生涯独身の人は増えている|未婚率の推移、結婚の意識変化と将来の備えについて解説

リリース日:2022/06/06 更新日:2024/09/19

マネープランについて考える時、結婚するか独身でいるかの選択は、大きな違いを生み出します。教育資金・住宅資金・老後資金など、さまざまな面でメリット・デメリットがあるため、お金の面からもよく考えなければならない問題といえるでしょう。国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2021)」や、内閣府の「平成30年版 少子化社会対策白書」の推計を見るとわかるように、ここ最近の傾向としては、生涯独身でいる人が増えています。理由としては、お金だけでなく、結婚に対する意識の変化が関係しているようです。未婚率のデータを見ながら、独身の場合のマネープランについて解説していきます。

  1. 生涯独身は増えている?
  2. 近年の未婚率の推移
  3. 生涯独身のメリット
  4. 生涯独身のデメリット
  5. 結婚の価値観の変化

生涯独身は増えている?

生涯独身は増えている?

結婚をするかしないか。これはライフプラン、マネープランに大きな影響を与える選択です。収入と支出の見積もり方も違ってくるでしょうし、必要な保険にも違いが出てきます。また結婚するタイミングも重要です。結婚し子どもがいる場合、教育資金が必要となる時期が、老後資金を準備したい時期と大きく重なってくることもあります。このようにさまざまなライフプランが存在する中で、今回注目するのは、生涯独身というケース。まずは生涯独身という人についての、データをチェックしてみましょう。

 

政府の人口に関する統計においては、「生涯未婚率(しょうがいみこんりつ)」や「50歳時未婚率」という言葉が使われています。定義は、「45~49歳での未婚率と、50~54歳での未婚率の平均値」です。50歳の時点で未婚の場合、それ以降に結婚するケースは少ないと考えられることから、「50歳時未婚率」が生涯独身でいる人の割合を示す統計上の数字として使われています。近年、その数字は増加傾向にあるようです。

 

国立社会保障・人口問題研究所の「人口統計資料集(2021)」を見ると、1920年から2015年までの、「50歳時の未婚割合」の推移が国勢調査の数字をもとに算出されています。例えば女性の場合、1920年には、その割合は1.80%でした。その数字が1970年には3.33%とやや上昇し、2000年には5.82%となっています。その後2005年に7.25%、2010年に10.61%、2015年に14.06%となっていて増加傾向にあることが分かります。ちなみに、男性の数字も見てみると、2015年の数字は23.37%となっており、女性の場合と同様に増加傾向が見られます。

 

内閣府の「平成30年版 少子化社会対策白書」の推計によれば、2030年時点の50歳時の未婚割合は、男性28.0%・女性18.5%、2040年には男性29.5%・女性18.7%となっています。男性は30%近くまで伸びる一方で、女性は18%台で緩やかな上昇になると見られているようです。結婚するかしないかは、個人的な人生の選択となっている一方、少子化とのかかわりも深く、社会的な関心事となっています。

近年の未婚率の推移

近年の未婚率の推移

生涯未婚率・50歳時未婚率も気になりますが、これからのライフプランを考えるうえでは、それ以外の年代での未婚率も気になるところ。近年の推移とともに、もう少し詳しく見ていきましょう。令和2年版の『厚生労働白書』には、「年齢階級別未婚率の推移」がグラフで掲載されています。こちらも総務省統計局の「国勢調査」をもとにしたものです。20歳から54歳までの男女を、5歳ごとに区切って未婚率の推移をグラフ化しています。

まずは20歳〜24歳の女性の場合を見てみましょう。1980年の未婚率は80%を下回っていました。そこからやや上昇し、1990年には86.0%になっています。2015年は91.4%という数字でした。20歳〜24歳の女性の未婚率は、1980年から2015年にかけて、少しずつ上昇しているのが分かります。ここ40年間においては、20歳〜24歳では未婚の状態が大多数ということには、それほど変わりはないようです。

 

一方、大きな上昇カーブとなっているのが、25歳〜29歳の女性。未婚率は1980年には20%台半ばでした。それが1990年には40.4%まで上昇。2015年には61.3%まで増えています。1980年には25歳〜29歳の女性だと、結婚しているケースが大多数でした。それが2015年には、未婚の方が多数派になるという逆転が起こっているのです。ただし2015年の統計で年代別に比較してみると、20歳〜24歳の未婚率が91.4%で、25歳〜29歳では61.3%まで下がることから、20代後半で結婚する女性の数が少なくないことも分かります

 

30歳〜34歳の女性の未婚率も、1980年から2015年の間に、大きく上昇しました。しかし、これより高い年代の未婚率の上昇は緩やかになっています。生涯未婚率が増えながら、「晩婚化」も進んでいる様子が見て取れます。2015年の数字で、30歳〜34歳の女性の未婚率は34.6%、35歳〜39歳では23.9%、40歳〜44歳では19.3%、45歳〜49歳では16.1%、50歳〜54歳では12.0%となっています。




生涯独身のメリット

生涯独身のメリット

結婚するか生涯独身でいるかでは、お金に関しても大きな違いができます。メリットになることもあれば、デメリットになることもあります。まずは生涯独身でいる場合の、お金に関するメリットを考えてみましょう。独身で子どもがいない場合だと、支出不要なのが、子どもの教育費。塾や大学の授業料、1人暮らしの場合の仕送りといった負担がありません。また自分以外の家族の生活費も、負担しなくて済みます。光熱費などの支出も少なくなるでしょう。

