3歳から夢中になり、プロ棋士の今でも魅了され続ける「将棋」の多面的な面白さ

リリース日:2022/07/20 更新日:2022/07/21
遠山雄亮
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日本将棋連盟のプロ棋士です。対局&将棋普及に邁進しています。ブログでは将棋にまつわる様々なことを綴っています。

※本著者は楽天カード株式会社の委託を受け、本コンテンツを作成しております。

プロ棋士・遠山雄亮さんが、3歳の頃から魅せられた将棋の魅力を紹介します。盤や駒、扇子、所作などの「文化」と、AIやディープラーニングなどを駆使する「先端技術」。その二面性が将棋の面白さだという遠山さん、将棋の多面的な面白さを解説いただきました。

  1. 近年ますます注目を集める将棋
  2. 3歳の時に将棋の本で入った「将棋の世界」
  3. 「文化」と「先端技術」── 相反する二面性が共存する面白さ
  4. 終わりの見えない将棋の面白さが私に向いていた
  5. 将棋にハマるにつれて分かる、さらに深い世界
  6. 「将棋沼」にハマって将棋を楽しんでみませんか?

はじめまして。将棋プロ棋士の遠山雄亮です。

突然ですが、皆さんは「将棋」と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?

・羽生さんや藤井くんの名前をよく聞く
・子供の頃にクラスでやってた(やってた人がいた)
・日曜の朝の定番「ピロリ~♪」
・だいぶ昔からある、文化……?
・勝つとうれしいけど負けるとメッチャ悔しい
・なんだか難しそう……
・最近ネットの動画で生放送を見かける
・プロ棋士が出前を取るのをニュースで見た

どれかひとつくらいは入っているでしょうか? 浮かんだそのイメージは、すべて合っています。どれも「将棋」の一部です。

近年ますます注目を集める将棋

羽生善治九段や藤井聡太七段は、どちらも将棋のプロ棋士で、私と同じ職業です。二人とも将棋界の枠におさまらない活躍で、“お茶の間の人気者”といってもいいでしょう。

 

藤井七段はまだ高校1年生ですが、これほどニュースになる棋士は他にはなかなかいません。テレビ番組でもしょっちゅう取り上げられています。

 

羽生九段は先日、「勝てば通算タイトル100期、負ければ無冠の大勝負」とも称された第31期竜王戦で『竜王』のタイトルを失って無冠となり、そのことが大きなニュースになりました。負けることがニュースになるのは、その世界の第一人者ならではといえそうです。

 

ますます盛り上がりを見せる将棋。今回はそんな将棋に3歳の頃からハマり、それを自らの職業とした私が思う「将棋の魅力」を紹介します。「こんな世界もあるのか! もっと知ってみたい!」と思っていただければ幸いです。

3歳の時に将棋の本で入った「将棋の世界」

私が将棋の世界に入ったのは、3歳の終わり頃でした。最初は母親に買ってもらった将棋の本を繰り返し読んでいたそうです。幼い時のことで記憶は定かではないものの、本で見たことを将棋の盤上ですぐ表現できるということに楽しみを見出していたのかなと思います。

 

NHK教育テレビ(Eテレ)で毎週日曜の朝に放送されていた「NHK杯将棋トーナメント」でプロの対局を見るのは、1週間の中で一番の楽しみでした。あの「ピロリ~♪」は当時から変わっていないと記憶しています。

 

小学生になってからは、近所の将棋教室に通ったり、各地で行われる大会に出場したりして対局を重ねました。NHKの番組で見るプロ棋士がとてもかっこよくて、自分でも扇子を買い、使う手つきも似せて、一生懸命プロのまねをしていたことを思い出します。

「文化」と「先端技術」── 相反する二面性が共存する面白さ

非常に長い伝統を持っている現在の将棋には、

 

・江戸時代から続く「文化」
・AI(人工知能)などを駆使する「先端技術」

 

という二面性が存在します。この一見して相反する要素を、どちらも持っていることが、私にとってすごく魅力的である……ということに気が付きました。

「文化」……美しい所作への意識、お祝いへのお返しという伝統

対局で使われる盤や駒、手に持つ扇子をはじめとする道具類は、将棋の持つ二面性のうち「文化」を担っています。

 

