植物が「私だけの時間」を豊かにしてくれた。ワンルームで約180の植物を育てる私がおすすめしたい、植物のある暮らし

リリース日:2022/08/16 更新日:2022/08/16

6畳の部屋とベランダで約180の植物と暮らすイラストレーターの佐野裕一さんが、植物との生活を通して「自分だけの時間」がどう変化したかをつづります。これから植物を取り入れたい人に向けた「植物のある暮らしの作り方」の紹介も。

  1. 6畳の部屋とベランダで楽しむ、植物のある暮らし
  2. 「価値観」や「考え方」を変えてくれた3つの植物
  3. 一人暮らしの空間でもできる「植物のある暮らし」の作り方
  4. 植物と向き合うと「私だけの時間」に浸れる

はじめまして、こんにちは。6畳のワンルームで漫画やイラストの制作をしながら180ほどの植物と暮らしている、佐野裕一と申します。

 

今年から在宅で仕事をすることが多くなり、今では完全に在宅ワーク。引きこもり生活です。月に1、2回は気晴らしに出掛けるものの、運動や買い物のほかはずっと家にいます。

 

私は自己管理があまり得意ではないので、生活リズムが乱れてしまうことがよくあります。けれども、そんな私の生活に精神的な安定とメリハリをもたらしてくれたのが、植物との暮らしでした。

今回は、日々植物と暮らす私が、どのように植物を楽しみ、植物を通してどのように生活が豊かになったかをお話ししつつ、植物のある暮らしの作り方についてご紹介したいと思います。

 

在宅ワークなどで自宅にいる時間が増えたという人も多い今日この頃なので、部屋での過ごし方を楽しむアイデアとしても参考にしていただければ幸いです。

6畳の部屋とベランダで楽しむ、植物のある暮らし

まずは、一人暮らしをしている6畳の部屋とベランダで、私が植物のある暮らしをどのように楽しんでいるか、その様子を紹介します。

目が覚めると、まず歯ブラシを持ってベランダに出ます。ゆっくり植物を観察するためです。そのまま10〜15分ほど、歯磨きをしながらベランダを徘徊します。実際は3m ×80cm のスペースなので徘徊というほどではないのですが。

ベランダには約120ほどの植物があり、日々変化し続けているため、いつ見ても飽きることがありません。

 

昨夜の蕾は花が開いているし、花を終えたサボテンが実をつけていたり、昨日までは1cm だった新芽が一晩で2cm になっていたり。生命が育っていく様子を見ることができるこの場所は、矮小(わいしょう)なベランダのようでいて、私にとっては小宇宙です。

 

そして植物を見て、気づいたこと、感じたことを1つ、部屋に戻ってノートにまとめます。小さなノートに毎日1ページ。このルーティンをこなすだけで精神が随分整います。

 

私にとって朝にベランダへ出ることは、体感では朝の公園へ散歩に出掛けたくらいの効果があります。朝日を15分ほど浴びて自然に触れているのですから、ほとんど森林浴と変わらないのかもしれません。ちょっと過大評価かも知れませんが。

昼食を取るときも植物との時間です。ライトに照らされ、サーキュレーターの風になびく植物たちを眺めながら、ぼんやりと食事をします。

 

目で植物の表面をなぞります。光を受けて透けた葉を、目を細めて眺めます。

そういうふうにぼんやりと植物たちを眺めながら食事を取っていると、最近あることに気がつきました。食事の味が変わるのです。

 

正確には、舌の感度が上がるのです。これはあくまで私の体感ですが、食事の味がより繊細に感じられるようになり、使う調味料もちょっと少なめになりました。

 

少し胡散臭いように聞こえるかも知れませんが、おそらくこれは「外で食べるご飯はおいしい」という現象に近いのではないでしょうか。公園やキャンプ、アウトドアで食べる食事はなぜだか少しいつもよりおいしく感じますよね。おそらくそれに近い理屈です。

 

また、私はつい何かしらのメディア(テレビや雑誌など)を見ながら食事をとってしまいがちです。すると、刺激の強さが「メディア>食事の味」という順になってしまい、味をしっかり楽しめずにいました。

