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水素燃料とは|特徴や利用方法、水素社会に向けての課題などを詳しく解説!
水素燃料は利用時にCO2を排出しない、環境にやさしいエネルギー。燃料電池自動車(FCV)などで利用が広がり、水素社会が実現すると考えられています。ここでは水素燃料を作る方法やメリット、課題などを解説しています。
水素燃料とは
水素燃料とは、水素の酸化・燃焼によって発生するエネルギーを使う燃料です。水素を酸化・燃焼させると、電気や熱を取り出すことができます。これまでは燃料といえば化石燃料、つまり石油や石炭などの使用が多くの部分を占めていました。自動車がガソリンで走ったり、生活で使う電気も石油や石炭による火力発電で作られたりしています。これに対して水素社会では水素燃料で自動車が走ったり、発電したりすることになるのです。
水素燃料の特徴として、使用時にCO2を排出しないという点があげられ、環境にやさしいエネルギーとして期待されています。
また水素燃料は二次エネルギーであり、自然にそのままある燃料(一次エネルギー)とは違い、電気などほかのエネルギーを使って作り出すことになります。水素燃料を作り出す時にCO2を出してしまう可能性はあるのですが、発生したCO2を回収したり風力発電や太陽光発電などを利用したりすることでCO2の排出を抑えることができます。
エネルギーとしての水素の特徴
・様々な資源から作ることが可能
水素というと、学生時代の理科の実験を思い出すという方も多いでしょう。水を電気分解することで水素を取り出すことができます。これは水から水素が作れることを意味します。
水素はこのほか様々な方法で製造可能です。石油・石炭・天然ガスといった化石燃料から取り出すこともできます。また、食品廃棄物や下水汚泥といった「バイオマス」と呼ばれる動植物由来の資源からも水素を作ることができます。
・CO2を排出しない
水素燃料を酸化・燃焼させる際には、CO2が発生しません。これは化石燃料を燃やすのとは、大きく異なる点です。化石燃料を酸素と反応させると、出てくるのはエネルギーと水、そして二酸化炭素です。一方、水素を酸素と反応させた際に出てくるのはエネルギーと水。CO2は排出せずに、水だけが出てくるのです。
水素を作り出す際には、作り方によってCO2排出の可能性がありますが、水素燃料を利用する時点ではCO2が発生しません。水素燃料のクリーンな部分です。反応を示す式で比較してみましょう。どちらも酸化する反応ですが、CO2を排出するかどうかの違いがあります。
(化石燃料)+(酸素)→(水)+(エネルギー)+(二酸化炭素)
(水素)+(酸素)→(水)+(エネルギー)
水素を作る方法
・化石燃料から作る
石炭や天然ガスといった、化石燃料から水素を作る方法を紹介しましょう。まず化石燃料を燃焼させ、ガスにします。そのガスの中から「改質」と呼ばれる手法で、水素を取り出すことができるのです。現在、水素を大量生産する方法として広く利用されている方法です。メタンガスの場合は「水蒸気改質法」が使われます。化学式も見ておきましょう。
CH4+2(H2O)→CO2+4(H2)
このようになります。メタン(CH4)に水(H2O)を加えることで二酸化炭素(CO2)ともに水素(H2)へと変化しているのが分かります。二酸化炭素の発生が気になるところかもしれません。
化石燃料から作る場合のように、水素を作るのに二酸化炭素排出を伴うのは「グレー水素」と呼ばれます。一方、水蒸気改質法で作る場合は製造工程で二酸化炭素を回収・貯蔵・利用してCO2を抑制でき「ブルー水素」と呼ばれます。これからの水素社会、水素を作った時のCO2をどうするか、といったこともよく考えなければならないようです。
・水から作る
水から水素を作るには、電気分解を行います。化学反応式は次のとおり。
2(H2O)→2(H2)+O2
水(H2O)に電極を入れて電気を通すと、陰極(-)に水素(H2)、陽極(+)に酸素(O2)が発生するという反応です。真水は電気を通さないため、実際には何らかの電解質を混ぜておきます。この際に利用する電気が風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーだと、生成した水素は「グリーン水素」と呼ばれます。
水素を作る時に、COが排出するのか、回収されるのか、発生しないのかでグレー水素・ブルー水素・グリーン水素に分類されるのを知っておくと良いでしょう。これからの時代、社会はCO2の排出について、より敏感になると考えられます。
・その他の方法
その他の方法としては「バイオマス」から水素を作ることができます。バイオマスとは、動植物由来の再利用可能な資源。木材や生ごみ、トウモロコシなど種類は様々です。
たとえば2021年6月、液化水素の製造・販売を手がける岩谷産業がバイオマス燃料による液化水素製造の事業化を検討する旨の発表をしました。これはバイオマス燃料を燃やしてガス化し、水素を取り出すというものです。燃料となるのは木質ペレットなど植物由来のバイオマス燃料。燃焼して発生するCO2は植物が成長する過程で外から吸収したものであるため、地球上のCO2の量を増やさない「カーボンニュートラル」の燃料となります。
水素燃料の利用先
・燃料電池自動車(FCV)
水素燃料はどんなところで使われているのでしょうか。まずは自動車。FCV(Fuel Cell Vehicle)またはFCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)と呼ばれる自動車は、水素燃料を使って走ります。FCVに搭載される燃料電池は、水素と酸素を反応させて発電します。FCVは水素タンクを積んでいて、発電した電気でモーターを回すのです。バッテリーに充電して走るEV(電気自動車)と異なる点です。FCVは2014年からトヨタ自動車が「MIRAI(ミライ)」を販売しています。
・家庭用燃料電池「エネファーム」
