基本給とは?額面給与、月給、手取りの違いを詳しく解説
給料に関する用語は、基本給のほか月収や額面給与、月給、手取り、手当など数多くあります。これだけ関連用語があると、わかりにくく混乱してしまうかもしれません。ここでは基本給と額面給与、月給、手取りの違いを詳しく解説します。
基本給とは
基本給とは一定期間に会社から支給される基本的な給料のことで、「基本賃金」とも呼ばれます。基本給には、通勤手当や資格手当などの各種手当は含まれていません。「基本給」に各種手当を加えた「月収」から税金や社会保険料などが天引きされます。
参考までに、厚生労働省が調べた基本給の平均金額を載せておきます。
基本給平均(男女計)
※小数点二位以下を四捨五入しています。
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」を見ると、基本給の傾向としては、正社員・正職員と、それ以外との格差が大きくなっていることがわかります。
基本給の決め方
基本給の基準となるのは、仕事のスキルや能力、年齢や学歴などです。基本給を決める際、何を基にするかによって、次の3種類の決め方があります。
(1)仕事給型
(2)属人給型
(3)総合給型
(1)仕事給型
仕事給型とは、仕事のスキルや能力、成果に基づいて基本給を決める方法です。いわゆる能力主義や成果主義といわれる考え方に通じており、仕事給型を重視する会社が増えてきています。
(2)属人給型
属人給型とは、本人の学歴や年齢、勤続年数などに基づいて基本給を決める方法です。いわゆる年功序列の考え方に通じています。
(3)総合給型
総合給型とは、仕事給型と属人給型をあわせた方法で、総合的に基本給を決める方法です。仕事給型と属人給型のどちらを重視するかによって、会社の基本給の決め方は変わってきます。
日本の会社の多くは、年功序列型賃金制度を採用していたことから、仕事給型よりも属人給型を重視していたといえます。近年、能力主義や成果主義が重視されてきているとはいえ、現在でも属人給型を重視している会社が多いのが現実です。
毎月の給料の内訳
基本給に諸手当を加えたものが、「月収」です。諸手当には、労働基準法で規定のあるものから、会社や職位によって異なるものまでさまざまな種類があります。ここではカテゴリー別に主な手当を紹介します。
労働基準法で定められている手当
●時間外手当…法定労働時間を超えて勤務(残業)した場合に支払われる手当
●休日手当…法定休日に勤務した場合に支払われる手当
●深夜手当…22時~翌5時の間に勤務した場合に支払われる手当
仕事上支給される手当
●役職手当…部長、課長、係長といった責任ある役職の社員に支給される手当
●営業手当…営業職の社員に対して、社外の活動に必要な費用を補てんする目的で支給される手当
●出張手当…出張時にかかる雑費の補てんとして支給される手当
●皆勤手当、精勤手当…遅刻や欠勤のない(少ない)社員に報奨として支給される手当
●資格手当…会社で決められた資格保有者を優遇し、資格取得を推奨する目的で支給される手当
●技能手当…会社が求める特別な技能を持つ社員を優遇する目的で支給される手当
●研修手当…外部で開催される勉強会の参加等に対して支給される手当
生活上支給される手当
●家族手当、扶養手当…扶養家族がいる社員に対して支給される手当
●住宅手当…家賃や住宅ローンの補助のため支給される手当
●通勤手当…通勤にかかる交通費やガソリン代などの補てんのため支給される手当
労働基準法で定められた手当以外は、会社の判断で支給されます。
また、諸手当は毎月決まった額が固定で支払われるものと、月の労働時間や業務内容などによって変動するものに分けることもできます。役職手当や資格手当、住宅手当などは固定手当、時間外手当や皆勤手当などは変動手当です。
手取りと月給とは
ここまで、基本給と諸手当、月収について解説しましたが、これは会社が支払う給料です。実際には、ここから税金や社会保険料などが控除されて、毎月の給料が支払われます。これが「手取り」となります。
まとめると「基本給」「諸手当(固定手当・変動手当)」「月収」「手取り」「月給」の関係は次のとおりです。
●月給=基本給+固定手当
●月収=月給+変動手当
●手取り=月収-社会保険料や税金など(控除)
1. 手取り
基本給に諸手当を加えた「月収」から社会保険料や税金などが天引きされ、実際に受け取れる賃金のことを「手取り」といいます。月収から天引きされるのは、次のような社会保険料や税金などです。
