ジンバブエドルとは?壮絶なインフレで廃止された通貨の歴史を分かりやすく解説!

リリース日:2021/10/20 更新日:2023/08/30
黒川ヤスヒト
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ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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証券会社でリテール営業を経験し、AFP資格を取得。現在ライターとして、パーソナルファイナンスに関する情報の発信を手がけています。 関心分野は、ライフプランに関する意識調査や最新の金融商品・サービスなど。

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

ジンバブエドルは、2000年代に激しいハイパーインフレを起こした通貨。現在は廃止されていますが、100兆ジンバブエドル紙幣が発行され注目されました。ここでは通貨が廃止されるまでの歴史と、現在の状況を解説しています。

  1. ジンバブエドルとは
  2. ジンバブエドルが廃止されるまで
  3. ジンバブエドル、円に換算するといくら?
  4. ジンバブエの現在

ジンバブエドルとは

ジンバブエドルとは

「このままではジンバブエドルのようになってしまう」「いやジンバブエのようにはならない」。お金や経済に関心のある方であれば、日本の物価上昇、つまりインフレに関してこのような議論を耳にしたことのある方もいらっしゃるかと思います。日本でつづいている異次元の金融緩和が、どのような結果をもたらすかを心配する議論です。

 

急激なインフレ、ハイパーインフレを象徴する言葉として「ジンバブエ」や「ジンバブエドル」が使われているのです。まずこの2つの言葉について、基本的な情報を整理しておきましょう。

 

・ジンバブエとは
ジンバブエの正式な名称は、ジンバブエ共和国。アフリカ大陸の南部に位置しています。隣接する国は、南アフリカ共和国・ザンビア・ボツワナ・モザンビーク。国土の面積は日本より少しだけ大きく、38.6万平方キロメートルです。2019年における人口は1,465万人で、ショナ族・ンデベレ族・白人といった民族で構成されています。経済の規模を示すGNI(国民総所得)は2019年で、204億米ドル(約2兆2,000億円)。おもな輸出品は、貴金属・タバコ・鉱石・ニッケル・鉄などとなっています。

 

近代の歴史についても振り返ってみましょう。ジンバブエは1980年に、ジンバブエ共和国として英国から独立しました。このときはムガベ首相が就任しており、1987年からはムガベ大統領となります。ムガベ大統領は6選され、2017年に事実上のクーデターが起こるまで大統領の座についていました。その後2018年には総選挙が実施され、ムナンガグワ大統領が就任し、現在に至っています。「猛烈なインフレ」と言われる状況は、2000年から2009年の間に発生しています。

 

・ジンバブエの通貨事情
ジンバブエにおける通貨の状況は、少し複雑です。現在ジンバブエの法定通貨となっているのは、2019年6月に導入された「RTGSドル」。これを新しいジンバブエドルと呼ぶこともあるようです。

 

最初のジンバブエドルは、1980年に導入されました。その後、激しいインフレにともなって、通貨の桁数を切り捨てる「デノミネーション」が数回おこなわれています。この旧ジンバブエドルは、2015年に通貨としての廃止が決定されました。公式の廃止は2015年ですが、2009年には事実上、流通が停止されています。

 

2009年1月に導入されたのは、複数外貨制。おもに米ドル、南アフリカランドが使われるようになりました。さらに2014年1月からは、日本円、中国元、豪ドル、インド・ルピーが新たに法定通貨として導入されます。2016年には、ジンバブエ国内だけで流通するボンド紙幣も導入されました。2019年にはRTGSドルを唯一の法定通貨としましたが、紙幣不足を補うため、2020年に米ドルが再導入されることになります。

参照元:外務省 ジンバブエ基礎データ

ジンバブエドルが廃止されるまで

ジンバブエドルが廃止されるまで

ジンバブエドルは、2000年頃から激しいインフレーションを起こし、ついにはハイパーインフレーションという状況になりました。最終的には2009年に流通停止となり、2015年には通貨としての廃止に至ります。インフレやハイパーインフレの意味を確認しながら、ジンバブエドルのたどった歴史をくわしくみていきましょう。

 

