自筆証書遺言書の失敗事例を解説!書かない方が良かった遺言書とは?
自筆証書遺言書とは、法律で定められた方法に基づいて自筆で作成する遺言書です。今回は遺言書が無効になったり相続人間での争いを招いてしまう事が無いように自筆証書遺言書の作成における注意点や失敗事例を解説していきます。
- 遺言書の失敗例(ケース1)
- 1.こうしておけばよかった 日付編
- 2.こうしておけばよかった 訂正方法編
- 3.こうしておけばよかった その他
- 4.こうしておけばよかった 予備的遺言編
- 5.こうしておけばよかった 付言事項編
- まとめ
遺言書の失敗例(ケース1)
財形年金制度とは?
財形貯蓄制度のひとつで、60歳以降に5年以上の年金として受け取るものです。満55歳未満の人が契約することができ、元本550万円まで(保険は385万円まで)の利息が非課税になります。
財形年金のメリットは?
給与天引きで自動的に積立ができるので、意識せずにお金を貯めることができます。勤務先から給付金や奨励金が受け取れることもあります。
財形年金のデメリットは?
自筆証書遺言書の作成方法は民法で決められています。
遺言書作成の書籍もたくさん出版され、身近になったとはいえ、1つの間違いが遺言書全体を無効としてしまうことがあります。
まずは、次の遺言書例をご覧頂いて、何が問題なのかを確認していきましょう。
遺言者 田中太郎
家族 田中花子(妻)
田中一郎(長男)
田中二郎(次男)
財産 自宅不動産(土地・建物)
預貯金5,000万円
遺言書
1. 自宅の家屋敷は妻に一任する
2. 預貯金は妻に3,000万円を渡し、残りは一郎に与える。
/\
4,000
令和3年11月吉日
東京都港区の自宅にて
田中太郎 印
1.こうしておけばよかった 日付編
自筆証書遺言書には日付を記載する必要があり、その日付とは暦上の特定の日を表示する必要があります。
したがって、「令和3年11月吉日」は特定の日を表示していないとして、無効とする判決があります。(東京地裁平成6年6月28日)
また、次のような記載方法も無用な混乱を生じさせる可能性があるため、避けるべきです。
「令和3年正月」
「令和3年11月末日」(30日として認めた判例がありますが避けたほうが良いでしょう。)
2.こうしておけばよかった 訂正方法編
自筆証書遺言書の記載に誤りがあった時は、法律で定められた方法で訂正をする必要があります。
「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」
上記の通り訂正しなかった部分については、訂正は無効とされます。
したがって、遺言書2の「3,000」→「4,000」の訂正は無かったこととなります。
正しい訂正方法は次のとおりです。
遺言書
1. 自宅の家屋敷は妻に一任する
2. 預貯金は妻に3,000 印 万円を渡し、残りは一郎に与える。
/\
4,000 印
3行目4字削除4字加入
田中太郎
3.こうしておけばよかった その他
(1)住所
住所の記載は必須ではないため、このような記載でも無効にはなりませんが、遺言者を特定するためにも正確な住所を記載しておくことをおすすめします。
(2)「一任する」という表現
「一任する」とは、相続事務手続をまかせる意図とも解釈することができます。
曖昧な表現は相続人間での争いのもととなる事もあるため、明確に記載する必要があります。
なお、「与える」という意味を含まない表現は認められないという判決があります。
認められない可能性のある例 ・任せる・お願いする
一番好ましい表現方法は次のとおりです。
・相続人に対しては「相続させる。」
・相続人以外の第3者に対しては「遺贈する。」
(3)遺留分の考慮
上記遺言書では次男が相続する財産がありません。
次男は法定相続分の半分である8分の1については、遺留分として他の相続人へ請求することが可能です。
ただし、遺留分は本人が請求しない限り、支払義務はありません。
相続人間で争いが生じる恐れがあるため、遺留分を考慮した記載をすることも大切です。
(4)その他の財産への言及
上記遺言書に記載されていない財産は、原則通り法定相続によるか、遺産分割協議を行う必要があります。
形見分けで争いがおこる可能性もあるので、次のような記載をすることも考えられます。
3. 上記以外の相続財産は全て妻が相続する。
4.こうしておけばよかった 予備的遺言編
上記遺言書を作成した後に、長男の一郎が急死してしまった場合、一郎がもらえるはずだった財産については、特別の事情が無い限り失効することになります。
この場合は、妻、次男、長男の子の全員で遺産分割協議をする必要があります。
一郎に子供(遺言者の孫)がいた場合、遺言者太郎は次のように予備的遺言をしておくことで、一郎が相続するはずの財産を孫が取得することが可能です。
※遺言者が健在であれば遺言書を再作成することで対応できますが、遺言者本人がその時点で認知症や病気で遺言書の作成が不可能となっている場合も想定して、遺言書を作成することも重要です。
例)
4. 長男一郎が私の死亡以前に死亡していたときは、一郎に相続させるとした相続財産は一郎の子等に均等の割合で相続させる。
5.こうしておけばよかった 付言事項編
遺言書には付言事項を記載することが可能です。
付言事項は、法的な効力はありませんが大切な人へのメッセージや、遺言の趣旨を記載することが一般的です。
上記遺言書で次男の相続分がない理由等を記載することで、相続人に理解を求める方法もあります。
例)
次男の二郎に対して相続させる財産が無い理由は、生前に二郎の自宅の建築費用として既に2,000万円を贈与しているためである。
遺言者の遺志をどうか尊重して、兄弟仲良く高齢の母親を大事にしていくことを願っている。
まとめ
自筆証書遺言書は、紙とペンがあればいつでも作成することができる、一番簡単な遺言書です。
ただし、作成方法を間違えてしまうと、遺言書の効力が無効となったり、争いが生じることになったりする場合もあります。
残された人達が、無ければよかったと思ってしまう事の無いよう作成することが大事です。
このテーマに関する気になるポイント!
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遺言書の必要記載事項は
本文、日付、氏名、押印です。
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日付を記載する注意点は?
暦上特定できる記載とします。吉日は無効です。
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訂正方法は?
その場所を指示し変更した旨を付記して署名し、かつ、その変更場所に押印が必要です。
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不適切な訂正方法の効力は?
その訂正箇所については効力を生じないが、明らかな誤字の訂正はこれをもって遺言が無効とされることはありません。
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遺言書の記載方法で注意すべき点は?
曖昧な表現を避け、相続人には「相続させる。」、相続人以外には「遺贈する。」と記載することが好ましいです。
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特定の日を記載しなかったり、 変更箇所に印を押さなかったり、曖昧な表現だと遺言書が無効になる可能性があるのね!遺言書を作成するときは気を付けないとならない事が多いわね!