先述した通り、かつての私はプロ棋士のまねをして、きちんと正座し、ビシッとキレイな手つきで駒を置くように心がけていました。幼少期の私には、この文化が魅力的に映ったのでしょう。ある種の「憧れ」だったようにも思いますし、なんだか気分が良くなって将棋へのモチベーションにもつながっていたように感じます。

 

他にも「文化」を感じることがあります。

 

私はプロになって13年、修行時代を含めると約四半世紀という長い間、多くの方々の応援によって支えていただきました。対局に負けてつらい時ほど応援が力になります。また、成績が良い時には喜びを分かち合うことで、さらに上を目指す気持ちにもなれます。そして2018年には段が一つ上がって六段に昇段し、多くのお祝いをしていただきました。

将棋の世界
ブログ記事「免状授与式」より

そういったお祝いのお返しとして、扇子をオリジナルで作って渡しています。このようにお祝いのお返しに扇子を配るというのは、将棋界では昔から行われている伝統のひとつです。

扇子の文字は右から読みます。
「新しいことに積極的に取り組む」という意味の「進取果敢」と書いてあります。

こちらが、私が六段昇段に際して作った非売品の扇子です。300本作ったところかなりの金額になりましたが、応援へのお礼としてファンの方に喜んでいただければ幸せです。

「先端技術」……AIやディープラーニングを使う将棋

将棋は、対局を記録した「棋譜」の研究で進歩してきました。コンピューターでの棋譜の解析も容易にできます。AIやディープラーニングなどの先端技術をどんどん活用する……先ほどの「文化」と性質の異なるものが両立することもまた、将棋の面白いところです。

 

今は、プロ棋士もコンピューターの力を借りて将棋を研究する時代になっています。私はコンピューターを選ぶ際、より快適な動作で研究ができるよう、スペックの高さを重視しています。ハイスペックのデスクトップPCをそろえ、最近ではクラウドコンピューティングサービスも利用しています。将棋の腕を磨くためのより良い技術的な環境を整えることで、分析にかかる時間を短縮でき、研究の効率が上がります。

PCでの勉強風景

しかし、コンピューターをもってしても、「ゲームとしての将棋」を完全に解析することは今後もずっとできないと考えています。

終わりの見えない将棋の面白さが私に向いていた

私が考える「ゲームとしての将棋」とは、「最良の手を突き詰める過程で勝敗の趨勢(すうせい)が分かること」「対局ならではの楽しさや悔しさを味わうこと」です。これこそが、人間が将棋をする上で面白みと難しさを感じるポイントだと思っています。

 

そういう点で将棋は本当に奥が深いゲームです。プロ棋士になり10年以上たった今でも、そう思います。

 

ただ、私は、「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」などレベルを上げてゴールを目指すタイプのゲームでは、ある程度レベルが上がると先が見えて、飽きてしまうタイプです。なので、知れば知るほど奥が深く、とても難しく、いくらレベルを上げても全く終わりの見えない将棋は、私に向いているものだったのだと思います。負けるともちろん悔しいですが、将棋のレベルを上げて勝ったときの喜びは、それに勝るものがあります。

将棋にハマるにつれて分かる、さらに深い世界

ここからは、おそらくあまり知られていないであろう、さらに深い将棋の世界を紹介していきます。私自身も将棋にハマっていくにつれて知っていったことが多くあります。

上達には良い道具が欠かせない

皆さんは、プロの対局で使われる盤や駒はいくらぐらいするか、想像できますか?

 

タイトル戦のような大きな舞台では、将棋盤なら300万円、駒なら100万円くらいのものを使います。

 

私が対局する時にも、ここまで高価ではなくてもだいたい近いくらい、それなりの価格のものを使っています。

私が使っている駒「盛上駒」

写真の駒は「盛上駒」(もりあげごま)という、駒の中でも最高級とされるものです。いただき物なので値段は分かりませんが、「盛上駒」の場合は安くても30万円はくだらないことがほとんどです。駒の線を掘ったところに埋める黒いもの、これは漆で、その塗る回数によって駒の種類が変わってきます。「盛上駒」は何度も漆を塗ることで漆が盛り上がっていることからその名前が付いています。

 

