インフレとは?デフレとの違いや資産を守るための対策も分かりやすく解説

リリース日:2022/07/15 更新日:2023/09/07
黒川ヤスヒト
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証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

近頃、生活のなかで意識されるようになってきたのが「物価の上昇」です。これはインフレーション(インフレ)と呼ばれる現象で、身近なところでは食品やガソリン、電力など財(モノ)やサービスの値上がりを指します。モの値段が上がるのと同時に収入も増えてくれればよいのですが、現状は必ずしもそうはなっていないため心配されています。ここではインフレの基礎知識を解説し、どのような対策が可能かを見ていきましょう。

  1. インフレとは?
  2. よいインフレと悪いインフレ
  3. 日本もインフレ時代に突入、対策は?

インフレとは?

インフレとは?

 

・インフレってどんな現象?
インフレとは、ある一定の期間において物価が持続的に上昇する現象を指しています。物価の上昇とは、財やサービスの価格が全体的に上がっていくことです。英語の「inflation(インフレーション)」を略した言葉ですが、日本語では物価上昇と呼ぶこともあります。

 

インフレは普段の生活のなかでも感じることができます。例えば、毎日のお買い物で「食品の値段が全体的に上がった気がする」「電車の運賃が上がった」といったことが、実感することのできるインフレといえるでしょう。

 

日本では総務省が発表する「消費者物価指数」などで、物価の状況を知ることができます。2022年(令和4年)2月分の全国消費者物価指数を見ると、総合では前年同月比で0.9%の上昇となっています。1年間で0.9%のインフレ、物価上昇が起こったということです。ただし「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」で見ると、前年同月比で−1.0%の下落となっています。全体的には0.9%のインフレが起こっていますが、主にエネルギー価格などの上昇によるものであることが分かるでしょう。

 

・物価の安定とハイパーインフレ
物価を安定させることは、日本銀行の責務です。日本銀行は「消費者物価の前年比上昇率2%」を物価安定の目標として掲げ、金融政策を実施しています。財やサービスの値段が急激に変化しないほうが、人々は安心してお金を貯めたり使ったりすることができるのです。これに対し、短い期間に、物価が急激な上昇を起こす現象は「ハイパーインフレ」と呼ばれています。経済活動に混乱を引き起こす、好ましくない現象です。

 

ハイパーインフレの定義としては、経済学者のフィリップ・D・ケーガンによる「インフレ率が毎月50%を超えること」がよく知られています。また国際会計基準ではハイパーインフレを「3年間で累積100%以上の物価上昇」と定義しています。

 

インフレ率が月50%というのは、先月100円だったパンが今月150円になっているということです。また3年間で累積100%の物価上昇であれば、3年前に200万円だった自動車が今年は400万円、ということになります。家計管理が難しくなり、大きなお買い物の予定も立てづらくなるでしょう。

 

近年、実際にハイパーインフレが起こった国のひとつがジンバブエです。2008年には、100兆ジンバブエ・ドル紙幣が発行されるほどの、想像がつかないようなインフレが起こりました。

 

・デフレとは?インフレとどちらがいいの?
インフレとは逆に、財やサービスの価格が全体的に下がっていくのが「デフレ」で、英語の「deflation(デフレーション)」を略した言葉です。先述した通り、2022年(令和4年)2月分の消費者物価指数「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」は前年同月比で−1.0%となっていますが、こうしたマイナス基調の状態が続いた場合は「デフレ」の状況と呼べるでしょう。2022年1月に日銀が公表した「経済・物価情勢の展望」では「消費者物価(除く生鮮食品)」について、振れをともないつつ1%程度の上昇率が続くと予測しています。

 

上がったり下がったりする物価ですが、経済にとっては継続的に上昇するインフレがよいのか、継続的に下落していくデフレがよいのかという問題があります。日本銀行が物価安定の目標として「消費者物価の前年比上昇率2%」を掲げていることから、緩やかなインフレが望ましいということは想像できます。では、どうして緩やかなインフレが望ましいのでしょうか。

 

