そのためだけに旅に出る NIPPON ONE THEME TRIP

初心者でも満喫できる、サイクリストの聖地「瀬戸内しまなみ海道」へ!

〜広島・尾道、愛媛・今治〜

多くの観光スポットを回る旅よりも、その土地の空気や人の営みを感じながらじっくりと巡る旅にひかれる人は多いのでは。そんな旅に最適なのが、肌で風を感じながら進む自転車。今回向かったのは、日本で初めて海峡を横断する自転車道が整備された「瀬戸内しまなみ海道」。広島の尾道から愛媛の今治まで約70km、6つの島々を結ぶこの海道には、サイクリングでしか味わえない魅力がある。

旅の始まりは、
自転車と泊まれるホテルから

しまなみ海道へは、8年ほど前に一度ドライブに訪れたことがある。そのとき目にした瀬戸内の多島美をもっと身近に感じてみたいと考え、今回はサイクリングで島々を巡ることに。

旅の拠点に選んだのは、尾道駅から歩いて5分ほどの海岸沿いにある「ONOMICHI U2」。70年以上前に建てられた大きな海運倉庫をリノベーションした施設内には、自転車とともにチェックインできる、その名も「HOTEL CYCLE」がある。28室ある客室の壁には自転車をかけられるサイクルハンガーが設置されており(一部客室を除く)、ホテル内には自転車のセルフメンテナンスができるスペースも。フロントでは工具の貸し出しも行っている。

もちろん、レンタサイクルも用意されている。自転車は、しまなみ海道沿線の自治体が手がけるサイクルターミナルでも借りることができるが、初心者である僕は、軽量で機能性の高いモデルがそろうONOMICHI U2内にある「GIANT STORE」で借りることに。レンタル時には、ギアの操作方法や運転の注意点などを詳しく教えてもらうことができた。

コースについて教えてくれたのは、ONOMICHI U2スタッフの井上善文さん。
「尾道から今治までは約70km。経験豊富なライダーは、4~6時間で四国まで走破できます。初心者の方であれば、ひとつ目の向島(むかいしま)だけをゆっくり巡ったり、観光地に立ち寄りながら途中の島で1泊したりするのがおすすめ。いろんな走り方を選択できるのが、しまなみ海道の魅力ですね」

出発を翌日の朝にひかえ、夜はONOMICHI U2内にあるレストランで、瀬戸内の地魚や地鶏、野菜などをふんだんに使かった料理をいただいた。窓の外には明日最初に渡る、向島の明かりが静かに揺れていた。

みかんの花の香りに満たされた
島の風を感じながら

翌朝9時にONOMICHI U2を出て、まずはすぐ近くの渡船乗り場へ。尾道から最初の向島へは、船で渡るのが基本。港に船が到着すると通勤・通学で利用している地元の人たちが、次々とおりてくる。その波が去ったら、船に乗り込む。5分ほどであっという間に向島へ。自転車旅のスタートが渡船というのは、なんだか、しまなみ海道らしくていい。

向島に着いたら、前日ONOMICHI U2で教えてもらったように、道路に描かれた青いラインを目印に進んでいく。ブルーラインと呼ばれるこの線は初心者でも楽しめる推奨ルートを表していて、尾道から今治まで続いている。

最初は距離をかせがなくてはと、ひたすらペダルをこいでいると、すれ違うライダーたちが次々と挨拶や会釈をしてくれる。心あたたまる、とても素敵なマナーだ。

20分ほど走って因島大橋のたもとに到着。ここから橋までは上り坂。初心者にとっては少々きついが、上りきった橋の上は眺めがよく、風も心地いい。さらに、橋を渡った先はずっと下り坂が続いている。こんなふうに島から島へ移動するたびに、坂を上り、橋を渡って、下るということを繰り返す。

因島に渡ると、爽やかなみかんの花の香りに包まれた。道々にはみかんの白い花々。因島をはじめ、しななみ海道の島々は柑橘類の栽培が盛ん。そう教えてくれたのは、偶然入ったお好み焼き屋のお母さんだ。因島にはお好み焼き屋が数十軒あり、島でつくられた“うどん”をのせるのが定番だそう。目の前の大きな鉄板で、うどん入り、そば入りの両方を焼いてもらった。

その後、向かいにある大山神社へ。その境内にある和多志神社の主祭神は交通の守り神であり、現在では「自転車神社」の通称で多くのサイクリストに知られている。ここで、自転車が刺繍されたお守りを受けて、次の生口島(いくちじま)へ。

