自社株買いとは?その意味とメリット・デメリットをわかりやすく解説

リリース日:2021/08/20 更新日:2024/07/26

自社株買いとは、企業が自ら発行した株を買い戻すことです。自社株買いは、配当とならぶ株主への還元で、株価の上昇要因にもなるものです。株式投資を始めようとする方にとっては、重要な情報と言えるでしょう。ここでは自社株買いが、企業や株主にとってどんな意味を持つのか詳しく解説していきます。

  1. 自社株買いとは?
  2. なぜ自社株を買うのか
  3. 自社株買いされた会社の株主への恩恵

自社株買いとは?

自社株買いとは?

自社株買いというのは、企業が自ら発行した株式を、自らの資金で買い戻すことです。株式会社は、事業をおこなうのに必要な資金を得るために株式を発行します。企業が発行した株式は、市場などで投資家がお金を出して買うことになります。自社株買いは、これとは反対の動き。企業がお金を出して、自社の株を買うのです。手元にはもともと自らが発行した株式が戻ることになります。理由は後から述べますが、自社株買いは配当金とならぶ、株主還元のひとつです。

 

自社株買いで買い戻した株はどうなるのでしょうか。2つのケースがあります。ひとつは「金庫株」となるケース。企業が取得した株式は、そのまま保有し続けます。もうひとつは「消却」するケース。企業は買い戻した株を、取締役会の決議によって消滅させることが可能です。保有しつづける金庫株と違い、発行済株式総数を減少させることになります。企業が自社株買いを発表すると、株価は大きく動く傾向があります。

なぜ自社株を買うのか

なぜ自社株を買うのか

企業が株式を発行するのは、事業に必要な資金を集めるためです。しかし自社株買いはその逆。そこにはどんなメリットがあるのでしょうか。そのひとつには、敵対的な買収への対策があります。ある企業の株を多く保有すれば、その企業の経営に大きな影響を与えることが可能になります。自社株を買えば、敵対する企業に買われる株を少なくすることができるのです。また自社株買いは、基本的に株価の上昇要因。株価が上がれば、買い集めるための資金もより多く必要となるので敵対的買収への対抗策になります。

なぜ自社株を買うのか メリット・デメリット 

 

また配当を出している企業の場合、自社株を買えば、市場に出回る株式の数が減少し、配当として支払う金額を減らすことができます。たとえば配当の対象となる株式が1,000万株あるとしましょう。1株に対して100円配当すると、10億円が必要となります。100万株を自社株買いすると、これが900万株まで減ります。配当に必要な資金も9億円となり、1回の配当で1億円節約できることになるのです。企業が保有する資金の使い道を考えるとき、設備投資などとならんで自社株買いがひとつの選択肢となります。

 

自社株買いにはデメリットもあります。企業が自社株を取得する際には、必要な現金を用意しなければなりません。手持ちの現金が減ることで、経営上の資金繰りに支障をきたす可能性があります。メリットがあると言っても、過大な資金を使うことはできません。敵対的買収に対応するための自社株買いであっても、資金的な限界があります。




自社株買いされた会社の株主への恩恵

自社株買いされた会社の株主への恩恵

自社株買いは、配当金と同じく株主への還元となります。株主にとって配当金は恩恵がわかりやすい還元です。自社株買いはどうして株主還元となるのでしょうか。株の価値を測る指標には、EPSやPERといったものがあります。EPSはEarnings Per Shareの略で、1株当たりの利益を指します。これは企業の当期利益を、発行株式数で割ったもの。自社株買いにより発行株式数が減れば、EPSつまり1株当たりの利益が増えるのです。株主が保有する株の価値が上がるということになります。

 

市場での株価が割安かどうか判断するための指標がPERです。Price Earnings Ratioの略で、株価収益率のことです。これは「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算されます。つまり株価がEPSの何倍まで買われているかを示しています。PERの値が高いと買われすぎ、低いと安過ぎと判断されるのです。たとえば1株当たり利益が100円で、株価が1,000円だと、PERは10倍と計算できます。

 

自社株買いは1株当たりの利益を高くします。1株当たりの利益が120円まで上がるとPERは約8.3倍。割安と判断され、以前と同じPER10倍まで買われるなら、株価は1,200円まで上がります。こうした株価の上昇も、自社株買いによる株主への還元と言えるでしょう。

 

もうひとつの株主還元となる、配当についても触れておきましょう。配当は、企業が得た利益の一部を、株主に対して支払うものです。サービスや物など、株主優待という形になることもあります。この配当を受け取るためには、「権利確定日」にその株を保有していなければなりません。配当や株主優待を狙っているときには、必ず確認しておかなくてはならない重要な日付です。権利確定日の翌日は「権利落ち日」と呼ばれています。

 

楽天証券に口座を開設すると、楽天の株を買って、株主優待を受け取ることができます。楽天の株式コードは4755。権利確定日は12月末です。100株以上保有していると、「楽天キャッシュ」500円相当が付与されます。同時に2,000円相当の「楽天トラベル」国内宿泊クーポンも受け取れます(どちらも会員登録が必要)。5年以上の長期保有では、楽天キャッシュがさらに500円分増えてお得です。株主還元となる自社株買いや、配当・株主優待の情報をチェックすると、買ってみたくなる株がたくさん見つかるかもしれません。

このテーマに関する気になるポイント!

  • 自社株買いとは?

    企業が自ら発行した株を買い戻すことです。

  • 自社株買いをするとどうなる?

    株価が大きく動く傾向があります。

  • 金庫株とは?

    企業が取得した株式をそのまま保有し続けることです。

  • 消却とは?

    企業は買い戻した株を、取締役会の決議によって消滅させることです。

  • 自社株買いのメリットとは?

    企業にとっては敵対的な買収への対策、配当の減少。株主にとっては株価の上昇要因となり、EPSも増加します。

  • 自社株買いのデメリットとは?

    企業の資金繰り悪化に繋がる可能性があります。

本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。なお、本コンテンツは、弊社が信頼する著者が作成したものですが、情報の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問等には一切お答えいたしかねます。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。あらかじめご了承ください。




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黒川ヤスヒト
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(AFP)
黒川ヤスヒト

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

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