退職金の相場は?その他、退職金を受け取る場合の注意点等を確認しましょう
退職金とは、法律上要請される制度ではなく、会社が自由に制度設計ができるものです。そのため、退職金について事前に確認しておかないと、退職時に大きな損をすることもあります。退職金の相場を参考に、会社の退職金制度がどのようになっているのか、弁護士の宮崎先生に解説してもらいます。
「退職金」とは
そもそも退職金とは何でしょうか。退職金は、給与とは異なり、法律で定められた制度ではありません。法律上は、労働基準法第89条に、退職金制度を設ける場合には、適用される労働者の範囲と、退職手当の決定、計算及び支払いの方法、退職手当の支払いの時期に関して、就業規則に記載して行政官庁に届けなさいと規定されているだけです。したがって、就業規則で退職金について何も定めなければ、会社は退職金を支払わなくても法律上は何ら問題がありません。
また、私が担当した事件で、懲戒解雇になった人が、会社から退職金を支給しないと通告され、実際に退職金が支給されなかったことがありました。就業規則に、「懲戒解雇になった場合は、退職金を支給しない」等と明示されていれば、懲戒解雇が適法である限り、退職金の不支給も適法となる可能性が高いので、注意が必要です。なお、給与は、退職金と異なり、懲戒解雇になったことを理由として支給しないことは、法律上認められません。
「退職金」と「退職共済金」の違いとは?
退職金と非常に似ていますが、性質が異なるものとして、「退職共済金」があります。
退職共済金の場合は、会社が共済に入り、会社が掛け金を共済に支払い、最終的に共済制度を通じて、従業員に退職共済金が直接支払われます。あくまで、退職金のように、会社の就業規則等を根拠とするものではありませんので、懲戒解雇になったからと言って、退職共済金を会社が不支給にすることはできません。
大企業及び中小企業の平均退職金額(男性)
参照元:厚生労働省賃金事情等総合調査 (令和元年)」 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」
※大企業は資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上の会社を指す。
退職金の相場は?
大企業と中小企業の定年時の退職金の相場について、大学卒と高校卒とに分けて記載したデータです。大企業については、上述のとおり、かなりの規模の会社に限定されておりますので、非常に金額が高くなっています。これだけを見ても大企業に勤めたいと思う方は多いのではないでしょうか。
退職事由別の平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上)
参照元:厚生労働省「就労条件総合調査結果の概要」(平成30年)
今度は、退職事由別の退職金の相場を見てみましょう。退職事由によって大きく退職金の金額が変わることに驚かれた方も多いと思います。会社都合退職とは、経営破たんや業績悪化に伴う人員整理により、一方的に労働契約を解除される場合を言います。自己都合退職とは、転居・結婚・介護・病気療養のための退職はもちろん、自分が望む仕事内容・待遇などを求めて転職する場合も、自己都合退職となります。前向きな転職を考えておられる方も、この表を見ると転職に足踏みをされるかもしれません。
勤続年数・学歴によるモデル退職金(自己都合退職の場合)
参照元:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」
自社の退職金制度について、注意しておきたいのが、退職金が支給される最低就業年数です。一般的には、3年から5年以上勤務しないと、退職金が支給されないことになっている会社が多いです。また、勤続年数が短いと退職金も比例して少なくなってしまうことが上の表から分かると思います。
退職金を受け取る際の注意点
退職金は、税法上、退職所得と呼ばれます。
定年退職の場合の退職金だけではなく、転職の場合や、解雇予告手当を受け取った場合も退職所得に分類されます。退職所得が発生した場合は、「退職所得の受給に関する申告書」を所轄の税務署に提出する必要が有ります。退職所得の受給に関する申告書を提出することで、確定申告を行わなくても所得税率を通常よりも低い税率で計算してくれます。退職所得の受給に関する申告書を提出していない場合、一律で20.42%の所得税率が源泉徴収されることになってしまいますので、注意が必要です。もっとも未提出の場合でも、確定申告をすることで、所得税率を低く計算することができます。
退職所得の受給に関する申告書は、国税庁のホームページからダウンロードが可能ですので、退職金の支給を受ける前に、退職所得の受給に関する申告書を準備しておいて下さい。
まとめ:自社の退職金制度を確認しましょう
自社の退職金制度について、ぜひ事前に確認しましょう。
退職金がどのような基準で算定がされるのか、何年以上勤務したら退職金が支給されるのか、自己都合退職の場合どれくらい退職金が減額されるのかなど,全てのことは就業規則や退職金規程に規定されています。
会社は、法律上、就業規則や退職金規程を従業員に周知する義務があるので、これらは簡単に確認できるはずです。
FAQ
- 「退職金」とは
会社が就業規則に記載して行政官庁に届けている個別の制度。給与とは異なり法律で定められた制度ではない - 「退職共済金」とは?
会社が共済に入って掛け金を支払い、最終的に共済制度を通じて、従業員に退職共済金が直接支払われる制度で、会社の就業規則等を根拠とするものではない - 退職金を受け取る際の注意点
「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、確定申告を行わなくても所得税率を通常よりも低い税率で計算される(国税庁のホームページからダウンロードが可能)
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