SPRING BOOK & MOVIE

季節で選ぶこの一作

SELECTED BY ASAYO TAKII REIKO YUYAMA

瀧井朝世さんオススメの
春に読みたい一冊

『桜の下で待っている』

彩瀬まる 著
(実業之日本社)

¥1,400+税

『桜の下で待っている』

桜前線が北上する四月、東北新幹線に乗った人たちの姿を追った連作集。各章で印象的な花や植物が登場して、春らしさ満開。祖母を訪ねる青年、婚約者の家に挨拶に行く女性など、どの短篇も“ふるさと”が裏テーマになっています。ただ、実際自分が生まれた土地であったり、恋人の実家がある街だったりと、“ふるさと”の有り方もさまざま。最終話は両親をはやくに亡くし、“ふるさと”を持たない女性の話。彼女にとっての“帰る場所”とは? 読み終えた時はタイトルの言葉が心に響きます。爽やかな春風を感じる一冊。

瀧井朝世

瀧井朝世/Asayo Takii
フリーライター
WEB本の雑誌「作家の読書道」、本の話WEB「作家と90分」、『CREA』『anan』などで作家インタビュー、書評、対談などを担当。2009年〜13年にTBS系「王様のブランチ」ブックコーナーに出演。現在は同コーナーのブレーン。
photo: 文藝春秋

湯山玲子さんオススメの
春に観たい一作

『四月物語』

岩井俊二 監督

発売・販売元:ポニーキャニオン
Blu-Ray¥3,800+税
©1998 Rockwell Eyes inc.

『四月物語』

日本の新学期や新体制スタートの時期は、春爛漫の四月、桜の時期。多くの人が「新しい環境や出会い」を経験するこの特別な季節を、ひとりの上京大学生の女子の目から描いた名作。クラスメイトとの交流がいまいちスムーズに行かなかったり、どう見ても怪しいアパートの隣人が出没したり、新しい街の新しい本屋さんの男性店員に甘酸っぱい想いを持ったり、少女が独り暮らしを始めて、世界に向かって歩み出そうという時の、青春の実感と喜びが、桜吹雪と、甘やかな光線の中に描かれていて見事。

湯山玲子

湯山玲子/Reiko Yuyama
著述家・ディレクター
映画・音楽・食・ファッションなど文化全般を題材にコラム執筆やコメンテーターとして活躍。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)『女装する女』(新潮新書)『四十路越え!』(角川文庫)など。