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Workshop VOL.1 2015.7.25

7月25日に迎えた第一回。炎天下の中、会場となる朝日新聞社メディアラボ分室(渋谷)には、27名の参加者が集まりました。「小説家になりたい」と語る人から、「仕事の書類作成に活かしたい」と語る人まで、動機は人それぞれですが、物語の創造を手助けする未知のアプリの存在に、みなさん興味津々。ワークショップはまず、中村さんによる「Storiaを作った経緯」についてのスピーチからスタートしました。

Storiaが見せる、小説への新鮮な視点

「執筆をサポートするツールがあれば、もっと面白い物語が書けるのではないか?」。2012年、そう思い立った中村さんは、母校・芝浦工業大学と共同開発を始めます。しかし、いざ研究を始めてみると、自分が小説を書いているときのことがよくわかりません。そこで、執筆にあたって考える膨大な事柄を、認知心理学の知見に基づきシステム化。その開発の途上で生まれたのが、今回の主役であるStoriaです。

このアプリの特徴は、操作の簡易性。実際、スマホでStoriaを使ってみると、すでに入力されたあらすじの「型」に従い、文章の構成要素を選択肢から選ぶだけで、数十分のうちに物語の全体像が作れてしまいます。なぜこれほど簡易性にこだわるかといえば、多くの小説家志望者が物語を書き切れず、挫折してしまうから。しかし、「書かぬが花」ではもったないと中村さん。会場に来ていた、ともに研究をする芝浦工大の米村俊一教授からも、アイデアを外在化することの大切さが説明されました。

続くゲストトークに登場したのは、機械を使った物語づくりに関心を寄せてきたという小説家の海猫沢めろんさん。「小説家の執筆作業は幻想化されがちだけど、実際は反復によって上達するスポーツに近い」と語ります。また「機械を使う=人間性がなくなる」という一般論についても、「小説の“魂”は執筆のプロセスではなく、読み手の中で生まれるのでは?」と反論。中村さんも「小説は記号の集積。そこから何を感じるかは、読者の記憶にかかっている」。二人のやりとりに参加者も熱心に聞き入ります。

トークでもっとも盛り上がったのは、ストーリーについての話題。小説の魅力はストーリーにあると考えがちですが、「それは論理的に考えられる。むしろ重要なのは世界観」と中村さん。これに対して海猫沢さんも「桃太郎だって、大まかな筋としては単純。でも、“桃”や“きびだんご”というディティールが面白い。それがあの世界を作っている」と返します。小説への先入観を覆す刺激的なトークは、約1時間に及びました。

「とりあえず、完成させてみることが大事。そこでいろいろとわかることがある」という中村さんからのエールを受け、次にいよいよ、参加者による「Storia」を使ったあらすじ制作がスタートします。お二人の話を受けた参加者が紡ぐ物語とは一体?

Storia初体験。あらすじを作ってみよう!

実習が始まると、参加者は一気に真剣な顔に。「まさかこんなにも集中してくれるとは(笑)」と驚きの表情の中村さんも席を周り、参加者の質問に丁寧に答えます。早い人では15分程度であらすじを仕上げ、それをプリントアウト。続いて紙の上での校正作業に入ります。全参加者が最後まで書き切り、27編のあらすじが完成しました。

いよいよ講評会。参加者に順にマイクを回し、中村さんと海猫沢さんがStoriaを使った感想を訊いていきます。ストーリーの「型」が決まっていることに戸惑ったという意見や、自分では発想しない物語が書けたという意見まで、感想はさまざま。また作品としては、ネットニュースの編集者を主人公にした作品や、牛丼のお肉とご飯を男女に見立てた作品のような、ユニークなディティールを持つ物語が高評価を獲得。創作方法が新しくなっても変わらない、「世界観」の重要さが浮き彫りになる結果となりました。

ワークショップを終えて

こうして、5時間にも及ぶこの日のワークショップは無事終了。講師のお二人に感想を伺うと「普段の小説のワークショップだと人によって差が出るけど、今日はみんな完成できた。それはStoriaのすごさと感じた」と海猫沢さん。一方、中村さんは「初めてアプリに触れる人の感想が知れて良かった。スマホで執筆することへの違和感なども聞けたので、今後の開発に生かしたい」と、早くもアプリの改良に思いを巡らせている様子でした。

