「大人への一歩」を踏み出すために仕立てた大切な着物の話(寄稿:はせおやさい)

リリース日:2022/08/16 更新日:2022/08/16
はせおやさい
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会社員兼ブロガー

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※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

ブロガーのはせおやさいさんが、クレジットカードの分割払いを利用して購入した着物の話を紹介します。20代の頃に仕立てた大切な着物は、「大人への一歩」を踏み出せた思い出の買い物だったと振り返ります。

  1. 「及第点」を目指していたわたしが出会ったもの
  2. 「似合う」を初めて経験した着物姿
  3. 初めての呉服屋で「一張羅」を探す
  4. 出会ってしまった「本当にほしいもの」
  5. 一歩を踏み出して大人になるために
  6. 「大人になるための背伸び」が今のわたしを作っている

「及第点」を目指していたわたしが出会ったもの

大きな買い物をするのが苦手だった。高価なブランド品にはあまり興味がないし、高額な海外旅行も行ったことがない。身近なブランド、安宿を回るチープな一人旅。それでも十分楽しんでいた。自分の身の丈にあった金額で、できる範囲で買えるもので満足していた20代だった。

 

そんな20代だったので、友人の結婚式にも、ファッションビルで手に入るような手頃なフォーマルドレスで参加していた。当時はまだ友人たちの手前、いつも同じドレスで参加するわけにはいかない、という自分ルールに囚われていた。

 

いま思うと変な見栄の張り合いだったのだが、それでも毎回違うドレスで参加してくる友人たちの中、同じワンピースで記念写真に収まるのは、なんとも気恥ずかしいものがあった。なので友人の結婚式のたび、同じようなファッションビルに駆け込み、及第点、と思えるフォーマル服を購入していた。

あるとき、和装の女性と同席したことがあった。年齢はかなり上だったが、ふんわりとした桃色の着物にうすいベージュの帯、小物の色合いは忘れてしまったが、小さな花が咲いているような、可憐という言葉がぴったりの出で立ちで、わたしは自分の装いを恥ずかしく思った。

 

それはその女性が本当に似合うものを知っていることがよくわかったからで、「仕方なく」フォーマルなワンピースを着ているわたしとは違うな、と感じたからだ。わたしは背が低く、なで肩でふっくらとした体型のため、洋服はあまり似合わない。すらっとした友人たちはワンピースを素敵に着こなしていたが、自分の着こなしはいつもどこか野暮ったく、もっさりとしているような感覚があった。

 

 

その日からなんとなくぼんやりと「着物、着てみようかな」という思いが芽生えるようになった。とはいえ、呉服屋と付き合いがあるのは祖父母の代まで。家にお下がりの着物はあったけれども、母は着付けが苦手だったので着る機会がなく、なんとなくぼんやりと忘れかけていた頃、近い親族の結婚式があるという。

 

友人の結婚式とは異なり、親族の式なら費用は親がかりで和装にチャレンジできるのではないか? と企んだわたしはおねだりを試みた。自宅にはお下がりの着物があったが普段着ばかりでフォーマルな席へ着ていけるものはなく、新しく仕立てるのも大変なので、レンタルなら……というところで承諾を取り付けた。

「似合う」を初めて経験した着物姿

成人式ぶりに行く着物のレンタルショップは華やかで、心が踊った。実は成人式当日、大雪で交通機関が麻痺したため、わたしはレンタルしてた振り袖を着ることができなかったのだ。そんな悔しい経験から約2年、当時の心残りもあり、久しぶりに袖を通す着物に、胸がワクワクしていた。

初めての着物は撫子色(なでしこいろ)の振り袖にした。あの日同席した女性と同じ、ピンク色系の着物が着たかったのだ。レンタル代はありがたいことに親に支払ってもらい、一緒に着付けのための美容院を予約した。

 

着付けのとき、「あなた、着物体型だからもっと着るといいわよ」と言われて驚いたし、実際、着物を着てみた自分を鏡で見ると、コンプレックスに感じていた部分は隠れ、気に入っている部分がよく見えて、全体的にすっきりとして見えた。これが「似合う」ということなんだ、と思った。

