マネー教育は難しくない!キッズ・マネー・ステーション代表 八木陽子さんに聞く親子で始める「お金」の話

リリース日:2020/11/06 更新日:2022/06/06
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一級ファイナンシャルプランナー技能士、CFP?。キャリアカウンセラー(CDA)、キャリアコンサルタント(国家資格)。出版社勤務を経て独立後、マネー記事の執筆やプロデュース、セミナーなどの仕事を手掛ける。現在までに受けたマネー相談は延べ1,000件以上。2005年に親子でお金と仕事を学ぶ団体「キッズ・マネー・ステーション」を設立し、2008年には株式会社イー・カンパニーを設立。著書・監修本は「6歳からのお金入門」「10歳からのお金の心得」「家の購入技200」「お金のため技200」「おさいふのかみさま」など多数。新著は「マンガで覚える 図解 おこづかいの基本」
(2020年10月20日発売・つちや書店)。

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

クレジットカードやスマホ決済など、キャッシュレス決済をする場が増えるなか、親として子どもにどうお金について教えていけばいいのでしょうか。マネー教育と聞くと難しく考えてしまいがちですが、親子の日常会話から始めてもいいと八木陽子さんは言います。2005年からファイナンシャルプランナーとして親子にマネー教育講座を開いてきた八木さんに、今日から始められるマネー教育についてお話を伺いました。

更新日:2020/11/6
  1. 釣りを捨てる?! お金の価値がわからない子どもたち
  2. 公教育で足りていないマネー教育を民間の手で
  3. 「ユーチューバーになりたい」と言われたら?
  4. 金銭感覚がある子とない子の違いは?

釣りを捨てる?! お金の価値がわからない子どもたち

マネ活編集部:子どもへの「マネー教育」と聞くと、何か難しいことを教えなければならないのではないかと感じてしまいます。教えるためには、相応の知識が必要なのではないかと思うのですが…。

 

八木:そう難しく考えないでほしいです。お子さんへのマネー教育は、基本となる「お金は大切なものなんだよ」がスタート地点であり、社会のしくみを学ぶ一歩です。

 

マネ活編集部:まずはお金の価値を教えるということですか。

 

八木:はい。大人からすると信じられないかもしれませんが、子どもが「こんなのいらない」と言って川にお釣りの小銭を捨てていた話を聞いたことがあるんです。

 

マネ活編集部:にわかには信じられない話です。

 

八木:その子が特別変わっているわけではないんです。他にも、お母さんからおやつを買うためにもらったお金を毎回使い切っていたと思われていた子が、実はお釣りを捨てていたことが発覚したなんていう話もあって。その子に捨てていた理由を聞いたら、「別にいらないと思ったから」と言ったそうです。

 

マネ活編集部:衝撃的ですね。

 

八木:お金が価値のあるものだと理解できていない子が増えてきたと感じています。ただ、子どもたちが現金の価値を理解できなくなっているのは、無理のない話でもあります。子どもたちが現金を目にする機会はどんどん減っていく一方ですから。

 

昔はお給料が現金手渡しで、お父さんが持ち帰ってきた給料袋をお母さんが受け取り、日々の買いものに使われていく様子を子どもも目にしていました。それが口座振り込みになり、日々の買いものも現金払いからキャッシュレス決済へと変化した。これでは、子どもにはお金の動きが見えません。加えて、日本は子どもにお金、家計のことをあまり話したり教えたりしたがらない傾向があります。こうしたことから、お金の価値がわからない子どもが出始めてきたんだろうなと。

 

マネ活編集部:大人にとっては当たり前である「お金とは」から教える必要があるんですね。

 

八木:はい。現金で払う機会が減り、キャッシュレス決済やゲームへの課金など新しい支払いスタイルが増えているため、一部の親は子どものお金教育に危機感を抱いています。学校ではどうやら教えてもらえないようだけれど、じゃあ家庭でどう教えたらいいのかというと、親自身も教わっていないからわからない。危機感を募らせる親が増えてきたことから、マネー教育の講座や本があるなら学びたいという需要が掘り起こされてきたのだと思っています。