デフレでは物価が下がっていきます。財やサービスの値段が下がり続けると、企業業績は悪化し、残業が減り失業が増えます。このように収入の低下や買い控えが起こることで財やサービスの売り上げが減り、さらに物価が下がるという悪循環が起こるのです。これでは経済が縮小していきます。

 

インフレでは、物価の上昇により販売価格も上がることから企業業績が改善します。これにともなって賃金が上昇すると、さらに売り上げが増え、景気拡大につながるという状況になるのです。値段が上がる前に買っておきたいという意識も働くでしょう。

 

ただし賃金の上昇をともなわないインフレもあり、必ずしもインフレが好景気をもたらすというわけではありません。またインフレでも、ハイパーインフレのような急激な物価上昇は、経済に混乱をきたします。経済にとって望ましいのは、賃金の上昇をともないながら、ゆっくりとしたペースでインフレが進む状況といえるでしょう。

 

・インフレ抑制のための政策
緩やかなペースでのインフレと比べ、物価が下がるデフレや急激な物価上昇は、経済に与える悪影響が大きいと考えられています。物価の安定に関わっているのが日本銀行です。公開市場操作(オペレーション)などの金融政策を実施し、市場金利を調節することで物価の安定を図っています

 

インフレの抑制、つまり物価を下げる方向へ誘導するには金利を上げます。金利を上げると、銀行などの金融機関では、資金の調達コストが上昇します。そうすると銀行の貸出金利も上昇し、個人や企業はお金を借りるのが、難しくなります。使えるお金が少なくなると、経済活動が抑制され、物価に対しては下落圧力がかかるというわけです。

 

金利を上げるために行うのは、日銀による「資金吸収オペレーション」です。日本銀行が振り出す手形の売り出しや、国債の買戻条件付売却などを通して、金融市場から資金を吸収します。インフレを抑制し景気の過熱をおさえるのは、金融引き締め政策と呼ばれています。

 

ただ2022年4月時点で、日銀が実施していたのは金利の上昇をおさえるためのオペレーションで、これは金融緩和により物価を上げる方向の政策です。「指値オペ」と呼ばれる措置により、0.25%の利回りで国債を無制限に買い入れ、長期金利の上昇をおさえるというものです。日本の金利を低くおさえることは、日米の金利差を大きくし、最近注目されている円安の要因にもなっています。

よいインフレと悪いインフレ

よいインフレと悪いインフレ

緩やかなインフレが経済にとっては望ましいのですが、そのインフレにも「よいインフレ」と「悪いインフレ」があります。その違いを確認しておきましょう。インフレでは物価が上昇するのですが、同時に賃金も上昇すればさらなる需要を生み出し、好循環が発生します。これが「よいインフレ」です。逆に物価が上昇しても、賃金の上昇がそれに追いつかないのが「悪いインフレ」。物価が上昇しても、需要は減退して景気は悪くなるのです。

 

またインフレはその要因により「デマンドプル型」と「コストプッシュ型」に分類されます。

 

デマンドプル型は、需要が増えることにより物価が上がるタイプのインフレです。好景気でお金が多く出回ることで発生します。収入も上がれば景気に好循環をもたらします。一方のコストプッシュ型は、原材料費などコストの高騰により、企業が販売価格を上げるタイプのインフレです。コスト上昇を販売価格に転嫁できなければ、企業業績を圧迫し、賃金を上げられないかもしれません。その場合、景気の悪循環が起こるでしょう。

日本もインフレ時代に突入、対策は?

日本もインフレ時代に突入、対策は?

・日本の物価上昇のリスク
これまでの日本経済は、デフレ問題への対処がテーマとなっていました。しかし最近目につき始めたのは、ガソリンや電気料金、食料品などの値上げです。これにより、さまざまな場面で物価の上昇が意識されるようになりました。要因のひとつは資源価格の上昇にあります。ウクライナ危機をはじめとした世界情勢の悪化で、原油など資源が値上がりしています。また小麦など穀物の商品価格も上昇していて、食品の原材料費を押し上げる要因となっています。

 

