どこまでが経費?個人事業主が迷う「経費になるもの・ならないもの」

リリース日:2022/07/20 更新日:2022/08/16
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個人事業主が事業を行うために支払ったお金は、どこまで経費にすることができるのでしょうか。この記事では個人事業主が迷いやすい「経費になるもの・ならないもの」について例を挙げて解説し、判断ポイントをまとめました。

  1. 経費の定義とは?「経費で落とす」とはどういうこと?
  2. 経費を計上する理由
  3. 経費にできるもの
  4. 経費計上のタイミング
  5. 経費にならないものを計上した場合のペナルティ
  6. 経費になるかどうかは、事業をするのに必要な支払いかで判断しよう

経費の定義とは?「経費で落とす」とはどういうこと?

そもそも経費とは何なのか、まず言葉そのものの意味を確認してみましょう。

 

・経費とは
経費とは「経常費用」の略称で、一般的には「事業のために支払った費用・コスト」の意味で使われます。

 

・経費で落とすとは
経費で落とすとは、「その支払いを経費として帳簿に計上する」という意味です。 

 

例えば会社の飲み会などで「課の忘年会の費用は経費で落とす」というような言葉を聞くことがありますが、これは会社側が飲み会にかかった費用を事業の一環の支出とみなして帳簿に記録する、ということを指します。

 

従業員の立場からすると経費で落とす=会社が立て替えてくれるのでお金がかからない、という感覚になりがちですが、個人事業主の場合は経費といっても実際には自分の財布からお金が出ていくことになります。経費で落とすからといって支払い自体がなくなったり、安くなったりするわけではありません。

経費を計上する理由

画像出典:Inmagine123RF株式会社

では経費で落とすことのメリットは何なのでしょうか。それは税金に関係があります。

 

個人事業主が事業で得た利益には所得税がかかりますが、利益とは売り上げた金額から経費を差し引いた金額を指します。つまり、経費を計上するほど差し引ける金額が大きくなり、その分税金が安くなります。

 

ただし経費にできるのは事業に関する支出に限ります。仕事に関係のない支払いまで何でも経費にすることはできません。

 

国税庁の資料には、以下のものは経費にならないと説明されています。

 

(1)衣食住費、養育費などの生活費である家事用の費用
(2)事業と家事の双方の目的のために支出される家事関連費(例えば、店舗兼住宅などの地代、家賃、火災保険料、水道光熱費、固定資産税、不動産取得税など)のうちの家事用部分に相当する金額
(3)所得税、復興特別所得税、住民税
(4)罰金、科料(とがりょう)、過料(あやまちりょう)、国税の延滞税や加算税、地方税の延滞金や加算金
(5)資産の値下がりなどによる評価損
(6)生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給料や賃金(青色事業専従者に支払う給与を除きます。)、家賃、利子

国税庁『私たちの税金(令和元年度版)』
https://www.nta.go.jp/publication/tenji/index.html 

家事按分とは

上記(1)にあるように、一般的に食費や被服費など単純な生活費にあたるものは経費にはできません。しかし、中には事業とプライベート両方に使用していて、明確に区別がしにくい支出も存在します。例えば個人事業主だと自宅を事務所として使っていたり、パソコンや車などを仕事とプライベートどちらにも使っていたりする方も多いでしょう。このような場合に行うのが家事按分です。

 

家事按分とは、あることに支払った金額を事業で使用した分とプライベートで使用した分に分け、その割合を簡易的に計算し、事業で使用した分の金額のみ経費として計上することです。割合の決め方に明確な指定はありませんが、数や面積の割合、使用時間の割合、乗り物であれば移動距離の割合などで計算する方法があります。 

例1)自宅にある4部屋(広さはすべて同じ)のうち、1つを事業のために使っている場合
家賃の1/4=25%を経費として計上

例2)私物のパソコンを毎日平均6時間使い、うち週4日は仕事で利用している場合
仕事での利用時間は、6×4=24時間
プライベートでの利用時間は、6×3=18時間

24÷(24+18)=0.57≒60%、を経費として計上

 算出方法に決まりはありませんので、自分で根拠となる計算式を決めて、それで人にきちんと合理的な説明ができるならOKです。計算しやすいようにキリのいい数字にまるめてしまっても問題ありません。

経費にできるもの

支払いを経費として計上する時には、次に挙げるような「勘定科目」を使用して帳簿に記録します。勘定科目はたくさんの種類がありますが、以下はその一例です。

 

●仕入
●旅費交通費
●接待交際費
●広告宣伝費
●通信費
●水道光熱費
●消耗品費
●給料
●福利厚生費
●採用研修費
●新聞図書費
●車両費
●外注工賃
●家賃
●租税公課

 

例えばチラシを刷るのにかかった費用は「広告宣伝費」、従業員に支払った給料は「給料」という具合に支出を振り分けていきます。

 

ただし事業の内容や業界の事情などによって必要な支出は様々なので、経費になるかどうかの判断はケースバイケースというのが実情です。実際に事業をしていると、「これは経費にしていいの?」と迷うものが多々あります。

 

判断のポイントは、「その支出は、売上を得るために必要な支出だったか?」という判断基準です。もし人から尋ねられた時に、その支出が事業に必要だったことを筋道立てて客観的に説明できるのであれば、その支出は経費として認められる可能性が高くなります。