 

ただ、別に講座や本を必ずしも利用しなければならないわけではありません。むしろ、親子の会話のなかで日常生活におけるお金の大切さを教えていくことが一番大切だと思っています。

 

マネ活編集部:お子さんの発達度合いによっても変わってくると思いますが、目安として何歳くらいからお金について伝え始めればいいでしょうか。

 

八木:2、3歳くらいから伝えられるのではないでしょうか。スーパーに買いものに行ったときに「買って買って」とせがまれるシーンがあるのなら、そのときに「ほしいものを全部買っちゃったら夕飯のお金が足りなくなっちゃうかもしれないよ」と伝えて、「1週間に1回、1個だけにしようね」と話してみるとか。2、3歳であっても、「お金は湯水のように使えるものじゃないんだよ」ということは、なんとなくであっても伝えられると思います。また、お年玉をもらったときに「大切なお金をもらっているんだよ」と子どもに話したり、お礼状を書いたりなど、きっかけはいろいろあります。

 

マネ活編集部:そうした会話や行動なら、今すぐにでも始められそうです。

 

八木:それでいいんですよ。「お金はお父さんお母さんが働いているから手に入るもので、働いた分しかないんだよ、いくらでもあるものじゃないんだよ」と伝えてあげてほしいです。「ネットでポチっとするだけでモノが届くのではなくて、銀行口座というところにお金があって、そのお金で買ってるんだよ」のように、誰でも説明できるところからスタートすればいいと思っています。

 

八木さん主催のキッズマネーステーションの講座では、身近なお金のクイズなど楽しく学べる工夫がされている

公教育で足りていないマネー教育を民間の手で

マネ活編集部:八木さんは、なぜ子どものマネー教育に関心を持ったのですか? 元からお金に詳しかったのでしょうか。

 

八木:いえ、勤めていたころは、給与明細をすぐ捨ててしまうようなタイプでした(笑)。お金について学び始めたのは、結婚後、夫の転勤に付いて福岡に転居したあとのことです。編集者の仕事を辞めて時間を持て余していたころに、お金に関する記事を依頼されて書いたんですね。執筆のためにいろいろ調べたことで、お金について知るのは身近で大切なことだと気付かされたんです。その後、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。資格勉強を進めるなかで、子どもにとっても非常に大切な知識だと思うようになりました。また、そのころ、ファイナンシャル教育の授業を行っているオーストラリアの小学校を見学できたのもきっかけになりました。

 

子ども向けのマネー教育を始めたころは、日本にいいテキストがなく、海外のテキストを参考にしていた

 

マネ活編集部:先ほども「学校では教えてもらえない」とお話がありました。

 

八木:本当は公教育で教える必要があると思っています。ただ、現状で難しいのであれば、民間として親子に伝えられる講座や教材を作ろうと思ったのが、キッズマネーステーション立ち上げのきっかけです。2005年のことですね。

 

マネ活編集部:どのような講座内容だったのでしょうか。

 

八木:2005年当初は、「おこづかい制を始めてみましょう」などでしたね。キャッシュレス決済について取り扱い始めたのは、2012年ごろです。小児用Suicaなど、電子マネーが登場し始めた時期ですね。便利だからと子どもに持たせたら、トラブルが起きてしまったという事例が出始め、私にも電子マネー講座のリクエストが寄せられるようになりました。そうした世間のニーズを捉えたのか、それから3年後の2015年ごろには、多くのマネー教育本が出版されています。

 

マネ活編集部:電子マネー講座では、どのようなことを教えていたんですか?

 

八木:現金と同額が入った電子マネーを使った模擬買い物体験を行っていました。今でこそ普通ですが、電子マネーカードはお金だという意識がないから教えてほしいというリクエストでした。

 

マネ活編集部:今ではキャッシュレス決済の頻度がさらに増えています。子どもたちに変化はありますか?