・インフレとハイパーインフレについて
インフレはインフレーションの略で、物価が上がることを意味します。物価が上がるということは、物の値段が上がるということです。物の価格水準を左右しているのは、通貨の供給量や物への需要、そして物の供給などです。マクロ経済を運営するにあたっては、緩やかな物価上昇、適切なインフレ水準が望ましいとされています。たとえば日本銀行は、消費者物価が前年比で2%上昇することを目標としています。日本のインフレ率は2%を下回る状況がつづいているため、通貨の供給を増やしている状況です。

 

一方ハイパーインフレは、物価上昇率が非常に高い状況、さらにその上昇率が加速していく状況です。数値による定義は様々で、「3年間で累積100%以上の物価上昇」「毎月50%を超える物価上昇」などがあります。たとえば3年で100%物価が上がるとすると、値段は2倍になります。200万円で買えた自動車が、3年後には400万円に値上がりしているということです。自動車を購入しようと思っても、計画が立てづらい状況と言えるでしょう。

 

ジンバブエで起こったハイパーインフレでは、2008年には年率220万%もの物価上昇が起こったとされています。これでは自動車どころか、毎日に必要な食料品を購入するにも混乱が生じます。近い将来における物の値段を予想することさえ、難しくなってしまうのです。

・ハイパーインフレの始まり
ジンバブエドルが最初に発行されたのは、1980年のこと。当初の交換レートは、1米ドル=0.68ジンバブエドルでした。英国から独立して以来、ジンバブエのムガベ大統領は、旧支配層に対する弾圧的な政策を実施していました。2000年には、白人が所有する土地を強制収用する法律を制定し、結果として農業の崩壊を招いています。これにより物の供給が不足することになり、ハイパーインフレの要因となりました。

 

激しい物価上昇のなか、ジンバブエ準備銀行は通貨の供給を減らしませんでした。公務員や兵士への給与を上げるため、政府が支払いに必要な通貨の発行を命じていたようです。これもインフレを加速させる要因と言えるでしょう。また弾圧的な政策がつづくことで、富裕層が海外へ脱出し、治安も悪化しました。その結果、ジンバブエドルの為替市場での価値が下がり、輸入する際の値段が上がったことも物価上昇につながっています。

 

・ジンバブエドルが廃止されるまでの流れ
ジンバブエにおけるインフレ率を、公式発表でみてみましょう。2000年が56%で、2003年には385%、2006年に1,281%を記録し、2008年には355,000%と発表されています。しかし実際にはこれよりはるかに高い数字だったようです。2008年における非公式の報告では「6月のインフレ率は1,120万%に達した」「7月のインフレ率は2億3,100万%」などとなっています。

 

こうしたハイパーインフレの状況では、物の値段が短期間に数10倍、数100倍…、と上昇します。物の価格を表示するのが、困難な状況です。これに対応するため、新しいジンバブエドルの発行と、デノミネーションが繰り返されました。デノミネーションとは、通貨単位を切り上げたり切り下げたりすることで、ジンバブエでは切り下げがおこなわれています。

 

2006年に2番目のジンバブエドルが発行されたときは、デノミネーションにより3桁の切り捨てが実施されました。2008年のデノミネーションでは、10桁が切り捨てられ、100億ジンバブエドルと新1ジンバブエドルが交換されることになりました。これが3番目のジンバブエドルになります。

 

それでもインフレは収まらず、2009年1月には100兆(100trillion)ジンバブエドル紙幣が発行されています。その直後の2009年2月に、12桁を切り捨てた4番目のジンバブエドルが発行されました。

 

2009年1月からは複数外貨制を導入し、米ドルと南アフリカランドが使用されるようになります。2009年2月に政府は、公務員給与を米ドルで支払うと発表し、ジンバブエドルの流通は事実上停止となりました。2015年にはジンバブエドルの廃止が公式に決定され、同年の9月までに回収を終えています。自国の通貨は放棄しなければなりませんでしたが、外貨を使用することでハイパーインフレは終息しました。

ジンバブエドル、円に換算するといくら?

ジンバブエドル、円に換算するといくら?