こんなものまで経費になる

ここからは経費にできるかどうか、判断に迷いやすいものを例として挙げてみましたので、ひとつずつ見ていきましょう。

 

1.自宅の家賃(更新料含む)
自宅を事務所や作業拠点としている場合は、更新料も含めた家賃の一部を「地代家賃」として経費にすることができます。経費にする時は家事按分し、事業で利用している割合のみを計上しましょう。

 

2.仕事でカフェを利用した時の代金
作業や打ち合わせのためにカフェを利用した場合も経費になります。科目は「会議費」や「接待交際費」などがあります。

 

ただしカフェは様々な用途に利用できるため、グレーゾーンが非常に大きいです。あくまで「仕事のため」という理由があるのが前提ですので、例えば打ち合わせの後そのまま一人残って昼食をとったという場合や、単に仕事の合間に休憩のために立ち寄ったという場合は、その分だけ経費から除く、という判断をした方が無難だと言えるでしょう。

 

3.個人事業税
所得税や住民税を経費にすることはできませんが、それ以外の税金であれば「租税公課」として経費にできるものがあります。

 

個人事業税は「事業を行っている個人が支払わなくてはいけない税金」です。それを払わないと事業ができない、つまり事業のための支出なので経費にすることが可能です。

 

4.社員旅行
従業員を雇っていて社員旅行を企画した場合、以下の要件を満たせば旅行の費用を「福利厚生費」として経費にすることができます。 

(1) 旅行の期間が4泊5日以内であること。
   海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
(2) 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
   工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。

 国税庁『No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行』
https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/2603.htm

ただし、実質的にプライベートな旅行と変わらないものや、あまりにも豪華で金額が大きいものは社員旅行にはそぐわないとされ、経費とは認められないことがあるので注意が必要です。

 

5.パソコン・車
パソコンや車なども、事業で使っているのであれば家事按分をした上で経費にすることができます。ただし金額が10万円以上(青色申告者の特例の場合30万円以上)になると多くは経費ではなく備品という扱いになり、耐用年数に応じて減価償却するという処理をする必要があります。

経費にならないので注意するもの

逆に以下に紹介するものは、一般的に経費にできないものです。

 

1.スーツ
スーツは経費として認められにくいもののひとつです。

実はスーツが経費になるかどうかは、細かい議論をすれば税理士など専門家の間でも意見が分かれる非常にグレーなゾーンと言えます。スーツはあくまで衣服代という生活費のひとつであり、かつ多くの職業において制服というほど着用義務があるものではない、つまり「絶対にスーツでないとダメ」という理由が存在しないので、一般的には経費にはならないという見方が強いです。

 

ただし弁護士や講師業などスーツが制服同然の職業で、業務を遂行する上で必ず必要であるとはっきり主張できるのであれば、事業で着用する時間分に関してのみ経費として認められることもあります。

 

2.罰金類
業務中に起こしてしまった罰金や税金の滞納による罰金などの支払いは経費にすることができません。冒頭で説明した通り、経費は計上することで税金が少なくなります。罰金で支払ったお金のおかげで税金が安くなる、というのはおかしな話なので、こういったお金は経費として認められないことになっています。

 

3.生命保険料や健康診断の費用
法人の場合は従業員の健康維持にかかわる費用や保険料を経費にすることができますが、個人事業主はこれらを経費にすることはできません。

 

4.社会保険料
個人事業主の場合、年金や社会保険の支払いも自身で行うことになりますが、これらは経費になりません。その代わり、確定申告時に「社会保険料控除」という形で課税金額から差し引くことができます。

経費計上のタイミング

画像出典:Inmagine123RF株式会社

個人事業主の会計期間は1月始まりと決まっていますので、その年の1月から12月までの1年間にかかった売上と経費の合計をまとめて利益を算出し、翌年3月に確定申告をします。

 

経費計上の原則は「発生主義」です。これは手元のお金やモノの動きに関係なく、売上や支払い義務が発生したタイミングで帳簿に計上するという考え方です。

 

例えば2019年の12月に仕事用のパソコンを注文して、2020年1月に手元に届いたとしましょう。この場合、支払い義務は12月に発生しているため、パソコンの費用は2019年の経費として計上します。

経費にならないものを計上した場合のペナルティ

経費にならないものを誤って経費として計上してしまうことがあるかもしれません。このような場合は、本来支払うべき金額よりも税金の納付額が少なくなっているので、後で追加の税金が課されることになります。

 

これがミスではなく、税金を少なくするために不自然な経費を意図的に計上したり、事実を隠蔽・偽装したりする悪質なものであれば、いわゆる「脱税」とみなされ、重いペナルティである「重加算税」が課されます。

 

重加算税は本来支払うべき金額に35~50%上乗せしたものです。さらに、過去に脱税の前科があるとみなされるので、以後の税務署からのチェックは厳しくなり、銀行からの融資も受けにくくなるなど信用にも深刻な傷がつくことになります。

経費になるかどうかは、事業をするのに必要な支払いかで判断しよう

経費として計上できるかどうかの判断基準は、「事業をするために必要な支出であるか」がポイントです。経費は適切に計上し、プライベートでも利用しているものはしっかりと家事按分をした上で、根拠を説明できるようにしておきましょう。

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