 

八木:コロナ禍が起こってから特に感じているのは、子どもたちが認識している「お金」の変化ですね。以前のキャッシュレス決済講座では、「このカードに200円が入っているんだよ」と説明していたんです。それが、今は逆転して現金の百円玉を知らない子が出てきた。感染予防のためからか、お母さんがすべてカードで支払うようになったことが影響しているんです。

 

マネ活編集部:現金を目にする機会がないんですね。

 

八木:そうなんです。そんな親を見ているからか、お買いものごっこでもカードで買いものをしたがる子が出てきています。「うちの子は、100円玉の存在を知らないかも」と親御さんに言われたこともあるんです。お金を学ぶ市販ドリルの必要性を理解しましたね。100円玉はこの模様のものだよ、100円は50円が2個なんだよということを、学習しなければ知らない子もいる時代になったんです。

 

マネ活編集部:政府によるキャッシュレス決済の推進活動も影響しているのでしょうか。

 

八木:していると思います。ネットでは前からタップひとつで買っていたところに、店舗でもカードでピッと支払うようになった。そうなると、子どもにとってみたら「お金って何?」「100円玉ってどれ?」となるのも当たり前ですよね。新型コロナウイルス流行で、この流れが加速したと感じています。

 

楽天ペイメント主催で行われたキッズマネーステーションの親子向けのキャッシュレスマネー講座。キャッシュレスでの支払いやポイントについてオンラインで学んだ

「ユーチューバーになりたい」と言われたら?

マネ活編集部:「お金って何?」という子どもがいる一方、「子どもでも稼げる」とか「YouTuberなら好きなことをしてお金をもらえる」といった情報を得て、お金を稼ぐことに興味を抱く子どももいるのではないかと思います。親として、そうした子どもにどう接すればいいでしょうか。

 

八木:まずは、お子さんの夢を否定せず、「じゃあ、どうすればなれるんだろう」と一緒に調べたり考えたりするのはどうでしょうか。頭ごなしに否定するのでは子どもも納得できないですからね。親も前向きに考え、YouTuberがどうお金を稼いでいるのか、お金をもらえるまでに満たすべき条件は何なのかを一緒に調べてみる。調べて現実を知ると、何割かの子は「やっぱりいいや」ってなるんですよ。自分で「大変そうだ」「そこまでやりたくはないな」と納得するんですね。

 

マネ活編集部:調べた上で、それでも興味がある子に対してはどうすればいいでしょうか。

 

八木:YouTuberになるには、表現力や知識、センスなどさまざまなスキルがいりますよね。知識を得るためには学校の勉強も必要になってくる。YouTubeを見てさえいればYouTuberになれるのではないこと、YouTubeだろうと別の職業だろうと、基礎学力を身につけておくことは大切なことだとうまくつなげられるといいなと思います。

 

マネ活編集部:その他、小学生以降の子どもにできるお金の教育には、どういったものがありますか?

 

八木:小学校中学年くらいになってくると、お金に関するトラブルや失敗も出てきます。たとえば、お小遣いを全額カードに使い込んでしまったり、お友達に深く考えずに貸してしまい、返ってこなくなってしまったり。私は、親は口出しをせず、ある程度までは失敗させるほうがいいと思っています。このくらいの年齢の子どもであれば、失敗といっても500円、1,000円レベルじゃないですか。そのくらいの痛みで学べるのは、むしろありがたいくらいではないかなと。これが高校生、大学生、大人となると、数万、十万単位の失敗もありますから。

 

マネ活編集部:親としては、「そんな無駄遣いをして!」と口を挟みたくなってしまいそうです。

 

八木:わかります。でも、子どもが自分で判断して失敗し、失敗から学んでまた失敗して学んで…の繰り返しが、将来的に「お金に関するおいしい話に飛びつかない」嗅覚を養ったり、大きな失敗を避けられたりする力になると思いますよ。

 

学校での出張講座依頼も多い。小学校5年生では、家庭科の授業で「家計」について学ぶ機会がある

金銭感覚がある子とない子の違いは?