 

そこで植物をぼんやり見ながら食べるようにしたところ、「食事の味>植物を眺める穏やかな刺激」という順になり、より食事を楽しめるようになった気がしています。緊張がほぐれているのもあるかもしれません。

 

この理屈で言うと、食事を楽しみたいなら一心に料理を見つめて味わうことこそ最も合理的ではないかと思われますが、それはそれで休憩にしては疲れるので、私はできないでいます。誰でも手軽に実践しやすいことなので、少し気持ちが疲れたお昼は植物やお庭を見ながら取るランチを試してみてください。

日記を書いたり本を読んだり絵具を使ったり、あまりブルーライトを見ないようになるべくアナログな作業をするようにしています。そのような時間にも植物は寄り添ってくれます。

夜のゆっくりとした時間を過ごすとき、私は室内やベランダから最も見頃の一鉢を連れてきます。

 

200近くあると毎日2、3鉢は何かの花が咲いているのです。見頃の一鉢を机に置き、飲み物を用意して過ごす時間に至福を感じます。

「価値観」や「考え方」を変えてくれた3つの植物

生活に植物があることで、私にとってたくさんの良いことがありました。それは先ほどの内容とも少し重複してしまうのですが、一番大きいのは、自宅でゆっくり過ごす時間がより豊かになったことです。

 

人間よりもはるかにゆったりとした時間の感覚を持つ植物と過ごすことで、オフの時間の過ごし方が少し変わりました。ゆっくりした人と過ごしていると、少し時間がゆっくりに感じられる、というような感覚に近いかも知れません。日記を書くとき、絵を描くとき、本を読むとき、珈琲を飲むとき。植物と一緒だと、より一層その時間がふくよかに感じられるのです。

 

そのほかにも、植物はその生き方や知性を持って、私の価値観や考えを更新してくれます。そんな例を、いくつか具体的な植物を挙げながら紹介します。

「シクラメン」の生き方を見て、ずっと頑張らなくてもいいんだと思えた

2020年3月。満開のシクラメン

まずひとつ目。それは「シクラメン」の休眠についてぼんやり考えていたときのことでした。

 

植物の休眠とは、代謝を最低限にして、花や葉などの成長活動を排して生命維持に努め、眠ったような状態になること。一部の植物による、つらい季節を乗り越えるための知恵です。

 

代表的な国内の植物を挙げると、夏季に休眠をする彼岸花が有名かも知れません。彼岸花は晩夏に花茎を伸ばし、ご存じの通り真っ赤な花を咲かせます。そしてしばらくすると花茎は枯れ落ち、根元から葉が出てくるのです。

 

彼岸花は、花の時期には葉を持たず、葉の時期には花を持たない不思議な花です。花を咲かせた後に葉を伸ばし、他の一年草たちが枯れゆく中で青々とした葉をそよがせて、秋から来年の春にかけての柔らかな日の光を独占するのです。そして春の終わりにはまた枯れて秋まで眠ります。

 

シクラメンは簡単に言うと、晩夏に起き出して初夏に眠るという意味で、彼岸花に似たサイクルを生きています。

2020年8月。休眠中のシクラメン。これはこれで、お団子ヘアが埋まっているみたいでかわいいです

シクラメンは暑さが苦手です。そんなシクラメンは、暑い夏、勝負をしません。ただじっと膝を丸めて呼吸を落とし、石のような塊根部だけになり、暑さが遠のくまで限りなく死に近い生を日陰で静かに過ごします。

 

その生き方に私は感銘を受けました。人間も同じで良いのではないかと思いました。

 

ずっと頑張って葉を広げて花を咲かせていなくてもいい。眠りの季節があってもいい。自分の季節がきたら咲けばいい。そう言ってもらえたような気がしたのです。

 

私も夏はものすごく苦手です。冬に比べるとすごく生産性が下がります。けれども生きているだけでいいかなとちょっと思えるようになりました。

サボテン「新天地」で、潜在的な魅力を見出す喜びを知った

「新天地」は私が初めて買ったサボテンの一種です。今はもうなくなってしまった京都のある雑貨屋さんで購入しました。

 