 

保険について考えると生涯独身であれば、万が一の場合に必要な保障が小さくなります。生命保険の必要保障額は、子どもが成人するまでの家族の生活費や教育費などであると考えた場合、独身で生命保険に加入するのであれば、家族がいる場合と比較して、少額の保障で十分ということになります。支払う保険料が少なくなるため、こちらも家計にとってはメリットといえるでしょう。このように家族のための支出が減る分、自分で使えるお金が増えるというのが、有利に感じられるポイントとなりそうです。

 

国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年)の独身者調査では、どんなことに「独身生活の利点」を感じるかを調べています。男女ともに多かったのが「行動や生き方が自由」というもの。家族の都合に縛られないという点が重要になっているようです。その他には「広い友人関係を保ちやすい」、「家族扶養の責任がなく気楽」、「金銭的に裕福」が比較的多くなっています。自由な行動や生き方が高く評価されているようです。

生涯独身のデメリット

生涯独身のデメリット

生涯独身のデメリットは、頼れる家族がいないことがあげられるでしょう。まず収入に関しては、共働きによる収入増を期待できないという点が、デメリットとなる可能性があります。最近では、パートナーの年収水準が高くても夫婦ともに正社員として働く、「パワーカップル」が注目されることがあります。ともに年収が700万円以上で、世帯収入が1,500万円を超えるケースも見られます。生涯独身の場合、副業などにより自分自身で収入を増やしていくことも検討する必要が生じるかもしれません。

 

特に働けなくなったときのリスクについては、より対応の必要性が高くなります。配偶者など家族の収入がないため、いざという時の貯蓄を多めにしておいたり、就業不能保険へ加入したりといった対策をしておくのもよいでしょう。老後に関しては、介護が必要となるリスクへの備えを、より手厚くしておかなければなりません。家族以外の第三者に頼ることになる可能性も高くなるため、そのための費用も事前に見積もっておきたいところです

 

国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」(2015年)独身者調査では、「結婚することの利点」についても調べています。男女ともに1位だったのは「子どもや家族をもてる」でした。生涯独身では、子どもや家族がいない場合もあるため、収入やリスク対策の面でデメリットが大きくなるといえるでしょう。男性に比べて女性で特に多かったのは、「経済的に余裕がもてる」。男性で5.9%だったのに対し、女性では20.4%となっています。生涯独身だと、パートナーの収入に頼ることができないというデメリットを考慮しなければならないようです。

結婚の価値観の変化

結婚の価値観の変化

データから生涯独身でいる人の割合、つまり生涯未婚率は増加傾向にあることが分かりました。女性の場合、2000年の5.82%が2015年には14.06%まで上昇しています。背景にはさまざまな要因があるでしょう。個人が持つ「結婚に対する価値観」の変化も、そのひとつと思われます。生涯未婚率増加の背景にある、意識の変化を見てみましょう。

 

国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」では、16歳〜34歳の未婚者で、「いずれ結婚するつもり」と考えている人に対し、「結婚の時期に対する考え方」を聞いています。これによると男女ともに現れた傾向として、「理想の相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない」と回答する人が増えていることが分かります。逆に減っているのは「ある程度の年齢までには結婚するつもり」です。

この結果から分かるのは、結婚が「個人的な理由」にもとづいて、するかしないか決めるものになりつつあるということです。これまで男女は「何歳までに結婚すべき」という社会的な規範が重視されていました。実際にはこの2つの価値観の間で悩むことが多いでしょう。しかし近年は、年齢を考えると結婚した方がよい、という社会的な視点での考えよりも、理想の相手が見つかっていないなど結婚に踏み切る理由がないため焦って結婚はしない、という個人的な視点での考えを重視する人が増え、それに伴い生涯独身でいる人が増えるようになったと考えられます。メリット・デメリットを考えた場合にも、独身に傾きやすい環境があるのかもしれません。

 

ライフプランで大きな選択となる結婚。結婚せず独身でいる場合、子どもの教育費などは不要である可能性があり、若いうちは余裕のある生活ができるかもしれません。しかしさらに先のことを考えると、親や自分自身の介護、住宅の問題などの心配が待ち構えています。独身の場合こそ、より余裕のある老後資金の準備が必要といえるかもしれません。老後資金の準備として長期的な積立投資を始める場合は、若いうちから始めておくのが有利。楽天証券に口座を開設し、NISAやiDeCoなど非課税制度を利用しながら、お金の準備を進めていきましょう。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 生涯独身は増えている?

    45〜49歳での未婚率と、50〜54歳での未婚率の平均値で表される「生涯未婚率」の割合は増加傾向です。

  • 近年の未婚率の推移は?

    25歳〜34歳の未婚率が増え、晩婚化が進んでいるのが分かります。

  • 生涯独身のメリットは?

    子どもの教育費などの支出が減るほか、行動や生き方に自由があることなどです。

  • 生涯独身のデメリットは?

    共働きによる収入増が見込めないほか、働けなくなるリスクや介護リスクで家族に頼れないことなどです。

  • 結婚の価値観の変化は?

    結婚すべきという社会規範が薄れ、個人的な理由により結婚するかどうかの判断を行うようになりつつあります。

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。なお、本コンテンツは、弊社が信頼する著者が作成したものですが、情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問等には一切お答えいたしかねます。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。




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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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