遺留分とは?受け取れる相続人や、相続割合の計算方法、時効などの注意点もわかりやすく解説

リリース日:2022/04/04 更新日:2024/09/24

遺留分とは何でしょうか。民法改正により遺留分制度も変わりました。改正内容も踏まえて具体的に説明します。

  1. 遺留分制度とは?
  2. 遺留分を受け取る権利がある相続人は?
  3. 遺留分の割合は?
  4. 遺留分が相続の問題となるケース
  5. 時効に注意
  6. 遺留分制度の主な変更点
  7. まとめ

遺留分制度とは?

遺留分制度とは?

遺留分制度とは、亡くなった方(被相続人)が有していた財産の一定割合について、一定範囲の遺族(相続人)に対し、相続する権利を保障する制度です。

 

本来、被相続人が自分で築き上げた財産をどのように処分するかは、被相続人の自由であるはず、という考え方が原則です。しかしながら、一方で、相続制度が民法上認められている以上、被相続人が築き上げた財産は、相続人の生活保障や財産形成に寄与した遺族に対する潜在的持分が認められるべきである、という考え方もあります。そこで民法は、被相続人の財産処分の自由と相続人の保護という2つの考えの調和を図る遺留分制度を制定しました

遺留分を受け取る権利がある相続人は?

遺留分を受け取る権利がある相続人は?

遺留分を受け取る権利を持つ相続人(遺留分権者)は、被相続人の配偶者、子、直系尊属(被相続人の父母とそれより上の世代の祖父母や曽祖父母などのことで、養父母も含む)です。子の代襲相続人(相続人となるはずであった人が、相続時にすでに死亡していた場合、その相続人の子のこと)にも遺留分が認められます。ここで注意が必要なのは、被相続人の兄弟姉妹(代襲者も含む)には、遺留分は認められないということです。




遺留分の割合は?

遺留分権者全体に残されるべき遺留分の割合(総体的遺留分割合)は、①相続人が直系尊属のみである場合は、被相続人の財産の3分の1、②それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1が遺留分になります。個別の遺留分権者の遺留分割合(個別的遺留分割合)は、この全体の遺留分割合に、自己の法定相続分の割合を乗じたものになります。

 

例えば、相続人が配偶者1人、子2人の場合、子1人当たりの遺留分割合は、2分の1(総体的遺留分割合)×4分の1(法定相続分)=8分の1、ということとなります。

遺留分が相続の問題となるケース

遺留分について問題となる多くのケースは、被相続人が遺言書を残していた場合です。例えば、被相続人が遺言書に「遺産の全額を特定の相続人に相続させる」という内容の遺言書を残した場合、他の相続人は自己の遺留分すら相続できず、遺留分を相続する権利が侵害されている状態となります。このような事態により発生した遺留分侵害の問題に対し、遺留分を侵害された相続人は、侵害された遺留分を請求することができます。

 

また、別の視点として、被相続人の兄弟姉妹には、遺留分は認められませんので、子と親のいない夫婦であってお互いに兄弟姉妹がいる場合には、一方の配偶者に自己の財産全額を相続させる遺言を残しておけば、死後の遺産相続で、兄弟姉妹と揉めることは法律上はありません。

時効に注意

遺留分は、遺留分制度によってその権利を持つ相続人に保障されるものですが、何もしなくても認められるものではなく、侵害された遺留分を相手方に請求する必要があります。
さらに、遺留分を侵害されたことを「知ってから1年以内」に請求を行わないと時効によって権利が消滅してしまいます。遺留分の請求を行ったことを認められるためには、内容証明郵便で請求をしておく必要があり、単に口頭や手紙などで請求しても、遺留分を請求したとは認められない場合もあります。

遺留分制度の主な変更点

改正前の民法では、遺留分の請求のことを遺留分減殺請求と呼んでいました。遺留分減殺請求を行使した場合は、遺留分侵害請求の対象が不動産であれば、遺贈を受けた者と遺留分権利者の共有状態となり、その不動産の処分や利用に大きな問題を起こすこともありました。

 

しかし、2018年7月の相続法改正により、遺留分減殺請求は、遺留侵害額請求という金銭的な請求に改められ、遺留分侵害請求の対象が不動産の場合でも、遺留分を金銭で請求することが可能となりました。これによって、不動産が意図せず共有状態になり、有効活用ができなくなるという事象が排除されました。

 

また、遺留分の算定方法についても改正されました。遺留分は、相続開始時の遺産のほかに、被相続人により贈与された財産等を一定の範囲で加算して算定します。民法改正前は、①相続開始時の財産、②相続開始前1年内の贈与、③贈与の当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与のほかに、④特別受益に該当する贈与等(相続人が、被相続人から「遺産の前渡しとして」生前に受けた贈与等のこと)を加算したものが、遺留分を算定するための財産とされていました。 

 

しかし、民法改正により、②相続開始前1年内の贈与について、相続人に対する贈与は、1年内の贈与であっても「特別受益」に該当しない贈与等(被相続人の生活、財産等に考慮し、その扶養の内と認められる贈与等)である場合、遺留分を算定するための財産に加算されなくなりました。また④特別受益に該当する贈与等(相続人が、被相続人から「遺産の前渡しとして」生前に受けた贈与等のこと)についても、相続開始より10年以上前に行われた贈与は、「特別受益」に該当する贈与等であっても遺留分を算定するための財産に加算されないことになりました。この改正により、遺留分の算定範囲が縮小されたので、遺留分権利者にとっては不利、遺留分の請求を受ける側にとっては有利な改正になりました。

遺留分についても、遺留分制度の変更についても、いろいろ理解できたわ!

まとめ

遺留分制度について十分に理解をしておかないと、いざという時に本来受け取れるはずの遺留分を受け取れないということになりかねません。時効が非常に短いので、自分の遺留分が侵害されたと知った場合、速やかに弁護士に相談するなどして、対応することをおすすめします。

このテーマに関する気になるポイント!

  1. 遺留分制度とは?    
    遺留分制度とは、亡くなった方(被相続人)が有していた財産の一定割合について、一定範囲の遺族(相続人)に対し、相続する権利を保障する制度です。

  2. 遺留分を受け取る権利がある相続人は?
    遺留分を受け取る権利を持つ相続人(遺留分権者)は、被相続人の配偶者、子(代襲相続人を含む)、直系尊属です。

  3. 遺留分の割合は?
    ①直系尊属のみが相続人である場合は、被相続人の財産の3分の1、②それ以外の場合は、被相続人の財産の2分の1が遺留分になります。これに、自己の法定相続分の割合を乗じたものが遺留分の割合になります。

  4. 遺留分が相続の問題となるケース
    被相続人が遺言書に「遺産の全額を特定の相続人に相続させる」という内容の遺言書を残した場合です。

  5. 遺留分を請求できる時効は?
    遺留分を侵害されたことを「知ってから1年以内」に請求を行わないと時効によって権利が消滅してしまいます。

  6. 民法改正による遺留分制度の主な変更点は?
    遺留分減殺請求が遺留侵害額請求という金銭的な請求に改められ、また遺留分の算定方法についても改正されました。



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宮崎大輔
この記事を書いた人
白石綜合法律事務所 弁護士
宮崎大輔

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

2013年3月、青山学院大学法科大学院修了。同年9月、司法試験合格。2014年12月、弁護士登録し、白石綜合法律事務所入所。企業の顧問を務める関係から、企業の労務問題を得意とするほか、刑事事件や債権回収事件、金融関係事件、企業合併事件など幅広い案件を手掛けている。近年は、インターネット上の誹謗中傷問題に積極的に取り組んでいる。

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