年金とパート収入があっても配偶者控除や扶養控除の対象になる?扶養の範囲を解説
これまで扶養に入っていた人がアルバイトやパートをはじめるとき、気になるのが扶養の範囲。できれば扶養の範囲で働きたいという人が多いですが、そもそも扶養を外れるとどうなるか、詳しく知らない人もいるのではないでしょうか。ここでは税金と社会保険の扶養の範囲について詳しく説明し、年金とパート収入がある場合の計算方法も解説していきます。
- そもそも扶養とは
- 所得税の控除の種類
- 扶養に関する所得の計算方法
- 扶養から外れるとどうなる?(税金編)
- 社会保険の130万円の壁とは?
- 扶養から外れるとどうなる?(社会保険編)
- 扶養から外れないためには?
- 扶養を外れて働く
そもそも扶養とは
よく「扶養に入る」と言いますが、その内容は種類によって異なります。仮に、妻が夫の扶養に入るケースを見ていきましょう。
・所得税
扶養に入ると、扶養している人の税金が軽減されます。妻の所得が48万円以下の場合、配偶者控除として38万円が夫の課税所得から控除されます。これは38万円分に対して本来かかる税金がかからなくなるという意味で、38万円がまるごともらえるわけではありません。夫の所得税が10%であれば、3万8,000円が節税できるということです。
・住民税
こちらも所得税と同様、扶養している人の税金が軽減されます。住民税の配偶者控除は33万円分で、住民税を10%とすると、3万3,000円が節税できます。
・国民年金
夫がサラリーマン(国民年金第2号被保険者)だと、妻は国民年金第3号被保険者となり、国民年金保険料を納めなくてよくなります。ただし、夫が自営業者など第1号被保険者の場合には扶養の制度がないため、妻の分も国民年金保険料を納めます。
・健康保険
サラリーマンの被扶養者として認定されると、妻は健康保険料を納めなくても保険給付が受けられます。ただし、夫が国民健康保険に入っている場合は、扶養の制度がないため、妻の分も国民健康保険料を納めます。
・会社の扶養手当
職場によっては、独自の扶養手当制度があります。扶養している配偶者や子どもや親の人数に応じて、毎月の給与に手当が上乗せされます。基準や金額は職場によって異なります。
所得税の控除の種類
サラリーマンは年末が近付くと会社から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するよう求められます。この書類は所得税の扶養控除を受けるために提出する書類です。
扶養に関する主な控除は次の3種類です。
・扶養控除
配偶者以外の扶養親族がいる場合に受けられる控除。扶養親族は16歳以上、6親等内の血族及び3親等内の姻族で、一年間の合計所得が48万円以下という条件があります。
・配偶者控除
一年間の合計所得が48万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除。ただし、控除を受ける納税者当人の合計所得金額が1,000万円を上回る場合には受けられません。
・配偶者特別控除
一年間の合計所得が48万円超133万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除。こちらも控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には受けられません。
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扶養に関する所得の計算方法
扶養控除も配偶者控除も、所得48万円以下がポイントとなります。所得は収入-経費-各種控除となるので、48万円稼いだら即アウトというわけではありません。
・給与収入は103万円がライン
給与収入には最低55万円の給与所得控除があります。よく聞かれる103万円の壁というのは、この55万円を考慮したあとの収入です。たとえば給与収入が103万円ぴったりだとしたら、所得は103万円-55万円=48万円。つまり、扶養控除や配偶者控除が受けられるギリギリの年収になるのです。
年収の区切りは、その年の1月1日から12月31日に支払われた給与の合計です。2つ以上の職場で働いている場合は、すべて合算したうえで、給与所得控除をします。
・年金収入には公的年金等控除がある
一方、年金収入にも給与所得控除のような控除があります。公的年金以外の所得が1,000万円未満の人であれば、65歳未満は最低60万円、65歳以上は最低110万円の公的年金等控除が受けられます。
・年金とパート収入が両方ある場合は?
年金とパート収入が両方ある場合は、それぞれの収入に対して所得控除を行ってから合計します。
70歳の親を扶養親族にしているケースで、親のパート収入が60万円、年金収入が120万円、ほかの収入が0円と仮定しましょう。
パート収入60万円-給与所得控除55万円=5万円
年金収入120万円-公的年金等控除110万円=10万円
合計所得は5万円+10万円で15万円となり、48万円以下なので扶養控除が受けられます。
その年の12月31日時点の年齢が70歳以上の人は老人扶養親族になります。同居している親であれば58万円、同居していない場合は48万円の扶養控除が受けられます。
扶養から外れるとどうなる?(税金編)
扶養から外れると、具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。例として、60歳未満の夫婦で、専業主婦だった妻が働きに出るケースを見ていきます。夫の所得は1,000万円以下、妻の収入は給与のみと仮定します。
・妻の年収が100万円を超えたら(100万円の壁)
妻自身が住民税を支払う必要があります。住民税は所得に応じてかかる所得割と、一律の均等割があります。自治体によって多少の違いがありますが、所得割は課税所得に対して10%、均等割は5,000円程度です。
・妻の年収が103万円を超えたら(103万円の壁)
妻自身が所得税を支払う必要があります。所得税+復興特別所得税の最低税率は5.105%です。
これより先は夫が受けていた配偶者控除が配偶者特別控除になりますが、妻の年収150万円までは配偶者控除と同様の所得控除が受けられます。
【妻の税金はいくらかかる?】
仮に年収120万円で、控除は給与所得控除と基礎控除のみを考慮して税金を計算すると
所得税 (120万円-55万円-48万円)×5.105%=8,678円
住民税 (120万円-55万円-43万円)×10%+5,000円=2万7,000円
となり、合計 3万5,678円の税負担となります。
・妻の年収が150万円を超えたら(150万円の壁)
この年収までは、夫が配偶者控除・配偶者特別控除で所得税38万円、住民税33万円の所得控除が受けられます。これ以降は配偶者特別控除が段階的に減額され、減税額も減っていきます。
・妻の年収が201万円を超えたら(201万円の壁)
夫が受けられる配偶者特別控除がなくなり、所得税・住民税の計算において完全に扶養を抜けることになります。
社会保険の130万円の壁とは?
