社会保険の料率の計算方法はどうする?改定内容と計算方法を知ろう
「健康保険料」、「厚生年金保険料」、「雇用保険料」など、毎月給料から天引きされる社会保険料。この金額はどのようにして決められているのでしょうか?この記事では、社会保険料の料率と計算方法、改定時期について説明するとともに、2018年10月から加わった算出方法にも触れていきます。社会保険料の仕組みを知って、保険料が上がったり下がったりする理由やタイミングを理解しましょう。
もくじ
・社会保険の料率の推移
・社会保険料の計算方法
・毎月の社会保険料の改定時期とは
・賞与をもらう場合の社会保険の料率
・2018年10月からの社会保険料算出方法の改定について
社会保険の料率の推移
社会保険には主に、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料といった種類があります。保険料の算出はそれぞれ所定の料率をかけて行う仕組みです。料率は年々変化しているため、まずはその推移から見てみましょう。
・健康保険料
健康保険料の料率は、各健康保険組合によって異なります。ここでは、独自の健康保険組合を持たない会社が加入する「協会けんぽ」での推移を見ていきます。また、40歳になると加入の義務が生じる介護保険料についても確認していきましょう。
健康保険料率は2012年度に10.0%(全国平均)になってからは変更がありません。一方の介護保険料率は、2018年度が1.57%、2016年度が1.58%、2014年度が1.72%、2012年度が1.55%と細かく推移していますが、必ずしも上昇しているわけではありません。
・厚生年金保険料
厚生年金保険料の料率は着実に上がってはいるものの、2017年9月に18.3%となった後は固定される予定となっています。ちなみに、2016年は18.182%、2014年は17.474%、2012年は16.766%でした。
なお、健康保険料と厚生年金保険料は、どちらも事業主と社員が折半して負担する仕組みです。そのため実際に社員が負担する金額は、上記の料率によって求められる金額の半額となります。
・雇用保険料
雇用保険料率についてはそれほど大きな推移はありません。2018年度の一般の事業に従事する労働者の雇用保険料率は0.3%(労働者負担分)、2016年度は0.4%、2014年度と2012年度は0.5%、2010年度は0.6%となっています。
社会保険料の計算方法
上記で説明した料率は、なにと照らし合わせて計算されるのでしょうか。
まず、健康保険料と厚生年金保険料は、「標準報酬月額」というものに基づいて計算されます。標準報酬月額とは簡単にいうと給与の基準値です。一度決定した基準値は1年間固定で適用します。そのため、健康保険料と厚生年金保険料は毎月の給与の変動によって金額が変わるということはありません。一方、雇用保険料は、給与の支給額に料率をかけて求めるため、給与額に応じて保険料も変わります。
毎月の社会保険料の改定時期とは
健康保険料や厚生年金保険料を計算するときの基礎となる「標準報酬月額」は毎年1回、9月に変更されるルールです。これを定時決定と呼びます。
定時決定では、4月、5月、6月の支給額の平均を基にして標準報酬月額を決定します。この間に賞与が発生した場合は賞与の金額は除いて計算し、交通費は支給月にかかわらずひと月分を算出して加算する流れです。標準報酬月額が決まったら、9月分の社会保険料から適用していきます。
しかし、これでは標準報酬月額と実際の給与に大きな開きが出てしまうこともあるでしょう。そこで、「随時改定」という制度が用意されています。随時改定を用いるのは、固定的な賃金(基本給や毎月支払われる手当、通勤手当などのこと)の変動があり、変動後3ヶ月の給与の平均とそれまでの標準報酬月額に2等級以上の差があった場合です。ただし、固定給が上がっているにもかかわらず変動賃金が下がったために2等級以上標準報酬月額が下がるという場合や、逆に固定給が下がったのに等級が上がる場合は、随時改定の対象とはなりません。
随時改定が行われた場合は、変動後4ヶ月目の社会保険料から改定が反映されます。4月に固定給が上がって随時改定を行った場合は、7月分の社会保険料から変更になるということです。
賞与をもらう場合の社会保険の料率
賞与にかかる雇用保険料の計算方法は毎月の給与と同じです。一方、健康保険料と厚生年金保険料については以下の方法で求めます。
まず、賞与額の1,000円未満を切り捨てます。これが「標準賞与額」です(上限は健康保険が年間累計573万円、厚生年金が1ヶ月あたり150万円)。これに、健康保険料率や厚生年金保険料率をかけることで保険料を算出できます。
2018年10月からの社会保険料算出方法の改定について
社会保険料を計算する際の基礎となる「標準月額報酬」は、定時決定と随時改定によって決まりますが、2018年10月から、「年間平均」を用いた見直しが随時改定でも行えるようになりました(定時決定では2011年からすでに利用可)。これによって、より標準報酬月額と実際の給与額から想定される社会保険料のギャップの減少が期待できます。
ただし、これはあくまでも「利用できる」という制度です。利用するためには、固定的賃金の増加や減少が毎年発生している、随時改定の標準月額報酬と年間平均額から算出した標準月額報酬に2等級以上の差があるなどの、細かい要件を満たす必要があります。また、別途申立書や社員の同意書などの添付も必要です。改定されたとはいえ、保険料の算出を行う会社側がどう判断するかがポイントになってくるでしょう。
社会保険料は会社勤めの人の場合、毎月の給与から天引きされるため金額の変化に気づきにくいものです。しかし今回紹介したとおり保険料はさまざまなタイミングで変わる可能性があります。一度、給与明細をチェックしてみるとよいかもしれません。
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