●健康保険料
●介護保険料(加入義務があるのは40歳以上)
●雇用保険料
●厚生年金保険料
●所得税
●住民税
●財形貯蓄や企業型確定拠出年金の上乗せ掛金(マッチング拠出)など
なお、上の一覧のうち、財形貯蓄や企業型確定拠出年金のマッチング拠出は全員に適用されるものではありません。勤務先に制度があり、本人が希望した場合にのみ対象になります。また、住民税は収入があった年の翌年に納税義務が発生するので、新入社員1年目は給料からの住民税の天引きはないのが一般的です。
2. 月給
「月給」は、毎月決まって支払われる賃金のことをいいます。つまり、基本給に諸手当のうちの「固定手当」のみを加えた賃金が「月給」です。「月収」と似た言葉でまぎらわしいですが、月収は変動手当も含む金額を指します。
したがって、例えば
基本給が20万円
固定手当が3万円
変動手当が4万円
の場合、「月給」「月収」はそれぞれ次のとおりです。
月給=基本給(20万円)+固定手当(3万円)=23万円
月収=基本給(20万円)+固定手当(3万円)+変動手当(4万円)=27万円
額面給与とは
額面給与は、上述の「月収」に相当します。つまり、基本給と固定手当・変動手当を足した賃金の総額が「額面給与」(=月収)です。また、「額面給与」は「給与」と呼ばれることもあり、両者はほぼ同じ意味で使われます。
これをまとめると、
月収=額面給与(給与)=基本給+固定手当+変動手当
という式が成り立ちます。
額面給与が高くても基本給が低いとどうなる
基本給は基本的な給料を意味しますが、ほかにも重要な役割があることを忘れてはなりません。それは、基本給が残業代・深夜手当などの割増賃金やボーナス(賞与)、退職金を計算する際の算出基準であるということです。
いくら額面給与が高くても基本給が低い場合は、割増賃金やボーナス、退職金が予想外に少なくなってしまうおそれがあります。
1. 割増賃金が少なくなる
割増賃金とは、労働基準法で定められている時間外労働、休日労働、深夜労働をした場合に残業代・深夜手当などとして適用されるものです。割増賃金は、基本給を基に算出されるため、基本給が低いと1時間あたりの割増賃金が少なくなります。
2. ボーナス(賞与)が少なくなる
ボーナス(賞与)も、基本給が低いと月収のわりに少なくなるおそれがあります。会社により異なりますが、ボーナス額は「基本給×○カ月分」のように決められることが多いからです。
3. 退職金が少なくなる
退職金もボーナス同様、基本給をもとに算出されることが多いため、基本給が低いと退職金が少なくなるおそれがあります。退職金は一例として次のような計算式により算出されます。
退職金=基本給(算定基礎額)×一定の支給率+特別加算または減算額
給料を受け取ったら基本給を確認しよう!
この記事では、基本給と額面給与(月収)、月給、手取りの違いを詳しく解説してきました。
基本給はよほどのことがない限りもらえなくなることはありませんが、基本給がいくらなのかは常にチェックしておくことをおすすめします。
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このテーマに関する気になるポイント!
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基本給とは?
基本給とは一定期間に会社から支給される基本的な給料のことです。「基本賃金」とも呼ばれます。基本給には、通勤手当や資格手当などの各種手当は含まれていません。
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基本給にはどのような決め方があるでしょうか?
「仕事給型」「属人給型」「総合給型」の3種類の決め方があります。
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「月給」「月収」「手取り」の違いは?
それぞれの関係を式で表すと、次のようになります。●月給=基本給+固定手当
●月収=基本給+固定手当+変動手当
●手取り=月収-社会保険料や税金など -
額面給与が高くても基本給が低いとどうなる?
基本給を基準に計算される、割増賃金やボーナス(賞与)、退職金などが少なくなってしまうおそれがあります。
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基本給が少ないとボーナスも少ないことに…それは切ないわね