成年後見制度とは|概要やメリット・デメリットをわかりやすく解説します

リリース日:2021/11/15 更新日:2024/11/13

成年後見制度とは、先天的な障碍または病気やケガによって物事を判断する能力が十分でない方(以下「本人」といいます。)について、本人の財産や権利を守る人を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。今回は、家族にもしもの事があった時に利用することのできる後見制度について確認していきましょう。

成年後見制度とは|概要やメリット・デメリットをわかりやすく解説します
  1. 成年後見制度とは
  2. 成年後見のメリット・デメリット
  3. まとめ

成年後見制度とは

成年後見制度とは

1.  成年後見制度の概要
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、法定後見制度には成年後見、保佐、補助の3種類があります。
法定後見の3種類の制度は、本人の判断能力の状況に応じて選択して利用することができます。

 

(1)成年後見・・・判断能力が全くない方
(2)保佐・・・判断能力が著しく不十分な方
(3)補助・・・判断能力が不十分な方

 

今回は法定後見制度の一つである成年後見について解説していきます。2. 利用する後見制度の選択
本人が法定後見の3種類のいずれかに該当するかどうかは、まず医師の診断書を参考にして裁判所へ申立を行います。裁判所は必要に応じて申立後に変更を指示することもあり、その後申立に応じて後見人等を選任します。
申立時にご家族が就任を希望したとしても、裁判所の判断で法律や福祉の専門家を選任する場合もあります。

 

後見人等の種類
(1)成年後見相当の場合は、成年後見人
(2)保佐相当の場合は、保佐人
(3)補助相当の場合は、補助人

 

3. 成年後見人の仕事

(1)成年後見人ができること
成年後見人は、生活・医療・介護・福祉などの視点から、本人を保護・支援します。具体的には、本人の不動産や預貯金などの財産を管理したり、本人の希望や体の状態、生活の様子等を考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、介護契約の締結や医療費の支払などを行ったりします。
成年後見人は行った職務の内容を定期的に又は随時に家庭裁判所に報告しなければなりません。なお、この報告は本人の判断能力が回復して後見が取り消されたり、本人が死亡したりするまで続きます。

 

(2)成年後見人にはできないこと
医療の同意(手術や輸血、延命措置等)、養子縁組、結婚、離婚などについては、成年後見人として行うことはできません。
実際に本人を介護するなどの行為も成年後見人は行いません。ヘルパーの方に介護してもらうための契約を締結することが後見人の仕事です。
また、成年後見人の職務は本人の死亡により終了するため、葬儀は原則として親族が行います。

 

(3)成年後見人になったときに気を付けることは?
本人の財産は「他人の財産」であるという意識を持って管理する必要があります。
成年後見人に不正行為等があれば、家庭裁判所は後見人解任の審判をすることがあります。
さらに、成年後見人が不正行為によって本人に損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければなりません。場合によっては背任罪、業務上横領罪等の刑事責任を問われることもあるので注意が必要です。

成年後見制度って聞いたことはあったけど、どんな制度かはよく分からなかったから、ここでいろいろ知れて良かったわ!

成年後見のメリット・デメリット

成年後見のメリット・デメリット

1. メリット

(1)本人が不要な契約をしてしまったとしても取り消すことができる
認知症等により、本人が理解しないまま不要な契約や高額な買い物をしてしまったとしても、その取引を取り消すことができます。

 

(2)成年後見人が本人の財産を適正に管理することで、経済的な安定が期待できる。
成年後見人は年に1回または適宜に裁判所へ収支報告を行うことが義務付けられています。
そのため、親族等による使い込みを防止したり、無駄な支出を削ったりすることで経済的破綻を回避することができます。

 

(3)生活費等に充てるために所有する不動産や証券を売却することができる。
不動産資産が多くあるため維持管理費用が経済的負担となる場合は、生活費等に充てるために相当な理由があれば成年後見人が売却することも可能です。
ただし、自宅として使用する不動産の売却には裁判所の許可が必要です。

 

(4)身の回りの手続や契約の受付窓口を一本化できる。
成年後見人が全ての窓口となることで、各種契約相手方からの問い合わせ等を一本化することができ、情報の管理が容易になります。

 

2. デメリット

(1)親族が立候補したとしても、親族以外の専門家が選任される場合がある。
申立の際に、成年後見人となる者を候補者として記載することができますが、裁判所の判断により、弁護士や司法書士等の外部の専門家が選任される場合もあります。

 

(2)外部の専門家が選任された場合は、報酬が発生する。
成年後見人は親族が就任した場合であっても家庭裁判所に報酬を請求することができます。
家族の場合は、報酬を受けずに業務を行う場合もありますが、外部の専門家が就任した場合は、報酬を支払う必要があります。
報酬額は事案によって異なるため、一概に決められてはいません。

(3)本人が死亡するまで続き、中止することができない。
後見制度は本人のための制度です。
親族が立候補した場合に、裁判所が外部の専門家を選任したため、手続を終了させたいと考えても、途中で中止をしたり、成年後見人の交代をしたりすることはできません

 

(4)本人の財産は厳格に管理され、家族であっても本人以外のために使用することができなくなる。
成年後見が開始すると、一切の本人の財産は本人以外のために使用することはできなくなります。
家族全員の生活費として管理されていた預貯金等も成年後見人が分別管理することになります

まとめ

成年後見制度は申立が煩雑であったり、費用がかかったり、途中でやめることができないといった小さくないデメリットがありますが、これは本人以外の方にとってのデメリットです。
本人にとって日常生活を不自由なく過ごしてもらうための制度であることを理解することが大前提です。

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 成年後見制度とは?
    判断能力が衰えてしまったり、著しく失ってしまったりした場合に、本人に代わって財産管理や意思決定をしてもらう代理人を選任することで、日常生活の安定や財産の保護を図る制度のこと。

  2. 成年後見制度の種類は?
    法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、法定後見制度には(1)成年後見(2)保佐(3)補助の3種類がある。

  3. 法定後見制度の3種類の区別は?
    判断能力の状況により、区分される。
    成年後見・・・判断能力が全く無い場合
    保佐・・・判断能力が著しく不十分な場合(ほとんどない)
    補助・・・判断能力が不十分な場合(基本的にあるが不十分)

  4. 法定後見制度の3種類を区別する方法は?
    医師の診断書をもとに裁判所が判断するす。

  5. 成年後見のメリットは?
    ・厳密な財産管理をすることで、経済的安定を図ることができる。
    ・不要な契約や取引を防止したり、取り消したりすることができる。

  6. 成年後見のデメリットは?
    ・申立が煩雑
    ・費用がかかることがある。
    ・希望する立候補者が選任されない場合がある。
    ・制度の利用を途中でやめることができない。

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市川俊介
この記事を書いた人
イントリム司法書士事務所 パートナー司法書士 一般社団法人日本財産管理協会 認定会員司法書士
市川俊介

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

2007年に司法書士登録 2010年に目黒区で開業 2018年にパートナ―司法書士として合同事務所を開設し現在に至る。金融機関や税理士、弁護士等から依頼を受け、不動産の贈与や相続、売買等の登記を多数取り扱う一方、民事信託、遺言書作成や死後事務業務等の登記以外の業務についても積極的に関わり、依頼者の要望に行き届くサービスを心掛けている。

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