103万円の壁と並んで有名なのが130万円の壁です。こちらは社会保険の扶養に入れるかどうかの目安です。
協会けんぽでは、下記のように定めています。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
参照元:全国健康保険協会|被扶養者とは?
ただし、年収が130万円を超えなくても、以下の条件を満たす場合には社会保険に入らなければなりません。
・勤務先の被保険者が常時500人を超える
・週の所定労働時間が20時間以上
・雇用期間が1年以上見込まれる
・賃金の月額が8.8万円以上(年収では約106万円)
・学生ではない
2022年10月からは「500人を超える」が「100人を超える」になり、加入者が拡大する予定です。
扶養から外れるとどうなる?(社会保険編)
社会保険の扶養を外れたときの変化を見ていきましょう。
・妻の年収が106万円を超えたら(106万円の壁)
妻の就労状況が条件を満たすと、社会保険に入ることになります。
・妻の年収が130万円を超えたら(130万円の壁)
夫の社会保険に入れなくなるため、妻自身で社会保険に入らなくてはなりません。
ただし、年収130万円の判定は健康保険組合によって異なります。「給与が1ヶ月でも11万円を超えるとアウト」という団体もあれば「一時的に130万円を超えても、今後130万円を超える見込みがなければ扶養のままでOK」という団体もあるので、夫の会社の健康保険担当に相談するとよいでしょう。
【妻の社会保険料はいくらかかる?】
社会保険料は毎月の給与をもとに算出される標準報酬月額によって決まります。社会保険料率は地域や団体によってまちまちなので、はっきり示せるものではありません。
だいたいの目安としては、健康保険料は5%、厚生年金は9%で、給与のおよそ14%が天引きされます。40歳以上は健康保険料に介護保険料が上乗せされるため、およそ15%です。
たとえば年収140万円で、社会保険料が14%として計算すると、およそ19万6,000円が天引きされます。そのため、年収120万円で社会保険料を払っていない人と手取り額が同じぐらいになります。「年収130万円を超えたら150万円を目指さないと損」と言われるのはこのためです。
扶養から外れないためには?
採用されるときに扶養内で働きたいと伝え、それに応じた勤務体系にしてもらうことが大切でしょう。ただし、ここまで説明してきたように、扶養の範囲はさまざまです。税金を全く払いたくないのであれば100万円の壁、社会保険に入りたくないのであれば130万円の壁というように、自分が超えたくない年収をきちんと職場に伝えるようにしましょう。
年の途中で転職するときや、複数の仕事を掛け持ちするときには特に注意が必要です。税金も社会保険も、あとから扶養の範囲を超えていたことが発覚するとペナルティを受ける可能性があります。不安な点やわからない点は、早めに相談するのが大事です。
扶養を外れて働く
思い切って扶養を外れて働くのもひとつの方法です。年収100万円~130万円なら、所得税と住民税を支払うだけなのでそこまで負担は大きくありません。130万円を超えると社会保険料負担が大きくなりますが、健康保険加入者向けの充実した健康診断が受けられることもありますし、将来の年金額も増えます。
何より、扶養範囲内で探すよりも、幅広い職種や業種が見つかります。やってみたい仕事があれば、扶養を外れてチャレンジするのもよいでしょう。
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このテーマに関する気になるポイント!
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扶養とは?
扶養家族がいる人は、配偶者控除や扶養控除が受けられるので、税金が安くなります。また、サラリーマンの配偶者が扶養に入ると、社会保険料を納める必要がありません。
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年金とパート収入があっても扶養のままでいられる?
年金収入には公的年金等控除、給与収入には給与所得控除が適用されるので、一定額までなら扶養の範囲内に収まります。
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扶養を外れるとどうなる?
扶養している人の税金が増え、扶養されていた人も税金を払うことになります。年収が一定額を超えると、社会保険に入る必要も出てきます。
※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。
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38万円分がまるごともらえるって勘違いしていたわ!でもそんなオイシイ話じゃなかったのね…