 

 

いざ着物姿で参列してみる結婚式は、とても気分がよかった。いまいちしっくり来ていないワンピースではなく、はっきりと「似合う」と思える服を着ているのは、こんなに気持ちが晴やかになるのだと思った。

 

気持ちが落ち着いているので堂々と振る舞えたし、お祝いの言葉を伝えに行った新郎新婦にも「場が華やいでとってもうれしい!」と喜んでもらえた。自分の装いが場を華やかにさせられるんだと思うと、うれしかった。

 

さらに若い世代の着物姿は珍しいせいか、年配の参列者にも話しかけてもらい、たくさんの交流が起きる、とても和やかな披露宴になった。装いでお祝いの気持ちを伝えたり、場に華を添えたりできるのだ、と初めて知った。

初めての呉服屋で「一張羅」を探す

そんな体験を経て、20代半ば、わたしは思い切って呉服屋のドアを開くこととなる。レンタルでいろいろな着物を試せるのも楽しいが、1枚くらい、自分の「一張羅」があってもいいかもしれない、と思ったのだ。

 

どこに行けばいいかわからなかったので、通勤経路にあった小さな呉服屋を選んだ。貯金の中から予算を見積もって行ったが、レンタルとどれくらい価格が違うのか、想像がつかなかったので、下見のつもりだった。

 

店内には年配のお客さんが多く、自分が浮いているような気がしたが、やはり若いお客は珍しいようで、販売員の女性がすぐに接客をしてくれた。

そこで初めていろいろなことを教えてもらった。着物の種類、「染め」と「織り」の違い、フォーマルなときの帯と小物の合わせ方、小物の色合わせ。さまざまなルールはあるけれど、そこのお店では「まず着てほしい」というスタンスらしく、予算に応じて状態のいい古着から始めても構わない、と言われ、ホッとした。

 

 

古着も扱っていたので、何枚か袖を通させてもらったが、やはり洋服のときのように体型をさほど気にする必要がない。型紙を使い曲線で仕立てる洋服と違って、直線で縫い紐で体型に合わせて着付けしていく着物は、体型にコンプレックスがあるわたしにとって、優しかった。

 

なで肩は逆に首を長くほっそり見せてくれたし、どっしりとした下半身は補正がさほど不要で、短い足も帯を高い位置で締めてしまえば、目立たなくなった。試着すればするほど自分に自信がつき、ワクワクが増していった。

 

古着なら予算内で済みそうだし、帯の合わせ方でバリエーションが組めるので、フォーマルワンピースを何枚か買ったと思えばいい。帯はお下がりがあるので、なんとかなるだろう。お祝いの席に着ていくものだから新品がいいけれど、当初の予算には限りがある。予算内におさまれば、まあ御の字だろう。

出会ってしまった「本当にほしいもの」

そう思いながら雑談をしていると、「ついでだから、反物(※)も見てみますか?」と薦められた。「一応……」という程度で出してもらった中に、一目惚れしてしまった柄があった。

 

(※)……大人の和装一着分が一枚ものになった布地

黒地に辛子色の乱れ菊が散らしてあり、薄桃色の撫子が添えてある。やや大人びていたが、「これは!」と思うと、もう止まらなかった。反物を身体に当てさせてもらい、あらためて「これが着たい!」と思った。

 

販売員の女性に相談してみると、やや渋めの柄行ではあるけれども、長く使えるし、若々しさは帯や小物で出せるので、悪くないですよ! という。

 

ここまで気分が高揚する買い物は初めてで、絶対にこの着物がほしい、と思った。この着物を10年、20年と着る自分が想像できたし、帯や小物でどうアレンジするかを考えるのは、きっと楽しい、と思えた。

 

そこで帯と小物も見立ててもらうことにした。下見のはずが、すっかり買う気になっていた。バッグと草履は母のお下がりが使えるので、思い切って長襦袢(ながじゅばん:肌着の上、着物の下に着るもの)も仕立てることにして、色も合わせてもらう。

 

