ニュースでよく聞く原油先物価格とは。原油価格は上昇してきている?

リリース日:2020/12/21 更新日:2020/12/21

経済ニュースによく出てくるWTI原油先物価格という言葉。よく聞くけれど難しくてそのまま聞き流していませんか?WTIとは何か、先物価格とは何かをわかりやすく説明します。原油価格の今後の展望についても解説しています。

ニュースでよく聞く原油先物価格とは。原油価格は上昇してきている?
  1. WTI原油先物価格とは?
  2. 原油価格はコロナ禍でどのくらい下落した?
  3. 世界の原油生産量は?
  4. 今後の原油価格の見通しは?

WTI原油先物価格とは?

WTI原油先物価格とは?

WTI原油は「West Texas Intermediate」の略で、アメリカ南部にあるテキサス州とニューメキシコ州の沿岸地帯で産出される原油の総称です。この地域で産出された原油は硫黄分が少なくガソリンが多く取り出せる高品質な原油という特徴があります。

 

では、WTI原油先物価格とはどのような価格のことをいうのでしょうか?「原油価格の特徴」と「先物取引」に分けて解説します。

 

・原油価格の特徴
原油価格は、世の中の経済情勢やさまざまな環境によって日々価格が変化するため、原料として取り扱う企業にとっては大変厄介な商品です。例えば、今すぐは必要ないけれど、1カ月後に原油がたくさん欲しいという企業があったとします。しかし、1カ月後に原油価格がいくらになっているか全く予想がつかない状況では、企業は原材料費がいくらかかるか見通しが立たなくなってしまうでしょう。

 

・先物取引とは
そこで企業は、原油のような価格変動が頻繁に起こる商品は、前もって売買価格や数量、取引日の約束をしておきます。そして、実際の取引日時点で原油価格がいくらになっていたとしても、当初取り決めた売買価格、数量で売買することで価格変動リスクを抑える売買方法をとることがあります。

 

このようにあらかじめ売買価格などを決めておく取引が「先物取引」です。一方、その時の価格で売買する、私たちに馴染みのある売買のことを「現物取引」といいます。

 

WTI原油は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されており、ここで将来受け渡しする原油の取引価格が決まります。このWTI原油先物市場は、取引量も市場参加者も多い、流動性が高い市場です。そのため、WTI原油先物価格は原油価格の代表的な指標であるだけでなく、原油の消費量を左右する景気の指標でもあると見なされています。

原油価格はコロナ禍でどのくらい下落した?

原油価格はコロナ禍でどのくらい下落した?

世界的なコロナウイルスの感染拡大によって、経済活動が停滞しました。航空業界の減便や運送業の縮小により原油需要が減少し、原油価格の下落が始まりました。

 

2019年末時点で1バレル(※1)60ドル前後で推移していたWTI原油先物価格は、2019年12月に中国で新型コロナウイルスの感染者が確認され、2020年2月中旬から3月にかけて世界的な感染が拡大したことから、急降下します。2020年4月末には1バレル10ドル台の水準にまで低下しました(※2)。

 

その後、アメリカ各地の外出禁止令が解除となってから、1バレル40ドル台まで回復します。しかし、感染再拡大懸念からドイツとフランスが経済活動の制限を発表すると、再度34ドル台まで下落するなど、各国の経済政策や新型ワクチンの報道に右往左往する状況が継続している状況です。

 

(※1)WTI原油先物価格は1バレルという単位を使います。1バレルは約159リットルです。
(※2)2020/4/20に終値マイナス約37ドルという価格を付けましたが、短期的な取引が要因なため含んでいません。

世界の原油生産量は?

原油生産量が世界で最も多い国はどこだと思いますか?サウジアラビアやクウェートといった中東の国をあげる人も多いかもしれません。

 

しかし、グローバルノートの「2019年世界の原油(石油)生産量国別ランキング」によると、意外にも1位はアメリカです。2位がロシア、3位サウジアラビア、4位カナダ、5位イラクと続きます。

 

中東は原油生産量1位、2位の国こそありませんが、原油生産量上位に多くの国が名を連ねています。中東情勢は、原油価格に大きな影響があるということは知っておきましょう。

今後の原油価格の見通しは?

今後の原油価格の見通しは?

世界銀行の発表によると、原油消費は緩やかに回復し、2020年の年間平均の原油価格は1バレル41ドルに、2021年は44ドル程度になるものと見込んでいます。ただし、2023年まで世界的な感染以前の水準(2019年60ドル前後)には達しないと予想しています。

 

各国が新型コロナウイルスの感染拡大を抑えながら経済活動を再開できれば、原油の需要も再度高まるでしょう。また、各国間の往来が再び活発になれば、旅行者が増え、航空業界の燃料需要が拡大し、WTI原油先物価格の上振れも十分期待できます。しかしコロナウイルスの感染がさらに拡大するようであれば、感染防止対策のために経済活動が縮小し、原油需要が減少するかもしれません。その場合、原油価格は下落するでしょう。

 

原油価格の今後は、当面新型コロナウイルスの感染状況に左右されるでしょう。再びロックダウンをする国が増えれば、経済への影響は無視できなくなります。景気回復に直結した原油先物価格も動くでしょう。また、ワクチン開発・実用化のニュースは景気の見通しと原油価格に大きな影響を与えるでしょう。日々のWTI原油先物価格は、楽天証券のマーケット情報で確認することができます。楽天証券海外先物取引も投資商品として取り扱っています。

金子賢司
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
金子賢司

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

東証一部上場企業で10年間サラリーマンを務める中、業務中の交通事故をきっかけに企業の福利厚生に興味を持ち、社会保障の勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務める。趣味はジャザサイズ。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

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