同じ参加者で、今後も第2回、第3回と続いていく本ワークショップ。今回、Storiaの操作方法を知った参加者の作品は、続く回でどのような深化を見せていくのでしょうか? 後半2回の模様は、9月上旬に本サイトにてアップする予定です。

ワークショップ参加者の声

「ワークショップへの参加も初めてでドキドキしましたが、中村さんの作品が好きで来ました。自分でも小説を書きますが、最後まで書けないことも多いです。機械で作品を作るなんて無機的になるのでは、と初めは思っていましたが、自分では考えつかない構成になって面白かった。アプリが一般化したら、ぜひ使いたいと思います」

高校生(17)

「仕事で書く提案書を物語風にしたら面白いんじゃないかと思い、そのヒントを得たくて参加しました。実際にアプリを使ってみると、車の車種やカラーを選ぶような感じで、サクサク執筆できた。と同時に、自分の発想力の無さにも愕然としました(笑)。仕事に生かす道はないか、次回以降のワークショップの中でも考えていきたいと思います」

エンジニア(29)

文・杉原 環樹

Workshop VOL.2 2015.8.8

物語づくりをサポートするアプリ「Storia」を使った連続ワークショップ。8月8日に行われた第2回にも、大勢の参加者が集まりました。前回は初めて触れる「Storia」に戸惑い気味の参加者もいましたが、回を重ねる中で、どんな展開が見られるのでしょうか。まずは、この日の中村さんによるスピーチ、そしてゲストスピーカーである話題のニッポン放送アナウンサー・吉田尚記さんとの対談の模様をお伝えします。

物語は、小説家だけのものではない

中村さんは、自作のレジュメを参加者に配布。物語の核となるモチーフの生み出し方や、「Storia」のベースにある「三幕構成」という物語構造について説明が行われました。「創作にはオリジナリティが大事」とはよく言われますが、中村さんは「オリジナリティは組み合わせ」と語ります。「たとえば、バンドを組む話は多いけれど、花屋がバンドを組む話はおそらくない。組み合わせで、自分だけのモチーフは作れる」と、小説家志望者も多い参加者に具体的な助言をしていきます。

スピーチの中でも印象的だったのは、以下の言葉。「0から1を生むのは数学的にも無理。むしろ、目の前にある100や1000から1を選び出すことこそ、物語づくりなんじゃないか」。小説を書くと聞くと、何も無い場所からすべてを作り出すような途方もない世界を想像しがちですが、どんな人も「語る価値のある経験」をすでに持っている、と中村さんは言います。誰もが簡単に物語を作れる「Storia」の発想にも通じるこの考え方は、参加者に勇気を与えたように見えました。

続くトークでは、ワークショップ前から「Storia」の操作を楽しんでいた吉田さんが登場。かつては脚本家志望だったという吉田さんですが、現在のアナウンサーという職業は、一見「物語」とは関係がなさそうです。しかし吉田さんは「僕の仕事は与えられた時間、しかも急な変更もある生放送の中で、話の展開=ストーリーをつねに考えること」と語ります。たしかにその「物語力」は、この日のトークでも爆発。軽快な話術や文化に関する豊富な知識で、会場は一気に盛り上がりました。

お二人の話から強く発信されていたのは、物語づくりの能力は、小説家だけに求められるものではないということ。「近所のおばちゃんの話がすごく面白い。それだってひとつの物語の力ですよね」と吉田さん。それに対し中村さんも「人が日常的に物事を記憶したり、それを効果的に他人に伝えたりできるのは、物語の働きがあるから。その意味で、物語の存在を意識して生きるのと、そうでないのとでは、世界の見方がまったく変わる」と返します。

普段の会話の中にも根を張る物語の存在。吉田さんは「その作法を学ぶ上で、Storiaは効果的なんじゃないかと思います」と言います。普段、触れることのないラジオパーソナリティーの意識を入口に、物語の可能性がグンと広がって感じられたトークでした。

