AUTUMN BOOK & MOVIE

季節で選ぶこの一作

SELECTED BY ASAYO TAKII REIKO YUYAMA

瀧井朝世さんオススメの
秋に読みたい一冊

『錦繍』

宮本 輝 著(新潮文庫)

『錦繍』

秋といえば紅葉、紅葉といえば『錦繍』というくらい、自分のなかではイメージの強い一冊。美しく色づいた蔵王のゴンドラリフトで、十年ぶりに再会した元夫婦。それを機に二人の間で始まった手紙のやりとりを追った書簡体小説。なぜ二人は別れねばならなかったのか、その時の思いは何か、その後どのように生きてきたのか。文通は翌年の秋まで続き、最後の手紙でも紅葉の風景が現れます。“人生の秋”に差し掛かった男女が、もう一度自分たちの来し方を見つめ直し、新たな一歩を踏み出していくという点でも季節感が高まります。

瀧井朝世

瀧井朝世/Asayo Takii
フリーライター
WEB本の雑誌「作家の読書道」、本の話WEB「作家と90分」、『CREA』『anan』などで作家インタビュー、書評、対談などを担当。2009年〜13年にTBS系「王様のブランチ」ブックコーナーに出演。現在は同コーナーのブレーン。
photo: 文藝春秋

湯山玲子さんオススメの
秋に観たい一作

『秋のソナタ』

イングマール・ベルイマン 監督

発売元:シネマクガフィン 販売元:紀伊國屋書店
Blu-ray¥5,800+税/DVD¥4,800+税

『秋のソナタ』

現代の日本でも取りざたされている、母と娘の問題を、巨匠ベルイマンが描いた傑作。イングリッド・バーグマンの最後の作品となった。老いても美しく、世界中を飛び回って活躍するピアニストの母と、温厚な牧師の妻となった娘。奔放な母と、抑圧を心に抱えた娘の「愛と憎悪」が、深まるスウェーデンの美しい湖沼地帯の秋の冷たさのもとに、描かれていく。ピアノの音を縦糸に、名優ふたりの緊張感溢れる関係性と、深い秋の気配が入り交じり、独特の世界観が表れていく。蝋燭の炎、窓辺の秋らしい日えいぞ差しなどの映像美に痺れます。

湯山玲子

湯山玲子/Reiko Yuyama
著述家・ディレクター
映画・音楽・食・ファッションなど文化全般を題材にコラム執筆やコメンテーターとして活躍。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)『女装する女』(新潮新書)『四十路越え!』(角川文庫)など。