心地よく過ごすためのセルフケアとして、身近なものを「メンテナンス」しよう。日常でできるおすすめ3つ

リリース日:2022/06/14 更新日:2022/06/14

漫画『僕はメイクしてみることにした』(糸井のぞ・作)の原案を務めた鎌塚亮さんが、セルフケアとして続けている「メンテナンスすること」について紹介します。今回お話するのは「靴を磨く」「服を仕立て直す」「理容室に通う」の3つ。どれも短い時間で日常的にできるものです。

  1. メンテナンスは自分にとっての「心地よさ」を取り戻す行為
  2. 短い時間で日常的にできる、おすすめのメンテナンス3つ
  3. メンテナンスのコツは「1回の時間は短く、定期的に」

こんにちは。「セルフケア」をテーマにエッセイを書いている鎌塚亮と申します。最近では、漫画『僕はメイクしてみることにした』(糸井のぞ・作)の原案も務めました。

 

私は、自分を楽にする方法を「セルフケア」と呼んでいます。それは、自分自身が心地よくいられるように配慮する、日々の営みのことです。「ケア」と言うと気持ちの問題のように思われるかもしれませんが、具体的で、習得可能な方法であることが大事だと私は考えています。

 

今回は、私がセルフケアとして続けている「靴を磨く」「服を仕立て直す」「理容室に通う」を紹介します。これらは、「1回の時間は短く、定期的に行う」という共通点をもっており、いずれも何かを「メンテナンス」することです。

 

これらのメンテナンスを行うと、私は気持ちが楽になるようです。比較的手間もかからないので、初めてのセルフケアとしてもおすすめします。

メンテナンスは自分にとっての「心地よさ」を取り戻す行為

私がセルフケアについて考え始めたのは、中年期に入って、心身の変化を感じたことがきっかけでした。以前に比べて、二日酔いがきつくなったり、疲れが残るようになったりしたのです。

 

体調が変化すると、感情のバランスも取りづらくなってきます。少年・青年期とは異なる自分の心身と付き合うために、新しい方法を発見する必要がありました。

 

そこで見つけたのが「メンテナンス」でした。自分にあった方法を見つけるまでは、いろんなことを試しました。日記をつけたり、お弁当をつくったり、いらないものを捨てたり。そして定着したものは、いずれも「メンテナンス」という発想を含んでいました。

 

一言で言えば、私は疲れていたのだと思います。すり切れ、疲れた自分をメンテナンスしたいと、どこかで感じていたのかもしれません。しっくり来るメンテナンスに出会って、「どうしてこれまでやってこなかったんだろう」と思いました。

短い時間で日常的にできる、おすすめのメンテナンス3つ

これから提案する内容は、あくまでメンテナンスの一例です。面倒だったり、ピンと来なかったら、やめても大丈夫です。考え方は応用可能。でも、ハマる人は多いんじゃないかと思います。なぜなら、どれも単純に楽しいし、明確に心地いいからです。少なくとも私は、これらのメンテナンスを知らなかった頃には戻れません。

 

では、お金のかからない順に紹介します。

 

【1】靴を磨く

靴を磨く

私が歴代で最もハマったメンテナンスが「靴磨き」です。同好の士は多く、革靴をピカピカに磨いた写真をSNSに上げている人は多いです。趣味性が高いのですね。一日の終わりに靴を磨いていると、「今日の仕事は終わった」感じがして、気持ちも安らぐように思います。

 

靴磨きは、やればやっただけピカピカになるので、楽しいです。「やればやっただけ」が重要です。大人になると、「やればやっただけ」評価されることは減ります。中年期に入ると、成長が頭打ちになる場面も増えてくる。そんなときでも、革靴は磨けば磨くだけ光ってくれる…と、何だかすごく悲しいことを言っている気もしますが、事実です。

 

ちなみに、この精神は筋トレに近いと思います。人生は裏切るけど、「筋肉は裏切らない」。同じように、革靴も裏切りません。

 

