新興国通貨「ブラジルレアル」のこれまでと今後の見通しとは?
世界2位の新型コロナウィルス感染者数となっているブラジル。経済対策をしても財源不足の懸念からますます投資家が離れてしまう悪循環にあります。ブラジルの現状とブラジルレアルの現状と今後の見通しについて解説しています。
ブラジルレアルはどんな通貨?
ブラジルレアルはブラジルで使用されている通貨の単位。通貨単位はR$です。レアルの補助単位(米ドルでいうセントに該当するもの)はセンターボといいます。日本円に換算すると1レアルで19.38円(2021年3月25日現在)。対円為替レートはリーマンショック以降、小さな上下動をしながら下がり続けている状況です。
ブラジル経済の特徴
ブラジルの産業構造を見ると、一次産品の輸出が多いこと、また原料や部品を輸入して国内で組み立てた製品を輸出していることが輸出入の品目からわかります。
また輸出入の相手国を見ると、中国とアメリカの比率が少し高いのを除けば、特定の国に強く依存してはいません。
ただし、全く影響がないわけではないので、ブラジルに輸出している国、輸入している国に名前が出ている国の経済情勢は注視しておく必要があります。
【ブラジルの輸出品目】
【ブラジルの輸入品目】
【輸出相手国】
【輸入相手国】
参照元:外務省 ブラジル基礎データ
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ブラジルレアルと新型コロナウイルス
新型コロナウイルスの感染者数が、アメリカに次いで世界2位の感染者数となっているブラジル。経済においてもその影響ははかり知れません。ブラジルは2021年の1月4日に発表された製造業景況感が2カ月連続で低下となったことに加え、新型コロナウイルスの変異種が確認されて、さらなる行動規制強化が懸念されレアルは売られる形になります。
その後、ブラジル大統領であるボルソナロ大統領が、低所得者層向けに現金給付の再開を発表すると、財源不足の懸念からさらにレアル安が進行します。3月1日には軽油や調理用ガスの一部の税金を引き下げる発表をしたことも財源不足の不安を加速させました。
ブラジルでは2021年に入ってもコロナウイルスの猛威が収まっていません。毎日数万人が新たに感染し、コロナウイルスによる死者の数が4,000人弱となった日もあります。このような新型コロナウイルス感染者数の発表と政策発表をきっかけにブラジルレアルの為替レートが上下しているという状況です。
ブラジルレアルの今後の見通し
新型コロナウイルスの感染者数の増加スピードが早いだけでなく、感染力が高い変異種の存在も確認されているので、ブラジルは当面経済活動を抑制せざるを得ないため、レアル安に向かいやすい状況です。ブラジル政府が現金給付政策に踏み切っても、財源不足の不安からますますレアルが売られてしまうという状況にあります。
目先レアル高になる可能性があるのは、ブラジルの主力である原料や鉄鉱石の価格が維持され、かつ需要が堅調である場合です。
しかし、現在のブラジルは政策というよりも、早急のワクチン開発と接種の拡大のみが有効な手段と言えるかも知れません。
先進国の金利動向には要注意
一部の投資家では既に懸念の声も出ていますが、アメリカやEUといった先進国の長期金利が新興国の通貨に大きな影響を与えるということを知っておきましょう。
ブラジルは新興国に含まれます。ブラジルのような新興国の通貨は、世界情勢で大きな変化があった時に、値動きが大きいため投資をするにはリスクの高い通貨に分類されます。リスクの高い通貨は金利が高いため、そこに旨味を感じて投資家は新興国の通貨を購入するのです。
長期金利が上昇してくると、まず株式相場にブレーキがかかり、市場全体にリスクオフ(リスクを避ける)ムードが漂って、新興国の通貨から逃避をする傾向が見られます。
また、もう1つ、先進国の金利が上昇すると、値動きがあまり大きくなく利回りも大きい先進国の通貨があるのだから、わざわざリスクの高い新興国の通貨は持つ必要がないという投資家心理が働きます。
これらの理由から、先進国の長期金利上昇は、新興国通貨の下落につながってしまうのです。アメリカFRBや欧州中央銀行は当面、金融緩和を続ける方針ですが、長期金利が上昇しないとは限りません。
今後のブラジルの回復は、ワクチン開発と接種の拡大。そして長期金利の上昇が抑えられるのかどうかにかかっていると言えるでしょう。
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