SUMMER BOOK & MOVIE

季節で選ぶこの一作

SELECTED BY ASAYO TAKII REIKO YUYAMA

瀧井朝世さんオススメの
夏に読みたい一冊

『みなそこ』

中脇初枝 著
(新潮社)

¥1,500+税

『みなそこ』

お盆の夏休みに、十歳の娘を連れて故郷の集落に帰省したさわは、田舎の夏を満喫します。川遊び、お盆のお施餓鬼、じょろうぐも大会……。そうした数々の風習はもちろん、人々が話す方言や、この土地に伝わる民間伝承や怪談など、やがては消えてしまうであろうものが、この小説のなかには詰まっています。さらには、子どもたちの肉体が放つ若さの輝きも、さわがこの夏抱く感情も、さらには人の命だって、刹那的なものだと、この物語は感じさせる。変容していくものを夏の光で包み込んだ、ノスタルジーあふれる作品です。

瀧井朝世

瀧井朝世/Asayo Takii
フリーライター
WEB本の雑誌「作家の読書道」、本の話WEB「作家と90分」、『CREA』『anan』などで作家インタビュー、書評、対談などを担当。2009年~13年にTBS系「王様のブランチ」ブックコーナーに出演。現在は同コーナーのブレーン。
photo: 文藝春秋

湯山玲子さんオススメの
夏に観たい一作

『西瓜』

ツァイ・ミンリャン 監督

発売・販売元:竹書房
ツァイ・ミンリャンDVD-BOX『西瓜』ほか〈4枚組〉
¥13,500+税(店頭在庫のみ)

『西瓜』

一昨年前のヴェネチア国際映画祭で、この監督の『郊遊 ピクニック』を観て、その世界観と個性に圧倒された。その彼の代表作のひとつの『西瓜』の舞台は、記録的暑さで水不足にあえぎ、テレビからは「水不足なので皆さん、西瓜を食べましょう」というアナウンスが始終聞こえる台湾のとある街。もう、熱すぎて冷たい床に這いつくばって寝るしかないほどのダルでダークな夏の風景の中で、ある女性とAV男優の恋愛模様が炸裂する。汗みどろの猛暑の中、激しく求め合い愛を交わす男女の姿とは裏腹の、冷たく、乾いた人間関係の合わせ技がニクイほど上手い。

湯山玲子

湯山玲子/Reiko Yuyama
著述家・ディレクター
映画・音楽・食・ファッションなど文化全般を題材にコラム執筆やコメンテーターとして活躍。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)『女装する女』(新潮新書)『四十路越え!』(角川文庫)など。