自分の脚で進むからこそ
感動がより深く心に刻まれる

生口島は海沿いを走るルートが多く、爽快な眺めが楽しめる、と言いたいところだが、渡った時点で走行距離は20km以上。初心者である僕は、だんだんお尻が痛くなってきて景色どころではなくなってしまった。それでもなんとか午後4時過ぎに目的地の「しおまち商店街」へたどり着いた。

商店街をぶらぶらしていると、精肉店「岡哲商店」のお母さんが声をかけてくれた。「ここに嫁いできてから、もう57、58年、揚げているのよ」。そんな話を聞きながら、揚げたてのコロッケをほおばった。

ここまで約35km。このあと僕は、商店街を抜けた先にある港からフェリーに乗って尾道へ。これもONOMICHI U2の井上さんが教えてくれた、初心者におすすめのルート。フェリーに乗って海上から眺める島々も、また格別に美しかった。

紹介した以外にも、しまなみ海道には神社やお寺、飲食店、美術館など、さまざまな立ち寄りスポットがある。向島で立ち寄った「立花食堂」では、特産のレモンが浮かぶ足湯にも入ることができた。気になったお店や場所に、ふらりと立ち寄れるのがサイクリングのいいところ。さらに、自分の脚でペダルをひとこぎひとこぎ進むからこそ、美しい景色を目にしたときの感動や出会った人の笑顔がより深く心に刻まれるのだと、旅から戻ったいま、実感している。

Data

ONOMICHI U2
広島県尾道市西御所町5-11
TEL:0848-21-0550
https://www.onomichi-u2.com/
JR山陽本線「尾道駅」より徒歩5分、JR山陽新幹線「新尾道駅」よりタクシーで15分
しまなみ海道の本州側の拠点・尾道に2014年3月にオープン。ホテルとサイクルショップ、レストラン、バー、カフェ、ベーカリー、ライフスタイルショップが一体になった複合施設。地元の伝統産業である備後絣をいかしたバッグやストール、デニムのルームウエアなどのほか、地元の生産者とコラボした柑橘類のマーマレードなどの食品も販売している。

Onomichi Imabari more info.

立花食堂
広島県尾道市向島町立花287-1
TEL:0848-36-5662
営業時間:11:00~14:30(LO14:00)
定休日:火曜、第2・4水曜
2014年11月、目の前に海が広がる絶好のロケーションに開店した「立花食堂」。メニューは地元の野菜をふんだんに使った日替わり定食と、あっさりとしてコクがあるスープが特徴のラーメン、旬の魚介を盛りつけた海鮮丼の3種類。食堂の名のとおり、日常的に楽しみたい料理がそろう。今年4月には隣の建物に「life:style」という雑貨店が移転オープン。向島の陶芸家が手がけた、立花食堂オリジナルの器などが購入できる。

オミシマコーヒー焙煎所
愛媛県今治市上浦町瀬戸6054
TEL:0897-87-3655
営業時間:11:00~17:00 定休日:火曜、水曜
http://omishimacoffee.com/
尾道側から4番目にあたる大三島に東京から移住した衞藤さん夫婦が、2015年4月にオープンした自家焙煎珈琲店。コクがありながら、すっきりとした味わいが人気のオミシマブレンドにくわえて、スペシャリティコーヒー5種類を用意。挽きたての新鮮な豆を味わってもらいたいと、焙煎はほぼ毎日行っている。みかん畑の向こうに瀬戸内の海が広がる。そんなおだやかな景色を眺めながら、ゆっくりコーヒーを楽しみたい。

photo: Kenji Arata text: Masahiro Sugiyama

尾道をもっと楽しむ

郷土味かけはし

尾道の駅から歩いて3分。「第3回ええみせじゃん尾道」にも入賞した地元で人気店「郷土味かけはし」は、その名のとおり瀬戸内・広島の味を大切にする会席料理の店。地のものを中心に選び抜いた食材から、旬の味わいを最大限に引き出した料理には、「瀬戸内の四季を五感で堪能していただきたい」というご主人の思いがこもっています。昼は3,500円~15,000円、夜は5,000円~15,000円のコースが用意され、心に残るひとときを堪能することができます。

広島県尾道市東御所町3-12
0848-24-3477
http://kakehashi.hp.gogo.jp