当時サボテンの知識はなく、水耕栽培の珍しさに惹かれてなんとなく手に取ってみたのですが、しばらく育てていくうちにあることに気が付きました。新天地というサボテンは、濡らすとトゲが鮮血のように変色するのです。

 

構造的には大したことではないのですが、私はあまりの変容ぶりにひどく興奮したのを覚えています。このように、新天地には「潜在的な魅力はたくさん隠されていて、それをひも解く楽しみがある」ということを教えてもらいました。

「コウモリラン」が、植物を立体的に配置する面白さを教えてくれた

真ん中に3つある、吊り下げられた葉の長い植物がコウモリラン

一般的に植物といえば鉢に植えるイメージが強いかと思いますが、「コウモリラン」はその限りではありません。コウモリランは、野生では他の木の幹や枝に張り付いて生きているのです。

 

園芸のコツの一つに「なるべく自生地を再現する」というのがあります。もともと生えていた環境を可能な限り再現することによって、植物はより健全な発育を成すことができるのです。コウモリランの場合は、コルク樹皮やヘゴ板などを支えにして、水苔を間に挟んで着生させ、部屋の高い位置に吊り下げることでした。

 

吊り下げる、いわゆる「ハンギング」と呼ばれる方法で部屋に配置すると、室内の印象がずいぶん変わります。室内に置いている植物のラインに立体感とリズムが生まれ、より植物と部屋の調和性が高まるのです。

種類によっては大鹿のように見えることから「麋角羊歯(ビカクシダ)」と呼ばれることも多いです。これは、まさに鹿の頭部そのものに見えるビカクシダ・リドレイ

私の部屋は大変狭いですが、コウモリランをはじめとする吊り下げて楽しめる植物と出会うことで、室内のスペースをより効率的かつ有効に使えるようになりました。

 

そして植物の立体配置は、まるで緑に包まれて暮らしているような充足感を与えてくれます。室内であっても、ライトとサーキュレーターの風にそよぐ葉の様子は涼しげで、見ていてなかなか心地が良いものです。

一人暮らしの空間でもできる「植物のある暮らし」の作り方

近頃、植物はおしゃれな雑誌やInstagram、YouTubeでも注目を集めており、関心を寄せる人が随分増えてきているように思います。ここからは、一人暮らしの部屋に植物を取り入れたいと考えている人に向けて、私なりの「植物のある暮らし」の作り方を説明していきます。

植物の「生きやすい場所」を調べて、どこに置くか考える

私は、植物をインテリアとして捉えるよりも、ペットのように、より大切に寄り添う付き合い方を提案したいです。

 

かみ砕いてお話すると、インテリアとして捉える場合は「置きたい場所に好きな植物を飾る」というスタンスなのに対し、ペットのような付き合い方をする場合は「植物が生きやすい場所に適した植物を置く」という考え方です。

 

なので、なるべく植物が育ちやすい窓辺やベランダに置くことを前提に考えた方が、より幸福な付き合い方ができるかなと思います。殺風景な窓辺に一つ植物があるだけで、印象は随分変わります。窓辺は一つのキャンバスと考えると、窓辺に鉢を置くというのは実はとても創作的なことのように感じます。

 

まず気になった植物が見つかったら、お店の人に聞いたりネットで調べたりして、その植物のことを自分なりに調べてみてください。

 

ここでチェックするポイントは以下の3つです。

・【日当たり】どれくらいがベストなのか
・【水やり】ペースはどれくらいか
・【気温】何度くらいが適温で、何度くらいまで耐えられるのか

以上を踏まると、たとえば年間を通して楽しめる「サンセベリア」の場合は、以下の環境に適していることがわかります。

・【日当たり】置き場所は、できれば明るい窓辺
・【水やり】生育期は週に一度くらい
・【気温】ベストは20度から35度

この条件に見合う環境を、家の中で探してみてください。

 