燃料電池は水素と酸素を反応させて発電しますが、これを家庭で利用するのが「エネファーム」です。使用するのは、都市ガスやLPガス。供給されるガスの主要成分はメタンなのですが「水蒸気改質」という方法でメタンから水素を取り出します。水素を燃料電池に送ると、酸素と反応して発電。その際に熱も発生し、これは暖房や給湯に使われます。発電した電気はテレビや照明用の通常の電気として利用可能です。燃料電池で発電する際の化学式は次のようになっています。
2(H2)+O2→2(H2O)
水素と酸素が反応して水ができるのですが、その際に熱と電気が発生するというものです。水から水素を作る時と、ちょうど反対の方向になっているのが分かります。
・水素発電所
これまでは火力発電所が多くの電力を作っていましたが、これからは「水素発電所」も稼働を始めます。2022年3月に山梨県で稼働予定なのが、新電力大手イーレックスの水素発電所。発電には水素を燃焼させる水素専焼ガスエンジンが使われます。発電に使う水素は併設する水素製造設備から供給します。ここでは水と「超マフィック岩」と呼ばれる触媒を反応させ、水素を生成する技術を使用。CO2を排出しないため、化石燃料の代替として注目されます。
料電池自動車(FCV)のしくみと車の未来
・燃料電池自動車のしくみ
先ほどご紹介した燃料電池自動車(FCV)。そのしくみを詳しく見てみましょう。自動車には「水素タンク」と「燃料電池」そして「モーター」が搭載されています。「燃料電池」へは「水素タンク」からの水素と、外気からの酸素が供給されます。「燃料電池」で発電した電気は「モーター」に供給され、自動車を走らせるというしくみです。
水素タンクへは「水素ステーション」で水素を補給します。二酸化炭素は発生せず、排出するのは「水(水蒸気)」だけです。要約すると、次のようなしくみとなります。
外部から供給(空気中の酸素、水素ステーションの水素)→自動車が発電しながら走行(水素タンク→燃料電池→モーター)→外部へ排出(水、水蒸気)
・燃料電池自動車のメリット
燃料電池自動車(FCV)の大きなメリットは、充電が不要という点。電気自動車(EV)では充電に時間がかかるというデメリットがありました。FCVの場合水素ステーションで水素を補給するだけなので、ガソリンスタンドでの給油と同様、短時間で充填が完了します。水素タンクを満タンにした場合の走行距離はEVよりも長く、将来的にはガソリンを使った自動車と同じくらいになると考えられています。排出するのも水だけでクリーン。水素社会における主役の1つとなりそうです。
・水素エンジン車にも注目
水素を使って走る自動車には、もう1つの形として「水素エンジン車」があります。こちらは従来のガソリンを使ったタイプと同様のエンジンを搭載しています。走行する際には、ガソリンではなく水素を燃焼させ、エンジンを動かすのです。電気でモーターを回すFCVとは異なる水素利用です。
自動車メーカーなどでは、既存のエンジンを改造した試験が行われ、量産を目指しています。水素ステーションでは、FCVと水素エンジン車、両方に水素を補給することになるかもしれません。
水素燃料を活用することのメリット
・環境にやさしい
水素燃料を利用した時に出てくるのは水のみ。CO2を出さない燃料なので環境にやさしいといえるでしょう。水素燃料を作る時にはCO2が発生することがありますが、CO2を回収する技術も開発されています。また成長時にCO2を取り込んだ植物などバイオマスによって水素を作れば、環境への影響が抑えられます。
・エネルギー安全保障に役立つ
エネルギーを石油などの化石燃料だけに頼っている状況は、安全保障の上では好ましくありません。有事の場合など、国際情勢によって供給が左右されてしまうからです。水素燃料は様々な方法で作ることができるため、代替的なエネルギーとしていざという時に役立つと考えられます。再生エネルギーと水から水素を作り出せば、エネルギーの自給率を高めることもできるでしょう。
・産業競争力の強化
日本は燃料電池など、水素エネルギーの分野で高い技術を保有しています。2021年版の「エネルギー白書」では、主要7カ国・地域の特許競争力を比較しています。これを見ると、エネルギー関連産業においては水素分野で日本が1位。環境にやさしい技術を世界に展開すれば、グローバルな気候変動への対処にも役立つと考えられます。
水素燃料のデメリットと水素社会実現への課題
水素燃料が広い分野で利用される「水素社会」。実現に向けては、解決しなければならない課題もあります。
まずは価格の問題。製造コストを下げることは水素燃料や燃料電池の普及に必要です。また水素燃料が社会で広く使われるためには、輸送と貯蔵の問題も出てきます。現在、液体化した水素を運ぶための技術開発が進められています。燃料電池自動車(FCV)が普及するには、水素ステーションなどインフラ整備もこれからの課題。水素社会を実現するには、水素燃料への需要と供給を同時に拡大していくことが求められます。
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このテーマに関する気になるポイント!
- 水素燃料とは?
水素を酸化・燃焼させた際に発生するエネルギーを利用する燃料です。 - エネルギーとしての水素の特徴は?
利用時にCO2を排出せず、水や天然ガス、バイオマスなど様々な資源から作れることです。 - 水素を作る方法は?
水の電気分解や、天然ガスから取り出す方法などがあります。 - 水素燃料の利用先は?
燃料電池自動車(FCV)や家庭用燃料電池「エネファーム」、水素発電所などがあります。 - 燃料電池自動車(FCV)のしくみは?
水素タンクの水素と外部から取り入れた酸素によって発電し、モーターを回すしくみです。 - 水素燃料を活用することのメリットは?
環境にやさしく、化石燃料だけに頼らずに済み、産業競争力の強化につながります。 - 水素燃料のデメリットと水素社会実現への課題は?
コストの低下やインフラ整備が課題となります。
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