ハイパーインフレにより、驚くほど大きな数字を使って表すことになったジンバブエドル。日本円に換算するとどうなるのか計算してみましょう。物価の上昇は別の言い方をすると、通貨の価値が下がるということです。ほかの通貨と比較すると分かりやすくなります。日本円に換算することで、よりハイパーインフレを実感できると思います。

 

・既に廃止されているため、通貨としての価値はなし
激しいハイパーインフレの末、ジンバブエドルは2015年に廃止されました。現在では、通貨としての価値はありません。ジンバブエドルが登場した1980年についてみると、1.00米ドル=0.68ジンバブエドルという為替レートでした。その頃の米ドル/円は1.00米ドル220円程度。ここから計算すると、当時の1.00ジンバブエドルは約324円となります。

 

それではハイパーインフレの末期、2008年のレートで計算してみましょう。ジンバブエドルはデノミネーションを繰り返した後、3番目のジンバブエドルの時代です。為替レートは1米ドル=12兆ジンバブエドルと、かなり大きな数字になります。当時の米ドル/円は、1ドル103円ほど。計算してみると、1ジンバブエドルは約0.0000000000086円。読みにくいかもしれませんが、ジンバブエドルの価値が大きく下がったのが分かります。ハイパーインフレにおいては、通貨の価値が激減するのです。

 

・コレクターが注目!100兆ジンバブエドル

コレクターが注目!100兆ジンバブエドル

 

既に廃止され回収を終えたジンバブエドル。通貨としての価値はないのですが、コレクターアイテムとしての価値が出ています。注目したいのが「100兆ジンバブエドル紙幣」。画像をみると「ONE HUNDRED TRILLION DOLLARS」とあります。英語ではmillionが100万、billionが10億、trillionが1兆を表します。つまりこれが「100兆」という表示なのです。楽天市場で検索してみると、状態にもよりますが、様々なジンバブエドル紙幣が数千円から販売されているのをみつけられます。

ジンバブエの現在

ジンバブエの現在

2019年6月、ジンバブエ中央銀行は暫定通貨RTGSドルを唯一の法定通貨として指定しました。しかし2020年3月には、インフレによる紙幣不足への対策として米ドルも再導入しています。

 

ムガベ政権が終わった後、ムナンガグワ大統領が経済改革を進めていますが、外貨不足やロックダウンの実施などにはばまれているようです。インフレについても燃料価格の高騰などから、2019年8月にインフレ率が前年同月比300%を超えたと言われています。2020年の経済成長率もマイナスで、経済が不安定な状況はまだつづきそうです。

 

ちなみにジンバブエと言えば、ビクトリアの滝をはじめとする観光資源が多い国。観光産業によって現地の人が外貨を獲得する手段の多い国と思われます。しかしこちらも、新型コロナウイルスの影響を受けているのかもしれません。

 

急激なインフレは、物の値上がりを通して家計に負担を生じさせます。資産を目減りさせる要因にもなります。インフレへの対策となるのは、株式や不動産の購入。物価の上昇とともに、株価や不動産の価格も上昇するためです。株式や不動産への投資であれば、楽天証券の利用がおすすめです。株式であれば、市場全体に分散投資できるETFが便利。REITを活用すれば、不動産への投資も可能です。

 

また話題となったジンバブエドル、紙幣そのものに興味を持ったという方も多いと思います。楽天市場でも様々なジンバブエドルの紙幣が販売されているので、ネットショッピングで手に入れられます。実物の紙幣は、歴史的な事件を実感させてくれる貴重なアイテムとなるでしょう。

このテーマに関する気になるポイント!

  • ジンバブエドルとは?

    2000年代にハイパーインフレを引き起こして注目された通貨です。現在は廃止されています。

  • ジンバブエドルが廃止されるまでに起こったことは?

    ハイパーインフレによって、価格を表示する数字が大きくなるたびに、桁を切り下げるデノミネーションを繰り返しました。

  • ジンバブエドル、円に換算するといくら?

    1ジンバブエドルは、1980年頃には300円ほどでしたが、ハイパーインフレの末期には、約0.0000000000086円まで下がりました。

  • ジンバブエの現在の経済状況は?

    政権が代わり新通貨RTGSドルも導入されましたが、不安定な為替相場やインフレに悩まされています。

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