そこまで来るとお店の人もノリノリになり、じゃあ八掛(はっかけ:着物の裏地)は辛子色にして、菊の色と合わせよう、長襦袢はあえて落ち着いた撫子色にして女らしさを出そう……など、一緒に考えてくれて、とても楽しい時間を過ごした。

一歩を踏み出して大人になるために

さて、ここでお会計である。初めての着物ということで、かなり割引してもらったが、それでも予算を少しはみ出している。

 

どれかを諦めて、着物だけ購入してもいい、少しずつ買い足していくのも着物の楽しみよ、との提案に迷いもしたが、思い切って着物、帯、ひとそろえを、クレジットカードで分割払いする方法を選んだ。

 

当初の予算内で買える範囲のものだけを購入する方法も、もちろんあった。が、ここで一歩を踏み出せば、なんというか、大人の仲間に入れるような気がしたのだ。いま思うと、初めての分割払いだったように思う。

 

支払いを済ませ、店を出たときには夢見心地だった。仕上がりまでの間、何度もカレンダーを確認し、早く仕立て上がりの連絡が来ないか、指折り数えたし、家にある小物を点検したり、着物雑誌を購入して色合わせを考えたりするのは、本当に楽しかった。世界が広がり、視界が輝いて見えるようだった。

 

いままで「現金で買える範囲」を重視し、そこからはみ出たほしいものを諦めていたけれど、本当にほしい! と思ったものを手に入れるために働くぞ、と思う気持ちは、なんだか本格的に大人になる第一歩を踏み出したような心持ちがした。

届いた着物を初めて着たのは、仕事であるパーティーの受付を任されたとき。指定は「スーツやドレスなどのフォーマルで」とのことだったが、少なくない外国からのゲストの顔を思い浮かべていたら、思わず「着物でもいいですか」と上司に聞いていた。

 

上司に和装を快諾してもらい、当日、黒字に辛子色の菊模様、そしてシルバーの袋帯にターコイズブルーの帯締め、とモダンな色合わせで臨んだが、本当によく褒められた。予想通り、外国のゲストからは柄や色合わせの面白さについてさまざま質問され、楽しい時間を過ごした。

 

装いで「歓迎の気持ちを示す」ということが機能するのだと知った瞬間であり、それまで「無難」を最優先していた自分では、見えない世界があった。

 

その後、少なくない引き落とし金額を見るたびやや気持ちが引き締まったが、わたしにとって「自分のために仕立てた着物」は最強の武装であり、なにより、大人になるための経験をさせてもらえる機会であったことを思うと、とてもいい決断をしたな、といまになっても思う。

「大人になるための背伸び」が今のわたしを作っている

仕立てた着物はその後、幾度となく活躍した。友人の結婚パーティーで、イベントで、お祝いの席で……と、着るたびに色合わせを変えたり、バッグや草履を変えることで何通りもの表情を見せ、そのたびに新しい発見と、自信を与えてくれた。

 

結婚し、40代を迎えたいまでも、相変わらずその名の通りの「一張羅」としてわたしのフォーマルな装いを支えてくれている。着物一枚に帯三本、の言葉のとおり、着物は帯で表情を変える。自分で仕立てた着物で、祖母や曾祖母からお下がりされてきた帯を締めるのは、とてもいい経験になった。

 

 

 

何より、自分で働いて支払いをすべて終えたときには、爽快感と達成感があった。自分からは少し遠いなあ、背伸びだなあ、と思っていたものを、思い切って手に入れることができたのだ。

 

 

もちろん安くない買い物だから、誰にでも薦めるわけではない。好みや価値観だって人それぞれあるだろう。でも、本当に自分がこれだ! と思ったとき、その瞬間の自分から見たら、少し背伸びすることになっても、思い切って踏み出すことは、決して悪いことではないと思う。

 

基本的にいまでも現金一括払いタイプではあるけれど、自分の経験を振り返ってみると、クレジットカードという選択肢を使って、「大人への一歩」を踏み出させてもらったのは、よい買い物だったのではないかと思っているし、これからも上手に付き合っていければいいな、と思っている。

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