良い道具を使うと気持ちが引き締まり、勉強にも身が入ります。「上達には良い道具が欠かせない」という言い伝えもあるくらいです。将棋の奥深い世界にさらに一歩踏み込むような気持ちになります。

 

プロ棋士が使うような高価な盤や駒は、誰でも買うことができます。将棋を長く続けている方の中には、プロ棋士と同じような盤や駒をお持ちの方も結構いらっしゃいます。若いファンの方は、オークションサイトなどで購入することもあるそうです。

ファンの方から注目される対局時の食事「将棋めし」

もしかしたらどこかで「将棋めし」という言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。棋士が対局中に注文する食事のことをいいます。

 

対局は朝から夜まで1日かけて行われることも多いため、食事のための休憩時間が1時間程度あります。対局中の棋士は対局場所から出られないため、よく出前を利用します。棋士によっては好みや食べやすさなどを優先する「定番メニュー」を持つ人もいます。加藤一二三九段はよく鰻を食べていることで知られていました。私も対局時の昼食は鰻を食べています。ご飯を少なめにして、炭水化物の摂取を控えることが私のこだわりです。

 

おやつも対局中に登場します。おやつの時間には特にルールはなく、各々がマナーの範囲内で食べています。例えば、タイトル戦「叡王戦」の2018年の本戦トーナメントで私が対戦した永瀬拓矢七段(若手のホープで、勝負根性はピカイチ)は、「おやつに徹底してバナナを食べる」ことで有名です。彼がバナナを食べた瞬間に、ライブ配信ではとても盛り上がっていたそうです。

 

藤井七段が対局中に何を食べたかばかりがマスコミで報道され、思わず笑ってしまったこともありました。藤井七段が最多連勝記録である29連勝を達成した2017年6月26日は、昼食の「豚キムチうどん」が最も注目された瞬間ではないでしょうか。

 

プロ棋士が食べるものになぜこれほどまでに注目が集まるのか、正直よく分からないところもありますが、ファンの方々は対局の展開だけではなく、プロ棋士の食事の動向にも着目して楽しんでいらっしゃるようです。

「将棋沼」にハマって将棋を楽しんでみませんか?

ここまで読み進めてきて、将棋に少しでも興味を持っていただけたでしょうか?

 

最後に、ちょっと将棋を始めてみようかな、以前やっていたけど再開してみようかなと思う方へ、将棋を楽しむさまざまな方法を紹介していきます。

 

「ハードルが高い」と感じる方もいるかもしれません。しかし、今は将棋を楽しむ方法が昔とは比べられないほど多くてどれも手軽なので、趣味にするには金銭的な負荷はかなり少ないと思います。コミュニケーションツールとしても優れていますし、観戦だけなら他のスポーツのように見るだけでも十分楽しめます。

 

さまざまな楽しみ方があり、今や「将棋沼」への入り口はどこにでも存在している状態です。皆さんもぜひハマってください!

【1】「将棋アプリ」で手軽に始めよう
【2】ネット配信や動画で気楽に観戦しよう
【3】職場の将棋仲間と一緒に練習するのも楽しい
【4】将棋教室で強い人に教えてもらおう

【1】「将棋アプリ」で手軽に始めよう

「将棋を指してみよう」と思ったときに手軽に始められるのは、無料でダウンロードできるスマートフォンアプリです。私はよく「ぴよ将棋」をお勧めしています。どなたでも始められ、初心者から有段者まで幅広く楽しめるアプリで、かわいいひよこが対戦相手として登場し、対局後は解析をしてどの手が良かったか・悪かったかを教えてくれます。

 

やっぱり人と対戦したいという方におすすめなのは「日本将棋連盟公認 将棋ウォーズ」です。会員数がとても多く、思い立ったらすぐに対戦できます。リアルな将棋はビジュアルが少し地味ですが、「将棋ウォーズ」には派手な演出やカード集めなど、スマホならではの要素が盛り込まれています。私も「将棋ウォーズ」に参加していますが、対戦で負けるとやっぱり悔しくて、思わずスマホを投げてしまいそうになることがあります(ちょっと危ないですね……)。

【2】ネット配信や動画で気楽に観戦しよう

さらに気楽に始められるのは、ネットの動画や配信を見ることです。ルールを知らなくても見るだけならとても簡単です。仕事中にPCの小窓で開いておいたり、自宅でBGM代わりに流しておいたりする、という話もファンの方から聞いています。