もうひとつ、物価上昇の要因と考えられるのが、為替市場における円安ドル高の進行です。円安が進むと、輸入品が値上がりしやすくなります。同じ10ドルのシャツを輸入しても、1ドル100円であれば1,000円だったものが、1ドル130円まで円安が進むと1,300円になります。輸入品の値上がりが、物価上昇の要因となっている側面もあるでしょう。円安ドル高の原因となっているのは日米の金利差で、米国がインフレ対策として利上げをスタートするのに対し、日本では金融緩和政策が持続すると見られていることが要因となっています。

 

・インフレに強い資産って?
物価が上昇するインフレ時には、資産をどのように持つかで有利・不利が出てきます。インフレに弱い資産の代表が、現金です。たとえば100万円を現金で持っていたとしましょう。年2%のインフレが続くと、100万円で買えた自動車は、毎年102万円、104.4万円、…と価格が上がっていきます。一方現金は、何年たっても100万円のまま。普通預金や定期預金として預けていたとしても、年2%のインフレが続く場合、2%よりも大幅に低い利率では、資産が目減りしてしまうのです。

 

インフレに強い資産は株式や不動産などです。インフレの状況では、販売価格が上がって企業業績が上昇し、さらに需要が増えるという好循環が期待できます。物価上昇率を超えて、株価が上昇する可能性もあるでしょう。また物価が上がる際には、部屋やオフィスの賃貸料金も上がると考えられます。不動産価格にとっては、上昇要因となります。物価上昇とともに値段が上がる不動産を持っていると、資産の目減りを防げるのです。

 

インフレ対策として、資産を株式や不動産で保有したいという場合、おすすめなのが投資信託の活用です。幅広い銘柄に分散投資できるため、資産の安全性を高めることができます。不動産の場合はREITが便利。比較的少額な資金から始められ、こちらも分散投資の効果が期待できます。もし年2%のインフレ率が続くのであれば、株式や不動産の価格がそれ以上に上昇しなければ、実質的な利益は出ません。現金で持っていれば、価値は目減りします。インフレ時には、積極的な対策が必要なのです。

 

・海外資産を保有することも有効
物価上昇の要因には、円安を通じた輸入品の値上がりもあります。直接的な対策としては、ドルなどの外貨で資産を保有することが有効です。1ドル100円の時に1万ドルを購入すると、それは100万円の価値があることになります。1ドル130円まで円安が進むと、1万ドルは130万円まで値上がりすることになります。円安を原因とする、物価の値上がりに対応できるでしょう。

 

外貨ではなく、海外株式への投資も同様の効果を生みます。米国株式に投資すると、ドル建てでの株式の値上がりに加えて、円安になった分も利益になります。実際の投資では、こちらも投資信託が便利です。米国株式に広く分散投資する投資信託を購入できます。

 

ただ、今後円高になった場合は逆の効果が生まれるので注意が必要です。投資信託には、日本株と外国株を半分ずつなど、一定の割合で保有できるタイプもあります。海外資産を組み込んだ投資信託は、円安によるインフレ対策の効果が期待できるでしょう。

 

資源価格の上昇や円安により、日本でもインフレのリスクが意識されるようになっています。物価上昇の場面では資産を現金で持ち続けることは不利とされるので、インフレへの対策としては、株や不動産、外貨などを保有するのがおすすめです。楽天証券では、インフレ対策となる資産を数多く取り扱っています。国内外の株式や外貨、また不動産投資商品のREITも購入できます。これらを組み合わせた投資信託であれば、インフレ対策と同時に積立による長期的な資産形成にもなるでしょう。

このテーマに関する気になるポイント!

  • インフレとは?

    物価が継続的に上昇する現象です。幅広い財やサービスの価格が上がっていきます。

  • よいインフレと悪いインフレって?

    賃金上昇をともなって需要が増え、景気の好循環を生み出すのが「よいインフレ」。賃金上昇をともなわず、需要が減ってしまうのが「悪いインフレ」です。

  • 日本もインフレ時代に突入、対策は?

    物価が上昇する局面では、資産を現金のままで保有すると、価値が目減りしていきます。資産を株式や不動産で保有することが、インフレへの対策となります。

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