このように考えていくと、家の中で植物を育てられる場所は思いのほか少ないことに気がつくと思います。けれども、それが植物を育てるコツです。人間と同じで、つらい環境を強制すると、次第に元気がなくなったり病気になったりしてしまいます。

 

育成用にライトなどを用意できれば別ですが、はじめのうちはまず、適切な場所探しと、そこに合う植物選びが重要だと思います。

日当たりが悪くても育つ“強い”観葉植物も、管理に気をつける

窓辺にスペースがないので、太陽の光があまり当たらない別の場所へ置きたい方もいると思います。結論から言うと、育成用にライトを用意しない限り、窓辺以外では長期的に植物を管理することはできません。どうしても切り花的な楽しみ方になってしまいます。

 

ですが、キッチンや洗面所、お風呂場の窓辺など、少々日当たりが悪くてもある程度楽しめる植物もあります。それは自然界の中でも、林や森、木陰の下に生えていて、強い太陽の光を好まない植物です。

 

いくつか例を挙げると、以下の3種類になります。

・【シダ植物】アジアンタムやプテリス、ダバリア、シノブなど
・【サトイモ科の植物】ポトスなど
・【耐陰性がある植物】ガジュマルなど

彼らは、小さいうちは台所の窓辺のようなあまり日が当たらないところでもある程度楽しめると思います。中でもシダ植物は水切れを嫌い、湿度を好むので、水場近くでの管理がおすすめです。

 

ただ一つ留意しておきたいのは、彼らもできることなら優しい日当たりを好む植物であり、ベストな環境に置いてあげる方が生き生きと成長するということ。日当たりの悪いところでも枯れはしませんが、耐えているだけ、といったイメージです。なので、日当たりの悪い場所でずっと管理するのはあまりおすすめできません。

 

また、最適な環境に比べると変化に乏しく、新芽が出たり花が咲いたりといった本来の魅力も半減してしまいます。全然育たないなと感じたり、調子が悪そうに見えたりしたら、一度場所を変えてあげてください。なお、光量不足はクリップライトとLED電球を使用することでも解決できます。

 

このように「様子を見て対応する」ことが植物と暮らすうえで大切な考え方だと思います。

植物と向き合うと「私だけの時間」に浸れる

私はひとりの時間が好きですが、寡黙な植物と過ごす時間はもっと好きです。夜、白熱球の明かりに照らされた植物とともにゆっくりしていると、それだけでも幸福です。

 

これからもずっと、私は一つの心の拠り所として植物たちと暮らしていきたいと考えています。もちろん植物の表面的な美しさや可愛らしさにも惹かれていますが、今本当に価値を感じているのは、植物と過ごす時間です。

 

長く一緒に過ごしてきた、気心の知れた植物をぼんやり眺めていると、いろいろな考えが浮かびます。それは私だけの思考です。誰かが作ったものを消費することで生み出される感情は、多くの場合において消費者を想定して逆算的に作られたものですが、植物との時間は違います。

 

植物を眺めているとき、目や耳や匂いや手触りで感じ、ときどき味覚で植物に触れるとき、私は私だけの時間に浸れる気がします。

 

すべての人に言えることではありませんが、インターネット全盛期の昨今、今後はますます完全オフラインの体験価値が高まっていくのではないでしょうか。

 

言葉は少しあれですが、適度な植物への投資は、まさに“人生へのダイレクト課金”といった感じがします。何事も同じで、課せば課すほど豊かになるといったものではありませんが、ある程度のそれは間違いなく人生を豊かにしてくれると強く感じています。

 

この記事や私の発信が、寡黙な彼らに目を向けるきっかけになれば幸いです。

佐野裕一
この記事を書いた人
佐野裕一

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

1995年生まれ 京都在住。京都精華大学マンガ学部卒業。アートギャラリーやSNSにてイラストやマンガを発信する傍らアパートのワンルームで約180株の植物を育成中。6月中旬より朝日出版社WEBサイト「あさひてらす」と自身のTwitterアカウントにて、マンガ“植物の暮らし方“を連載開始。ちなみに部屋の中で1番好きな植物はシクラメン。

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