YouTubeチャンネル「遠山プロの将棋塾」より

ニコニコ生放送とAbemaTVでは、タイトル戦を含む多くのプロの対局を生配信していて、プロ棋士が解説者となって難しい内容を分かりやすく説明します。

 

ニコニコ生放送では、コンピューターが形勢を点数で表す「評価値」を使うことで、その時々の情勢を教えてくれたりもします。対局時間が長いことから、解説の中には食事やおやつの話題、個性的なプロ棋士の横顔・エピソードなど、サイドストーリーも多く盛り込まれます。解説を聞いていると、解説者本人が将棋をとても好きなことが伝わってきて、それも引き込まれる要因になっていると思います。

【3】職場の将棋仲間と一緒に練習するのも楽しい

もし職場に将棋仲間がいるならば、団体戦に参加してみるのも楽しいです。将棋連盟が主催する将棋界最大のアマ大会「職域団体対抗将棋大会」が年に2回開催されています。5人一組の団体戦でトーナメントを戦い、優勝や昇級を目指します。チームの強さを示すクラスはS、A、B、C、D、E、Fの7つで、初めて参加するチームはFクラスからスタートします。

 

団体戦では、5人のメンバーを先鋒・次鋒・中堅・副将・大将に分け、横一列に座って、一斉に対局します。5人のうち3人が勝利すればチームの勝利となります。対局は個人戦ですが、一斉に進行してそれぞれの趨勢が見えるため、緊張感に包まれます。先鋒から大将までは1局ごとにメンバーの入れ替えが可能なので、対戦相手によって作戦を変えるチームもあります。

 

私はいくつかの企業で将棋部の顧問を務めており、皆さんこの大会を目標に練習を重ねています。2018年秋の大会では顧問を務める株式会社ローソンが勝ち進み、大会終了後に選手やマネージャーと打ち上げに行きました。日曜日にもかかわらずたいへん盛り上がり、皆さんの翌日のお仕事が心配になるほどでした。

 

将棋の対局は一対一で行うものなので、普通であれば勝った喜びも負けた悔しさも一人で味わうよりほかありません。でも団体戦であれば、その感情をチーム全員で味わうことができます。勝ち進んだ喜びをチーム全員で味わうことができて、皆さんうれしく、また楽しかったのでしょう。

【4】将棋教室で強い人に教えてもらおう

将棋を楽しんでいくうちに「もっと強くなりたい」という思いが募ってきたら、将棋教室に通うのもひとつの手です。当然月謝などは掛かってしまいますが(教室によって価格設定は異なります)、やはりプロ棋士など強い人に教えてもらうことには価値があります。

子ども向け将棋教室での一コマ

将棋教室に通えばプロ棋士の知り合いもできます。私は自分の師匠が主宰する将棋教室に30年近く通っており、教室のお客様とは四半世紀にわたってお付き合いがあります。将棋の世界では、プロとの距離が非常に近いのです。お気に入りの棋士に指導を受ける、イベントに参加するなどして、気軽に話したり写真を撮ったりと、間近で接することができます

 

過去に師匠の将棋教室で私が教えた生徒さんの中に、70歳で通い始めた方がいらっしゃいました。とても熱心に通われて、最終的にはアマチュア三段まで上達しました。その生徒さんには、将棋が強くなるのに年齢は全く関係ないということを教えてもらいました。「自分の年齢から始めるなんて無理無理……」と思われた方は、このことを胸に留めてみてください。

師匠・加瀬純一七段が主催する将棋教室での様子

* * *

 

ひと口に「将棋」といっても、さまざまな見方、その人に合った多面的な楽しみ方があり、それこそが将棋の魅力といえます。私も、3歳から続けている将棋を「プロ棋士であるから」という理由を超えて、人生を通じて楽しんでいけるものだと思っています。

 

皆さんも、「大人の趣味」のひとつに、将棋を加えてみるのはいかがでしょうか?

 

私はブログやいろいろな媒体で将棋にまつわる文章を書いたり、YouTubeチャンネルで将棋動画をアップしたりしています。そういったものもご覧いただきながら、多くの角度から将棋を楽しんでみてもらえれば幸いです。

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