最低限必要な道具は、布・クリーム・ブラシです。2,000円くらいでそろいます。ブラシで汚れを取り、クリームで皮革に栄養を与え、布で磨きます。いろいろと流儀はありますので、調べてみてください。安い靴でも、革でさえあれば、見違えるように綺麗になります。

 

革靴だけでなく、スニーカーも自分でクリーニングできます。こちらは布・クリーナー・ブラシの3点セットです。いずれも、そんなに高いものを買う必要はありません。

 

靴磨きとの出会いは、古着屋で買った昔の革靴がきっかけでした。形が気に入ったのですが、少々汚れていたのです。通販で手に入れたクリームで磨くと、数十年前に作られた革靴が、驚くほど生き生きとした表情でよみがえりました。手入れさえすれば、革は何十年ともつのです。

 

靴磨きの良さは、まさに靴を磨いている時間にあると私は思いますクリームの匂いの中で、自分の仕事道具を手入れする時間を通し、私自身がねぎらわれているように感じるのです。ですから、高い靴や、大仰な道具を揃える必要はありません。ただ、ときどきでも、その時間をもてばいいのです。

 

自分の足にぴったりあった靴を、手入れしながら履くことは、日々の生活を驚くほど豊かなものにしてくれます。靴をメンテナンスして自分のものにしていく楽しみは、他には代えがたいものがあると私は思います。じつは、以前は革靴が苦手だったのですが、いまではスニーカーよりも革靴の方が好きになったくらいです。

 

【2】服を仕立て直す

服を仕立て直す

「服を仕立て直す」とは、自分の身体にあわせて、シャツやジャケットのサイズを調整することです。仕立て直すことで、着心地は圧倒的に改善されますし、シルエットもきれいになります。一カ所あたり1,000円から3,000円程度なので、新しく服を買うよりも安く済ませることができます。

 

ほとんどの場合、既製品は私たちの身体にあっていません。服のサイズは「S・M・L・XL」などの数種類に分けて生産されていますが、そもそも私たちの身体は千差万別です。実寸はバラバラ。長らく私も「自分はMサイズだ」と思っていたのですが、別に私は「Mサイズの人間」ではありませんよね。当たり前の話ですが、服を「S・M・L・XL」で選ぶことに慣れていると、意外とこれを忘れてしまうのです。

 

服を仕立て直したきっかけは、購入したシャツの袖丈があわなかったことです。私は腕が短いので、「Mサイズだから買おう」と思って買っても、袖丈があわないことがたびたびありました。そんなとき、ふと近所の「洋服仕立て直し店」の看板を見つけ、持ち込んでみたのです。

 

「はい、直せますよ」と言われて、数日後に戻ってきたシャツは、ぴったり私の身体にあうものになっていました。着心地もばっちりです。なんというか、着ていて楽なのです。「これがサイズがあっているということか…」と、あらためて実感しました。

 

それからクローゼットの洋服を見直してみると、思った以上に肩幅がバラバラであることに気づきました。これまでは「Mサイズだから同じだろう」と思って洋服を買っていたのですが、メーカーごとに「Mサイズ」があって、じつは私の身体にあうものとあわないものが混在していたのです。

 

服のサイズを意識するようになってからは、新しく服を買うときにも、着丈、身幅、肩幅、袖丈などを意識するようになりました。すると、既製品でも自分の身体の寸法にあっているメーカーがあることに気づきました。それを知っていれば、いちいち仕立て直したり、わざわざオーダーメイドをする必要もありません。

 

「服を仕立て直す」ことを通じて、私は「身体にあった服を着る」心地よさを知ったのでした。案外、こういうことは誰も教えてくれません。

 

恥を忍んで言うと、私が洋服の寸法を明確に意識するようになったのは、30歳を過ぎてからでした。けっこうそういう人は多いんじゃないかと思います。ジャケットの肩幅をあわせるだけでずいぶん楽になるので、まずはそこから試してみてはいかがでしょうか。

 