Workshop VOL.3 2015.8.22

さて、8月22日に行われた第3回。この日もみなさんの高い意欲が感じられて、気持ちの良いスタートが切られました。この日のゲストは映画監督の犬童一心さん。昨年には中村さんの小説を映画化した『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』も手がけた大御所です。控室からすでに「物語談義」に華を咲かせていたお二人ですが、参加者を前にどんな話をされるのでしょうか。

物語の面白さは、作者自身の経験が決める

最終日も、まずは中村さんのスピーチから。この日は、中村さんの小説『デビクロくんの恋と魔法』を材料にして、より踏み込んだ執筆の過程が語られました。同作の発端は、主人公・光が作って撒いているビラ「デビクロ通信」と、そのファンで幼馴染の杏奈の「溶接女子」という設定だったと中村さんは語ります。これを「少女マンガのような女子の一人称視点で書く」というシンプルなモチーフを元にして、のちに映画化されるまでの物語が生み出されたのです。

モチーフが決まったら、「舞台」「台詞」「ストーリー」の3つを考えようと中村さん。同作の舞台を秋〜クリスマスにかけての下町にした理由や、事前に考えていた登場人物の台詞などを開陳して、参加者の興味を引きます。こうした要素が、「Storia」のベースを成す「三幕構成」の中にいかに落とし込まれ、物語全体が生み出されているか。それを丁寧に示すことで、「Storia」で作られるあらすじにも無限大の可能性があることを、中村さんは伝えているようでした。

次のトークでは、犬童さんによる説得力ある物語づくり論が展開。新人シナリオライターの実力を測る上で注目するのは「サスペンス性の有無」であることや、「最初から順に書く派」と「全体の構成から考える派」では後者の方により柔軟性があることなど、現場経験の長い監督ならでは意見が響きます。黒澤明の一風変わったシナリオ執筆法の紹介、自作や他人の映画の構造分析なども行われ、数々の名作の背景にはこうした冷静な思考があったのか、と考えさせられました。

この日のトークでお二人が強調していたのは、登場人物の重要性について。「深みのある人物を生み出すには、多くの思考システムを持っている必要がある。それは結局、他人と関わることでしか得られない」と中村さん。一方、具体的な役者を前提にした「当て書き」で、他人の思考から刺激を受けているという犬童さんは、「シーンをバラバラに撮影する映画の現場では、脚本上のキャラの感情をいかに掴み、それに憑依できているかが重要」と語ります。

魅力あるキャラづくり、物語づくりをする上でお二人が勧めるのが、実際の現場や人物に当たる取材です。多くの人を惹きつける物語の鍵は、その作者の実生活における経験の幅広さにあるということ。そんなお二人のメッセージは、熱心に話に耳を傾けていた参加者にも、強い印象を与えたことでしょう。

参加者それぞれの個性が光った各実習

第2回、第3回ではそれぞれ、ある「縛り」を設けた実習が行われました。第2回にあたって出された宿題は、「ひとつ書きたいモチーフを持ってくること」。身近な「ヤンキー」を題材にしたり、アニメの歌の歌詞を題材にしたり、みなさん、思い思いの素材を「Storia」で料理しました。2回目ということもあり、操作に慣れ始めた参加者には、自分の「色」を機械上のあらすじに付ける余裕が生まれたようです。

そんな中でも中村さんの関心を引いたのは、その人にしか出せない「細部」が光る作品群。たとえば、むかし習っていたという楽器「タブラ」をモチーフにしたバトルものの作品や、形容詞ではなく「キャラメル好き」という描写で人物の個性を表現した作品など、細かな指摘が続いたことに驚きました。「書くことは、話すことと違っていくらでも直せる。だから未知の思考まで行ける」と、中村さんの声の熱量も上がります。

変わって第3回では、犬童さんの用意した数枚の画像を含む、「Storia」内のイメージソースを元にした創作がテーマとして与えられました。この日は中村さん自身も、参加者とともにあらすじづくりに没頭。犬童さんが持ってきた猫と女性が映る1枚の写真から、別れた彼女の名前を猫に付けている主人公、という設定のあらすじを作り出しました。いますぐ読みたくなるような完成度に、驚かされます。

