社会保険の扶養の条件とは?被扶養者の範囲や収入要件をわかりやすく解説

リリース日:2018/12/11 更新日:2024/10/09

社会保険には「扶養」という制度があります。扶養に入ると、年金保険料や健康保険料を支払わなくてもその制度を利用できるというメリットがありますが、そのためには一定の条件をクリアしなければなりません。被扶養者になるための条件や注意点についてまとめました。

  1. 社会保険の扶養になることで得られるメリット
  2. 社会保険の扶養条件とは?
  3. 社会保険の被扶養者の範囲
  4. 社会保険の収入要件
  5. 社会保険の「130万円の壁」

社会保険の扶養になることで得られるメリット

社会保険の扶養になることで得られるメリット

まずは、社会保険の扶養になるメリットを整理しましょう。社会保険の被保険者(会社員など社会保険に加入している人)の被扶養者には、主に以下のようなメリットがあります。

 

・国民年金保険料を支払わなくてよい(配偶者のみ)

それまで自分で国民年金保険料を支払っていた人の場合、その保険料を支払わなくてよくなります。厚生年金の扶養になると「第3号被保険者」というものに該当し、第2号被保険者である会社員や公務員などの配偶者が保険料を負担しているという扱いになるからです。これによって第2号被保険者の保険料が増加することはありません。ただし、この対象となるのは配偶者のみで、子どもや親は対象外です。

 

・国民健康保険料を支払わなくてよい

被扶養者となったすべての人が得られるメリットです。これも、国民年金保険料と同様に、保険料が増加することはありません。

 

・会社の健康保険組合が用意している独自制度を利用できる

健康保険組合は、それぞれの組合ごとに健康診断料金の補助制度や高額な治療を行った際の付加給付制度などが用意されている場合があります。被扶養者になることで、これらの制度を規定に応じて利用できる点もメリットです。

社会保険の扶養条件とは?

メリットを理解していただいたところで、社会保険の被扶養者になるための条件を確認していきます。

 

まず前提として、扶養に入るためには、社会保険に加入している人の被扶養者でなければいけません。被扶養者とは、「社会保険に加入している人(被保険者)の収入によって生計を維持していると認められる人」のことをいいます。

 

社会保険に加入している人とは、健康保険組合や厚生年金に加入している会社員や公務員などのことです。自営業者の中にも同じ業種の人が集まって作っている健康保険組合に加入している人もいます。このような場合は健康保険についてのみ被扶養者となることが可能です。




社会保険の被扶養者の範囲

社会保険の被扶養者の範囲

社会保険の被扶養者になれる人には一定の範囲があります。いくら生計を維持しているからといって、他人の社会保険の被扶養者になることはできません。被扶養者になれるのは以下の人たちです。

社会保険の被扶養者の範囲図

・配偶者(事実婚を含む)
・実の親、実の祖父母、実の曽祖父母
・子ども
・兄弟姉妹
・孫

 

以上の人たちは、主に被保険者によって生計が維持されていれば、同居・別居を問わず被扶養者になることができます。つまり、別居している親や子どもであっても、仕送りの事実などが認められれば被扶養者とすることができるということです。

 

 

一方、以下の人たちについては、被保険者によって主に生計を維持されていると認められる場合に加えて、同居していることで被扶養者と認められます。

 

・配偶者の親、祖父母、曽祖父母
・配偶者の兄弟姉妹
・本人や配偶者の甥姪
・配偶者の子、孫
・本人や配偶者のひ孫
・本人の子・孫・ひ孫の配偶者
・本人の兄弟姉妹・甥姪の配偶者
・本人や配偶者のおじおば
・本人のおじおばの配偶者

 

なお、後期高齢者に該当する方は、上記の条件に該当しても被扶養者になることはできません。

社会保険の収入要件

社会保険の被扶養者になるためには、「生計を維持されている」という条件があります。これを満たすための条件としてよく知られているのが、収入が「130万円未満(被扶養者が60歳以上または障害年金をうけとれる障がい者の場合は180万円未満)」であるということです。しかし、実際にはそれ以外の条件もあります。

 

同居している場合の条件として、被扶養者の年収が被保険者の2分の1未満ということがあげられます。ただし、これを超えた場合でも被扶養者の年収が被保険者の年収を上回らず、世帯の生計を維持しているのが被保険者だと認められる場合は扶養に入れる場合があります。

 

一方、別居している場合は、被扶養者の収入が被保険者の仕送り額を下回らなければいけません。つまり、パートで10万円稼いで5万円の仕送りを受けている別居の親は、社会保険の被扶養者になることができないのです。

社会保険の「130万円の壁」

社会保険の「130万円の壁」

前述のとおり、社会保険の被扶養者になるためには、被扶養者の年収が130万円未満でなければいけません。よく耳にする「扶養から外れる」「扶養内で働きたい」などの言葉は、この130万円が基準になっています。これはすでに現役を退いている親や、学業の合間にアルバイトをしている子どもなどについては特に問題のない数字かもしれません。しかし、共働きとして家計を支える配偶者にとっては無視できない条件です。

 

たとえば、時給1,000円で週3日、1日5時間のパートと、時給1,100円で週2日、1日6時間のパートを掛け持ちしている妻の場合のひと月の給料は、おおよそ11万2,800円です。年収は11万2,800円×12ヶ月=135万3,600円となり、社会保険の扶養を外れる金額となります。

 

こうなると、自分自身で国民年金や国民健康保険に加入しなければならなくなり、保険料の負担が発生します。国民年金保険料だけでも月額1万6,340円(平成30年度)の支払いが必要です。あと少し収入を減らして、被扶養者で居続けるほうが収入面でのメリットが大きくなります。

 

 

社会保険の被扶養者に該当する人は、働き方に注意する必要があるでしょう。

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平林恵子
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー
平林恵子

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

人事労務関係の仕事からライターへ転身。経験を活かしてコラム執筆を行っています。2017年、見識を深めるためにFPの資格を取得しました。税金や給与計算などに詳しくない方にもわかりやすい解説を心がけています。

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