【3】理容室に通う

【3】理容室に通う

昔から散髪が好きでした。その理由ははっきりしています。私が自分を嫌いだったからです。

 

どういうことかというと、髪を切ると、切り落とされた髪の毛の分だけ、自分自身の総量がちょっと減りますよね。思春期の私は「消えたい」なんて思うことが多かったので、自分の総量がちょっとでも減ることで癒やされていたのです。

 

いまではそこまで自己嫌悪に悩まされているわけではありませんが、散髪は好きです。やはりさっぱりします。あくまで私自身の経験として言いますが、メンタル(精神面)の問題をメンタルで解決するのは難しく、フィジカル(身体面)で解決した方が早い場合が多いです。おいしいものを食べて、ゆっくり風呂に入り、しこたま眠ると、そこそこ改善します。私にとって、散髪はフィジカルで問題を解決する方法のひとつなのです。

 

30代に入ってから、いわゆる理容室(床屋)に行くようになりました。それまでは美容院に行っていたのですが、中年男性である自分がどこか浮いているような気がして、落ち着けなくなったのです。そこで、大人の男性向けのスタイルを提案する「バーバー」型の理容室に通うようになりました。これがとても良かったのです。

 

理容室では、顔剃りやマッサージ、爪磨きをはじめとした、さまざまなサービスが用意されています。べつに、毎回フルで注文する必要はありません。「顔剃りだけ」「カットだけ」を頼める店はけっこうあります。

 

お店によって値段はさまざまですが、顔剃り1,000円のところもあれば、5,000円ほどのコースでヘッドスパやフェイスマッサージをしてくれるところもあります。冠婚葬祭の前に訪れて、ビシッと決めてもらってもいいかもしれません。

 

銭湯や整体に行く感覚で、理容室を訪れてみてはどうでしょう。理容室のポテンシャルは、まだまだ過小評価されていると感じます。訪れるのは「1カ月に1回」じゃなくてもいいのです。ストレス解消の方法として、エンタメとしての「散髪」を楽しんでみてはいかがでしょうか。喫茶店めぐりならぬ、理容室めぐりをしても面白そうです。

メンテナンスのコツは「1回の時間は短く、定期的に」

私たちは、自分自身を取り換えることはできません。だから、「メンテナンス」という発想は遅かれ早かれ必要になってきます中年期以降、その必要性を自覚する機会は明らかに増えました。メンテナンスとは、中年期の思想なのです

 

今回提案したセルフケアとしてのメンテナンスは、先に書いた通り、あくまで一例です。例えば、片付けも、デスクトップの整理も、メンテナンスと言っていいでしょう。もし「これ、いいな」ということが見つかったら、繰り返しやってみることをおすすめします。

 

メンテナンスのコツは「1回の時間は短く、定期的に」です一気に全部やろうとしても難しい。できても続きません。これは人間関係と一緒です。だから、「生産性を高める」みたいに考えない方がいいです。「何かのために」は疲れてしまう。ただ、その行為自体が気持ちいい、だから続けている。それがセルフケアだと思います。

 

念のため断っておきますが、セルフケアは「人に頼るな」という意味ではありません。私たちはひとりでは生きていけませんから、人に頼るのは当然のことです。セルフケアは生き延びるための技術のひとつ。重要なのは、ケアの回路を増やすことなのです

 

シャツのサイズがあっている、ただそれだけで救われる時というのはあります。気分が最悪な時にこそ、綺麗に磨かれた革靴や、散髪したての髪が自分を支えてくれる。切ないほど些細な営みが、ときに決定的な役割を果たすことがあります。それは、私たちの生活にとって、そのように些細で平凡なことがら以上に、大切なことなどありはしないからではないでしょうか。

編集:はてな編集部

鎌塚亮
この記事を書いた人
鎌塚亮

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

1984年生まれ。セルフケアをテーマにエッセイを執筆。VOCE 連載「メンズメイク入門」を原案とした『僕はメイクしてみることにした』が糸井のぞによりコミカライズ、講談社より発売。

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