合、現金を相続することができなかったのです。
しかし、相続法改正後はこの分を含まずに遺産分割をすることになるため、法定相続分通りに相続をした場合、2,000万円の預貯金をBさんとCさんが1,000万円ずつ相続できるようになります。
3. 介護や看護に携わった親族は金銭請求が可能に
これまで、遺産の法定相続分が認められている親族は一部の血族に限られていました。しかし、「実際に亡くなる前の被相続人の面倒を見ていたのは血族ではなく長男の配偶者であった」というようなケースもあります。そこで、この点が見直されることとなりました。
法改正後は、義父母の介護や看護をしていた親族は、その人が亡くなった後に法定相続人に対して金銭の請求ができるようになります。直接相続をするのではなく、「相続した人に対しての金銭請求ができるようになった」という点がポイントです。
4. 遺産分割の協議中も、故人の預金を引き出すことができる「仮払い制度」
これまで、遺産分割の協議中には、亡くなった人の預金を口座から引き出すことができませんでした。そのため、葬儀費用などの工面に苦労したという人もいたようです。
こうした事態を改善するために、一定の金額(引き出す人や相続人によって金額は異なりますが、上限は150万円)までは、遺産分割の協議中であっても預金を引き出せるように法改正がなされました。
5. 自筆証書遺言がより使いやすく
遺産の分割割合などを決める際に重要な指針になる「遺言書」ですが、自筆の遺言書は作るのが大変だったり、紛失してしまったりといった問題がありました。そこで、「自筆の遺言書に添付する財産目録はパソコン作成可」、「自筆の遺言書を法務局に保管できる」というふたつの制度が新しく作られました。
遺言書を作るとき、誰に何を遺すかを指示するためには、財産目録を作成する必要があります。これまでは財産目録も手書きで記さなければいけませんでしたが、パソコンで作った財産目録や通帳のコピーでも認められるようになったため、自筆の遺言書を作るのが簡単になりました。
これに加えて、作った自筆の遺言書を法務局で保管してもらえるので、自宅に保管した遺言書をなかったことにされてしまったり、書き換えられてしまったりするリスクを軽減できます。法務局に保管された遺言書は、相続が開始した後、相続人が法務局に保管の有無の確認や証明請求が可能に。それと同時にほかの相続人に対しても、法務局から遺言書が保管されているという通知が届きます。
相続は、遺された家族の生活基盤を左右することもある大切なことです。元気なうちから家族間で話し合いの場を持ち、準備を進めておくことが大切です。
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