マネ活編集部:お釣りを捨ててしまう子のエピソードや、友達に簡単に貸してしまうことがあるなど、さまざまなお話がありました。一方で、お金に対する意識が高い子もいるのでしょうか。

 

八木:もちろんいます。小学校高学年ごろになってくると、金銭感覚がある子とない子の差が開いてきますね。学校にゲストティーチャーとして伺った際、子どもたちに1カ月の食費の全国平均を聞いたんです。すると、「100万円くらい」と回答した子がいました。そうかと思えば、「うちのお母さんは1回の買いもので5,000円くらい使っていて、週に2回スーパーに行っているから、1カ月5万円くらいかな」と実生活に近い数字を出してくる子もいる。家族と買いものに行ったり、お金について話す習慣があり、モノの値段の感覚が養われてきた子と、本当にお金のことに触れずに育ってきたんだなという子がいると感じています。

 

マネ活編集部:家庭の役割は大きいですね。

 

八木:そうですね。ただ、学校教育も過渡期なのかなと思います。小学5年生の家庭科には、家計について学ぶカリキュラムが含まれているんです。学校によっては、3、4年生で特別授業を設けているところもあります。2022年からは高等学校で資産形成の授業も組み込まれます。

 

マネ活編集部:八木さんが学校でお話されるとき、子どもたちからはどんな質問や意見が寄せられますか?

 

八木:「大人ってお金をいっぱい使えていいな」と思い込んでいる子はいますね。実際には、いくらでも好きに使えるわけじゃないんですが(笑)。

 

マネ活編集部:お金の使い方について話すことに抵抗感があったり、使うこと自体に無駄遣い感といいますか、ネガティブな捉え方をしてしまったりしている親もいるのかなと思います。

 

八木:私も自分のものを買うのに躊躇することがあるのでわかります。ただ、お金は循環させるものなんですよね。自分がお店で物を買うことで、お店の人にお金が入り、そのお金でお店の人がお給料をもらえ、子どもの教育費を賄って…と巡るものなんです。自分の私利私欲に使うだけではなく、世の中のためになることでもあると思いたいですね。
私が旅行先で買いたいものを目の前にして悩んでいたとき、子どもに「今しか買えないものは、今買ったほうがいいよ。お金は貯めていても数字でしかないよ」と言われたんです。私がふだん子どもに言っている言葉なのですが、このときは子どもに教えられましたね。

リモート取材画像

リモート取材を受けてくださった八木さん。マネー教育と気負わず、家庭でできることがたくさんあることを教えてくれた

 

マネ活編集部:「子どものマネーリテラシーは親次第」といった言葉にプレッシャーを感じている親もいると思います。

 

八木:親が何もかも先回りして子どもに教えなければと思う必要はありません。新しいものがどんどん出てくるので、全部先に理解するのは無理ですよ。

 

子どもに教えなければと気負いすぎず、親子で一緒に学んでいけばいいのではないでしょうか。親子講座であれば、子どもにわかるように説明してくれるので親のハードルが下がりますし。投資に興味があるなら、調べたうえで一緒に何かを買ってみてもいいかもしれませんね。

 

また、子どもが中学生にもなれば、親より子どものほうが新しいものに目ざとくなります。子どもから新しい金融サービスを教わる機会も増えていくのではないでしょうか。

 

マネ活編集部:ありがとうございます。「子どもへのマネー教育」へのハードルが下がるお話でした。最後に、親御さんへメッセージをお願いします。

 

八木:繰り返しになりますが、一番言いたいのはマネー教育を難しいものだと思わないでほしいということです。お金って何だろう、どうしたら手に入るんだろうと話すところから始めてほしい。お金の教育と聞くと、株や投資と難しいものをイメージし、富裕層だけに関係する話だと思う人もいるかもしれません。ただ、お金は生きるうえで必要なものなので、あらゆる世代、収入層の人に関係があることなんですよね。知識を得ることで、お金に関するトラブルや苦しみに陥らずに済むかもしれない。社会の中で生きていく力を付けるスタートが、身近な「お金」に関する親子間の会話だと思っています。そして、お金や社会のしくみを学ぶことで、日本の未来が明るいものになってほしいと願っています。

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