面白かったのは、同じ画像から全然違う物語が生まれること。たとえば自転車に乗る男性の写真からは、「熊本に住む冒険者」や「賭博専門の宇宙ステーションの建設に従事するギャンブラー」など多種多様な世界が紡がれ、人の想像力の広大さを感じさせます。ただ、これはあくまでもあらすじ。これを元に小説を書く中ではさまざまな困難があるけれど、いまでも昨品が完成したときは代え難い喜びがあると中村さん。最後まで「ぜひ昨品を書いてみてください」と参加者に訴え、ワークショップの幕を閉じました。

ワークショップ参加者の声

執筆の上での人と機械の関係が気になっていたのですが、実際に使うと、ミュージックビデオや広告など、何らかの物語要素を持つ媒体には幅広く使えるものだと感じました。また「LINE」などSNSの発達で、「話し言葉」の量は増えていますが、反対に「書き言葉」を使う機会は少ない。「Storia」はそれを学ぶツールにもなると思います。

大学生(20代)女性

小説を書き切れず、アプリを使ったらどうかなと。「Storia」は、自然と山場が作れるのが魅力ですね。「物語」なんて馴染みがないと感じる人も多いかもしれないですが、アニメやドラマ、映画など、実はそれに触れてない人はほとんどいない。そうした人たちがふと物語を作り出すきっかけとして、とても有効なものだと感じました。

アルバイト(20代)女性

ITに関係する職業柄、近年話題の「ビックデータ」に関心があり、その延長で「Storia」にも興味を持ちました。参加する中で多くの発見がありましたが、ゲームをやったり動画を見たりと、「消費者」的に触れる機会の多いスマホを「作る」ツールにした点に可能性を感じました。多くの人が作り手となったらと考えると、ワクワクしますね。

会社員(30代)女性

毎日を豊かにする、物語の力

全3回にわたった今回のワークショップ。多くの参加者がすべての回に来たことに中村さんも感激したようで、終了後のインタビューでは「真面目に通ってくれて嬉しかった。参加者の物語への愛着も感じられた」と感想をこぼしていました。一方で見えてきたアプリの課題については、「誰でも楽しく使うことができるというコンセプトは忘れずに、意見を反映していきたい」と改良への意気込みを語っていました。

「機械が小説づくりをサポートする」という「Storia」のコンセプトには、参加者の中にもはじめ、「物語が非人間的になるのでは?」「感情移入はできるの?」と半信半疑の気持ちがあったようです。しかし、ワークショップを通して見えてきたのは、昔から変わらない人の個性や世界観の問題でした。物語の「型」は機械から学べても、それを唯一の作品に仕立てるのは、やはり作者自身の経験や視点なのです。

そのことは、各回にゲストとして登場した海猫沢めろんさん、吉田尚記さん、犬童一心さんのお話からも感じられました。3人が揃って口にしたのは「Storiaを使うことで、むしろ自分の思考が見えてくる」ということ。小説家、アナウンサー、映画監督、それぞれの立場から語られるゲストのトークからは、物語が広く社会の中で息づいている様子も感じ取れました。それはきっと、参加者の認識を広げてくれたことでしょう。

「歴史も、人生も、今日こんなことがあったよと誰かに語ることも、日々のあちこちに物語は転がっている」と中村さん。「Storia」は、毎日の世界の見方を豊かにしてくれる、そんなツールとしてあるのかもしれません。これまで小説家の「魔法」のように捉えられてきた物語づくりに、多くの人が関わる世界とはどんなものなのか。今回のワークショップは、そんなドキドキする未来を見せてくれました。

文・杉原 環樹

開催概要

「ものがたりを開発する」ワークショップ at 朝日新聞社メディアラボ渋谷分室

企画名:「ものがたりを開発する」ワークショップ
名義:主催/朝日新聞社メディアラボ、協力/芝浦工業大学、協賛/楽天カード株式会社
日程:7月25日(土)、 8月8日(土)、 8月22日(土)
時間:13:00~18:00
会場:朝日新聞社メディアラボ渋谷分室(渋谷区神宮前6-19-21ホルツ細川4F)




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